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12  お茶会とは


ルフィナは王太子の婚約者と公表された後、お茶会などの招待が増えた。


ルフィナはお茶会と言う名の見定め会に出席を余儀なくされた。

つまりはルフィナの品評会だ。

①友達となって損はないか。

②有益ならば、良い関係を築いて懐に入っておく。

③組伏せられるなら、婚約者の位置を奪えるかどうか。

使える(おばか)なら懐柔できるようにしておく。


ただの女子会なら楽しいのだが、上記のようなややこしい物が見てとれるお茶会に、行きたい筈がない。


大半はお断りの返事を書いたが、そうもいかない招待状が何通かあった。

その筆頭は王妃殿下の招待状だ。

その他の方々との日にちの調整をして、格上の方のご招待には全てお受けするように返事を済ませた。


最も気が重い王妃殿下のお茶会が明日に控えている。

侍女のマリーはレオトニールの筆頭侍女のシシリアと連携を取って明日の準備に余念がない。


明日の品評会は、出展予定の私を、

⑤王家の嫁に相応しいかを、見極める為に開かれたものである。


宮中の侍女が気合いを入れて情報収集をしてくれたお陰で、他の出席者の好みや人間関係を把握する事ができた。

「シシリア、色々調べてくれてありがとう」


シシリアは首を横に振って微笑む。

「幼少の頃より、ルフィナ様は侍女一人一人にも心を砕いて下さいました。私達はルフィナ様にお仕え出来る日を、心待にしておりました。侍女一同、精一杯お仕えさせて頂きます」


ルフィナは平民の意識がずっとあって、感謝の気持ちは忘れずに伝えていた。それが王宮内の侍女を味方につけていたのだ。

「ありがとう。本当に心強いわ」


だが、明日対峙する伏魔殿の女達は、例えまだ15歳の女の子だろうが、容赦なく弱い部分を見つけるとそこを攻撃してくるだろう。


(胃が痛い)

ルフィナは最近以前の前世を少しずつだが思い出していた。

(あの角のコンビニの隣の薬局屋さんに売っていた、胃薬が欲しい)


マリーがお盆に水と胃薬を持って来てくれた。この世界の薬は基本薬草茶だ。しかもこの胃に効く薬草は罰ゲームに使われる程苦いあのセンブリが入っているのだ。

息を止めて一気に飲む。そしてすぐに水で流し込む。


早く、このお茶会地獄から抜け出したい。ある程度見通しができると少しは落ち着いてくるらしい。そして、仲間と呼べる人を誘いあってこちらも陣営を作れば、楽になるとレオトニールの侍女のシシリアがいっていた。


つまりはこのお茶会、ルフィナに取ってもメリットがあるのだ。まずは仲間を集めよう。

(『ポケ◯ン、ゲット』の気分でお茶会に行こう)

そう考えるとちょっとだけ気が楽になった。


今日は王宮の王妃様主催のお茶会。

ルフィナはオレンジブラウンの髪の色に黒い瞳なので、ピンクは似合わない。今日の日の為にルフィナは薄いブルーの縁取りは濃いグレーと銀色の刺繍が入ったドレスを選んだ。


時間より少し早めに着いた筈だが、王妃様のサロンには既に皆様が着席されています。

早くも強烈な1パンチを食らった。


王妃様がこのような悪意のある悪戯をされるのか?と思ったがどうやら違うようだ。

テレリューズ王妃様の性格は、大人しい。


つまりこの悪戯を先導しているのは、アンネッタ・ルーゴ公爵夫人だ。

彼女は大人しすぎる王妃をいいように扱っている。

そして我が物顔でこの王宮サロンの女帝として君臨しているのだ。アンネッタの夫は初代コルト王の弟の血筋で、それが自慢だ。


本来の王宮サロンの主であるテレリューズを脇に追いやって、このお茶会を纏めている。


テレリューズ王妃は、息子の婚約者を迎え入れようと立ち上がった。それをアンネッタが手で制す。

そして、テーブルを囲んでいる他の女性達に目配せをして、ルフィナと目が合わないように合図を送る。するとその場に座っていた8人全員がよそよそしくそっぽを向く。

テレリューズは戸惑っていたが、そのまま下を向いてしまった。


(ほほう、私を無視しようと決めたようね)


ルフィナが15歳の普通の貴族のお嬢様ならば、きっとこのテーブルに入れずに立ち尽くしたままだったかも知れない。

しかし、最近思い出した前世を足すと、ここにいる誰よりも年齢と経験がある。


ルフィナは皆が座っている近くまでくると、誰も見ていないが、

「今日はお招きくださりありがとうございます」

と深くカーテシーで挨拶をする。


誰も振り向かない。挨拶も返さない。

なので、そのままルフィナは言葉を続けた。

「今日は宮中における礼儀を皆様に教えていただこうと、思っております。どうぞ宜しくお願い申し上げます。それと各新聞社の方々がこの様子・・・王宮の華やかなご様子を知りたいと要望があり後で取材されるので、ご了承下さい。これも開かれた王室をアピールするために陛下からの申し出ですの」


