第14話「信頼」
「な、なんだって、そんな事に……!?」
もし、それが本当なら、大パニックだ。
大勢の被害者が――いや、下手すれば死人が出る。
霊が突然凶暴化して人を襲うだなんて、前代未聞だ。マンガの中じゃないんだぞ!
ついさっきまで、あれだけ平穏な世界で暮らしていたはずなのに、それがどうしてこうなったんだ?
「知るかよ。俺だって気持ちよく走ってただけなのに、突然地縛を外されて、いい迷惑なんだ。オマケに人鬼なんぞに変化だと? 不愉快極まりないんだよ。
――だからだ」
「あ?」
「こちらも、自分の身を守るために情報が欲しい。ここに来るまで大学中を見て回ったが、実体化してたのは七不思議の霊だけだったからな。今回の騒動が、七不思議に関係してるのだけは間違いない。
だが俺も、全ての話を知ってるわけじゃねえんだ。曖昧な噂も多いしな。
――で、思い出したのが、そこの教授様だ。何年か前に、論文を書くだのなんだので、学生と一緒に調べに来てたはずだ。
だから、七不思議について知っている情報を全てよこせ。代わりにこちらが知る情報も渡してやる。それが俺の要件だ」
只はキャップをかぶり直し、一息つく。
「この条件飲むか、飲まないか、すぐに決めろ。時間はないぞ」
「分かった。教授に聞こう」
只がうなずく。
悠介は教授に向き直る。
「すみません、教授。時間がないので手短かにいきます。七不思議について――」
「いいですよ」
「え」
「時間がないのでしょう。詳しい説明は後で結構です。藤谷君の判断で、動いてください」
「教授、しかし――」
「私は君を信用しています」
その言葉が、心に深く突き刺さる。
「大丈夫。今は、最善を尽くしましょう」
教授の目は真剣で、俺じゃ判断できないとか、自信がないとか、そんな弱音、とても吐けなかった。
いや、吐けないというのは、少し違う。
――この信頼に応えなくては。
その想いに、弱音なんか吹き飛ばされてしまったのだから。
「はい、ありがとうございます」
教授が笑った。
この返答は、合格点だったみたいだ。
「では教授。この大学の七不思議に関するデータが欲しいんです。以前、調べていたそうですね」
「はい――ですが、詳しい資料は研究室ですので、取りに戻らないと」
う、と悠介は喉でうなる。
研究室はこの棟の四階最奥だ。最も出入り口から遠い場所にある。
結界は破れてるし、さっきの人鬼の少女とまた鉢合わせる可能性もあるし、あまり戻りたくはないんだが――仕方ない。
「分かりました。すぐに行きましょう」
只が横から現れる。
「話はついたな」
「ああ、条件を飲もう」
「そうか。ただ、分かっていると思うが、研究室に戻るなら気を付けていけよ――あそこも七不思議の一つだったはずだからな」




