表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蛇神  作者: ヒノエ
13/43

第13話「人鬼」

 片眉を吊り上げて、只は犬歯をむく。

 嘲笑だ。

 ああ、やっぱりコイツ、楽しんでやがる。


「七不思議に、夜中トラックを走る陸上部の霊というのがある。知ってるか」

「ああ」


 つい先ほど戸塚と話したばかりだ。

 悠介はうなずく。


「それは俺だ」

「は!?」

「俺だけじゃない。開かずのトイレ、血溜まりの井戸、深夜流れるベートーベン、引きずり込まれるプール、増える階段――諸々の七不思議に関わる霊たちが、今、大学中を歩き回っている」

「……」

「ま、歩き回るだけなら、大したことないんだけどな」


 そう言って只は何故か、右腕の袖をまくった。


「それは――っ!」


 悠介は驚愕した。

 只の右腕は、赤黒い筋肉が盛り上がり、濃い体毛と、長く鋭く伸びた爪が、それが獣のもつものであることを示している。

 そう、これは。


「鬼の腕!?」

「ああ」

「お前、人鬼なのか!」


 只は袖を元に戻す。


「正確には、なりかけ、だ。今はなんとか右腕だけに抑えているが、保って今日一日だろうな」


 悠介には、言葉も出ない。


 鬼、というのは、一般的には頭の角や金棒、虎柄のパンツを履いた妖怪の一つだと思われているが、それは鬼の一部でしかない。

 もともとは、鬼の語源である「おぬ」という字からも分かるように、目の見えないものの総称だ。それが転じて、この世ならざる力の持ち主、異界からの来訪者、もたらされた災厄などを意味するようになった。

 西洋でいう「悪魔」と似たような概念だ。

 要するに、なんかよく分かんないけど、強い力を持った悪者は、まとめて鬼扱いなのである。


 そんな鬼には、当然種類がある。

 仏教系、神道系、中国系、いろいろあるが、人鬼はその中でも、最も身近な鬼だ。

 人が、鬼と化したもの。

 一言でいえば、それが人鬼である。

 憤怒、未練、絶望、後悔、嫉妬、執着、欲望――そういった感情が暴走し、やがて肉体が強固なものへと変質し、最終的には人外の存在となる。

 化け物だ。

 始めは人間だろうが、完全に鬼と化してしまえば、理性も何もない。

 ただ、感情のままに破壊と殺戮を繰り返す化け物なのだ。


 悠介は身震いした。

 只は言った。

「俺だけじゃない。――諸々の七不思議に関わる霊たちが、今、大学中を歩き回っている」と。


 おそらくは先ほどの少女も、元は七不思議に出てくる霊か何かだったのだろう。


 もし、その霊が……ことごとく人鬼と化したとしたら。

 それらが、突如人を襲ったとしたら……っ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