『陛下からの』と言うのは嘘です。詳しくは王太子殿下で、その他は本当です。


一人のご婦人が勢い良く立ち上がり、ルフィナに笑顔を向けた。


「こんにちは、私はエーベ・ルーセルです。どうぞ宜しくね」

ルフィナも笑顔でご挨拶をする。

エーベの夫は商業を生業としているので、平民受けは大事なのだ。このままこの無視をし続けると、『王太子の婚約者が、王宮でいじめを受ける!!』と言う新聞見出しが浮かんだのだろう。


彼女の後、次々と親しみ易い笑顔の挨拶を受けました。

そうです。今も昔もSNSなどの世間の評判は怖いのだ。


テレリューズ王妃はホッとしたようで、すぐに自分の隣にルフィナの席を用意した。

アンネッタは一人、気色ばんでいたが、すぐにねっとりした笑顔でルフィナに話し掛けてきました。


「皆さんは、手土産をお持ち下さっているのよ? あなたは何か持って来ていらしてるの?」


(この様子だと、どんな手土産を出しても嗤われるのでしょうね?)

ルフィナは侍女のマリーに微笑むと、マリーがトレーに載せた箱を持って来てくれた。私はできるだけゆっくりと優雅に立ち上がって一人一人配っていく。


「これは何ですの?」

アンネッタは馬鹿にする気満々で、ルフィナの返答を待ち遠しそうに待っている。


「これは最近ルーセル様の領地で売り出されたラズベリーの香りの石鹸です。この石鹸の香りが素晴らしくて、是非皆様にも使って頂きたくてご用意しましたの。エーベ様、勝手に宣伝みたいな真似をしてすみません」


ルフィナはエーベ・ルーセル伯爵夫人に申し訳無さそうに頭を下げた。


これでルフィナの手土産にケチをつける人はいない。

この手土産の石鹸はエーベ・ルーセル伯爵夫人の領地が、今売り出そうとしている特産品のラズベリーを使った石鹸だ。この手土産に文句を言う事はそのままエーベ様に言う事になる。


このサロンの女帝はアンネッタ・ルーゴ公爵夫人だが、第2位はエーベ・ルーセル伯爵夫人だ。

彼女の夫は伯爵だが、その財力は侯爵を遥かに凌ぐ。

そして、アンネッタに付いているが彼女は決して人を貶めるような事をしない人だ。


ルフィナはこの人を味方につける作戦に出たのだ。


ここでアンネッタが一矢報いようとルフィナに一言注意する。

「ルフィナ様はまだ分からないでしょうが、サロンでの手土産は香りが控えめな方がよろしくてよ」


アンネッタの鼻が「どうだ」とばかりに鼻が開く。

ルフィナはアンネッタを見る事なく、エーベ・ルーセル伯爵夫人の方を見る。


「そうなのですね? 今度はエーベ様の紹介して下さる物をお持ちしますわ」

そして、エーベに微笑む。


ルフィナに頼られたエーベは、目を見開き「ええ、勿論です。一緒に選びましょう」と言ってくれた。


(エーベ様は長女なのです。私は前世で営業をしていたので、どのタイプが頼られて喜ぶのか把握しています。

第1子の長女の方は頼られる事に慣れています。しかし、その頼った後のお礼をきちんとしましょう。礼儀を怠ってはいけません)


