第12話「戦闘態勢」
「あの、藤谷君。つかぬ事をお聞きしますが、そこに誰かいらっしゃるのですか」
「教授……」
悠介は舌打ちする。
本来なら、教授にはこういった事に一切関わらせたくなかった。
見えないのなら、知らないのなら、それに越したことはないのだ。
だが、今となってはもう遅い。
悠介は、唇を噛み締め、絞りだすように言った。
「……います」
「その方は、幽霊、なんですね」
「はい」
「わかりました」
教授はうなずく。
「こういう事は初めてじゃありません。安心、というのも変ですが、信用してください」
「え……」
「藤谷君は、幽霊を見聞きできるのですよね。私には感知できませんので、通訳をお願いします」
教授は毅然として言い放つ。
悠介は軽い驚きに包まれていた。
――初めてじゃない、のか。
考えてみれば当たり前だ。教授のような霊媒体質が、今まで霊に狙われないはずがない。
そして、いくら見えないからとはいえ、その命、魂を狙われて、何十年も気づかないはずもないのだ。
だが、とそこで悠介は考える。
いくら存在に気づいたとはいえ、何も見えない聞こえないでは対処の仕様がない。
――つまり、いるのだ。
教授には、協力者が。
この手のことに内通し、教授を守護する存在が。
ショックだった。
なにがショックって、その事実に衝撃を受けている自分自身がだ。
「……っ!」
バシン!
悠介は自らの頬を叩く。
しっかりしろ!
今は、そんなことどうでもいいだろ!
過去を考えているヒマがあるなら、これからのことを考えろ。
「ふ、藤谷君?」
突然、自分の頬をぶつ悠介を見て、教授は素っ頓狂な声をあげた。
「――失礼しました。俺は大丈夫です。通訳ですね、任せてください。
いいですよ、やってやりますよ。やってやろうじゃねーの」
「あ、あの」
「只!」
うろたえる教授を無視して、悠介は只の方に向き直る。
「見ての通りだ。こちらはバッチリ戦闘態勢に入ったぞ。
確か、教授に頼みたいことがあると言っていたな。七不思議の件で」
「ああ」
「聞かせてもらおうか。お前の頼み事とやらを」




