【エピローグ】 歴史を知った王、明かせない真実1
夢を見ていた。眠っていることは自分ですぐに分かった。真っ暗な世界、体が動かなくて、私の思考だけが波の上に漂うように揺れてただ存在している。なんで私、こんな所にいるんだっけ……。
思い出そうとしても、その記憶がここにない。まるで何処かに置いてきてしまったかのように、あるのはただ自分の意識だけ。真っ暗な世界、水面に漂うだけの木の葉のように、ゆらゆらゆらゆら、頼りなくそこに存在していた。
そう、ただひたすら、そればかりを繰り返していた。
ふと、声がした。私を呼ぶ声。
――母、母、我らを産み落とした、偉大なる母――
女の子だろうか。私を母と呼ぶ可愛らしい声。聞こえているよ、と思って声に答えようしても口が動かない。喋れている気がしない。でも、女の子は私の呼びかけに嬉しそうに笑った。
また声がした。今度は違う子だ。
――母、母、そこから出たいのでしょう?――
先程の女の子によく似た声。でもその声の感じから男の子かな、という気がした。また私は答えた。そうね、出たいな。でも出方が分からない。閉じ込められている気がする。私の意志に反して、体も意識も、ここに縛り付けられている気がしてならないの。
話せてなんていないのに、また女の子と男の子が私の呼びかけに嬉しそうに笑う。
――待ってて、母。今、父と共に、あなたを助け出す道を作ってあげる――
女の子の声がして、ふっと真っ暗な世界に薄っすらと白い世界が見えた。
黄緑色の長い髪、顔の半分を隠す前髪をして、小さな鼻の下で可愛い口が笑っている。ああ、話しかけてくれた女の子はこの子ね。その隣には女の子とよく似た同じく黄緑色の髪を肩くらいまで伸ばして、やはり顔の半分が見えない勝ち気な口元の男の子。この二人は双子なのかな、なんて思っているその背後に――もうひとり誰かいることに気がついた。
白い髪、白い肌、キツめの印象を与えるけれど、宝石のように綺麗な青い瞳――背の高いその人が黒い服装をしていて、悲しげに表情を歪ませていた。でも私は、その姿を見て無い筈の心臓がドクン、と大きな音を響かせた。
私の会いたかった人――! 良かった、生きていたのね……!
そう思ったら、また意識が遠のいていく。視界はまた真っ暗になっていく。そんな私に気がついたのか、心配そうに呼びかける女の子の声がする。私は答えた。
待ってるよ、助け出してくれるのを。私が自ら外に出ることは出来ないけれど、でも外には希望があるって教えてくれたから、私、この暗闇から出るのを待てるよ――。
そう思っている間にも意識は闇に落ちていく。
おやすみなさい、かわいい子どもたち。
おやすみなさい、大好きな人。
おはようが言えるのを……楽しみにしているね……。
それからずっと、私は夢を見ることがなかった。後はひたすら――暗闇だけだ。