ここで一気にルフィナへの興味が湧いたのか、次々に皆様から質問された。それににこやかに丁寧に答えた。


それから、将来の義母になるテレリューズとも和やかに話ができた。

そのほんわかお茶会の最中に、レオトニールが挨拶に来ました。


「あら、王太子殿下がこのお茶会にいらっしゃるなんて珍しいですわね。きっと可愛い婚約者が私達に食べられていないかご心配だったのでしょう?」

お茶目にウィンクする、エーベ様。それを見て微笑まれるテレリューズ王妃様。


「・・・少々心配はしていましたが、楽しい一時を私がお邪魔してしまったようですね」

レオトニールは和やかなお茶会に、驚いていた。


いつもと全く違う雰囲気に、安心したのか、「僕はどうやらお邪魔のようだね。さっさと退室するよ」

と帰っていった。

何をしに来たのだろうか?と首を傾げるルフィナにテレリューズが微笑む。


「うふふ、きっとレオトニール殿下は、あなたが寂しい思いをしていないか見にいらしたんです。ぶっきらぼうですが、宜しくお願いしますね」

テレリューズが頭を下げられる。

ルフィナは慌てて立ち上がり、王妃殿下よりも深く頭を垂れて、「こちらこそお願いします」

とお茶会半ばに漸くきちんとご挨拶出来た。


この後、アンネットが仕切る事はなく、平穏無事にお茶会を乗り切った。




お茶会の終わりに、ルフィナは官報掲載や文書を扱う秘書課に行き、今回初めて王宮の様子を民間の新聞に掲載するための取材を受けた。


開かれた王室をアピールする為でもあるが、王室サロンを私物化しているアンネッタ公爵夫人への牽制でもあった。


取材後、屋敷にもどる為に王宮の長い廊下を歩いて帰っていると、レオトニールが走ってルフィナを呼び止めた。


「なんで、僕に会わずに帰ろうとしているんだ?」

なんだか本気で怒っている。


「先程、帰る旨を告げたところ、レオ様が会議中だとお聞きしたので、お仕事の邪魔は出来ないと諦めて帰る所でした」


「あぁ、そうか。これからは王宮に来て帰る時は絶対に勝手に帰らないでね。待ってて欲しい」


「・・・はい?」


(絶対に私よりも重要なお仕事がありますよね?

それを優先して欲しい)

そう思ったが言葉に出して言うとややこしくなるので、ここは不問で終わらせた。


「さぁ、僕の部屋で少し話をしよう」

言われるまま、引っ張られるまま、ルフィナはレオトニールのソファーに座らされた。


ルフィナが座ると同時に、シシリア紅茶を出してくれた。

しかも、きちんと蒸らし時間を置いた紅茶だ。

ルフィナが帰らず、ここに来る事を予測していたような行動だ。

できる侍女はやはり、違う。


先日と同じようにレオトニールはルフィナの横に座る。

横顔を穴が空くのではと思うほどじっと見つめられている。


「やはり、ルフィナはすごい。あのアンネッタをやり込めるなんて想像もしてなかった。僕が心配で見に行った時はお母様も微笑んでいらして、和やかな雰囲気のお茶会で本当に驚いた。ねえ、シシリア」


レオトニールが後ろに立つ侍女のシシリアに様子を聞く。


「はい、いつもはあのアンネッタ様の独壇場ですが、今日はルフィナ様のお陰でテレリューズ王妃も和やかにお過ごされていました。エーベ様を味方に付ける手腕に感服致しました」


本日のお茶会の件で、なぜテレリューズ様があそこまでアンネッタ様に仕切られているのか、ルフィナには分からなかった。

この事を知りたいが今は、レオトニールがいるので、黙っていた。


「僕の母は王妃だ。だがサロンではアンネッタ公爵夫人が我が物顔に振る舞っている。それを不思議に思っているんだろう?」


ルフィナはそれを今聞いて良いのか迷ったが、このまま何も知らずに再びお茶会に参加させられるのは困ると思い疑問を口にした。


「はい。テレリューズ様は王妃様です。もし不敬な物言いをされる方がいれば国王陛下に言えば対処していただけるのではないですか?」


「普通ならそうすれば良いのだが、母は本当に大人しくて王妃には向いていなかったんだよ。

昔ね、陛下が視察の帰りに喉が渇いて男爵の屋敷に立ち寄ったんだよ。そこで見初めたのが母だった。これは有名な話だから知っているだろう? それから母を侯爵の養子に入れて後ろ楯を作ってから自分に嫁がせた。だから、アンネッタは母の事を未だに男爵の娘だと侮っている。それに母も気の弱い人だから、それに甘んじているんだよ」


「では、陛下は何故アンネッタ様の所業を傍観されているのですか?」

それだけ愛した人が苦しんでいるのならば、陛下が手を差し伸べるだけで十分な効果がある筈だ。ルフィナにはそれが理解出来なかった。


レオトニールとシシリアが顔を見合わせて、この質問に答えるべきか躊躇している。


「これから話す事を聞いても僕の愛を疑わないで欲しい。例え血が繋がっていても、僕は父とは違うからね」

これだけ聞いても良く分からないが、レオトニールがルフィナの左手を両手で包み込み、真剣な眼差しで訴えてくるので取り敢えず頷いた。


「父は3年前から他の女に入れあげている。その女がアンネッタ公爵夫人の侍女なんだよ。アンネッタはそれを餌にサロンでは好き放題だ。そして、陛下も目を瞑っている訳さ」


そういえば、お茶会の時にアンネッタの後ろに控えていた大人しそうな侍女がいた。きっとあの人が陛下の想い人だろうか。


(男の欲望って本当にくだらないわ。自分が大切にすると誓った言葉も忘れて他の女に鼻の下を伸ばすなんて!)

半眼になり、『ふんす』と鼻息を荒くしてしまった。


その鼻息で隣のレオトニールがビクッと体を震わせた。


あなたに怒っているのではありませんよ・・世の中の浮気男性に怒っているのです。


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