遊び人とセバスチャンPTの闘い⑥
卑怯すぎる賢者の奥の手に流石の俺も狼狽する。
なんて卑劣な奴なんだ?俺ですらPTリーダーの交代だなんて……あっ考えてたわ。
だが、さすがにこんな卑怯な奥の手認められまい?
「ここに来てリーダー交代ですか?私は一向に構いませんが、どうですか?」
聞くまでもない、断固拒否する。あらゆる拒否権を発動させてもらう。
だって負けそうになったらPTリーダー交代するだなんて、あり得ないでしょ?そんな奥の手が認められるなら、なんだってありになってしまう……
すでになんだってあり、で戦わせてもらっていますけどね。
「さすがに、それは卑怯では?一度決めたリーダーを変えるだなんて……」
「どの口が言うのよ?バッカスさんをセバスチャンさんと無理やり戦わせ、仲間を一人隠して戦っていた貴方の方がよっぽど卑怯よ!今まで見てきた人間の中でもダントツに卑怯だわ!」
縛られながらもエミリアが援護射撃してくる。
縛り首にしとこうか。
卑怯なのは剣聖なんてチートとPT組んでるお前だろ!
俺を卑怯と罵るのは、100年早い!
「おう。ピッケルvsセバスチャンがまだだしな。面白そうじゃねーか、PTリーダー交代認めた。」
おーいおーい、おい!
バッカス酒が抜けてないのか、面白いからって認めるな。
俺はお前の店の上客中の上客だぞ?
上客を殺す気ですか……お前の店でいくら使ったと思ってる?金返せ。
だが、立会人が認てしまっては仕方がない、立会人は公平中立神のごとき存在だ!
さっきまでセバスチャンと戦ってた酒乱の立ち会人だけどな。
認めよう…………面白そうなら仕方がない……だって面白いことは良いことなり。
遊び人の俺には、面白そう、以上の理由はないのだ……
なんというサガよ!
だが、只で済むと思うなよ?
この卑劣極まりない賢者の奥の手を食らって、正義感あふれる、真面目な俺が黙っているとでも?
やられたらやり返せと遊び人の心が叫んでいる!
卑劣な手には卑劣な手を!
こちらも最強最悪の奥の手の発動で対抗してやろうじゃないか?
後味悪くなりそうだから使いたくなかったが、こうなっては、しかたあるまい。
先に卑劣な手を使われたのだ、専守防衛です!
全部あらかた、賢者と酒乱が悪い。俺は悪くない!
こちらも奥の手中の奥の手発動だ。
「何と言われようが……認めるわけないでしょう!と言いたいところですが、立会人であられるバッカスさんがお認めになるのであれば仕方がありません。立会人の裁定がなくては、この戦いは、ただの殺し合いになってしまいますからね。立会人は神のごとき存在……」
俺は立会人の立場を最大限に高めながら渋々PTリーダー変更を認めてやる。
これで特大の貸しが一個できたぞ。
返すの大変だぞ……さあ返せ!
利子っての知ってるかな?とんでもない額だぜ。
さあ今度は俺のターンだ!やられた分はきっちりやり返す。
「そういえば、バッカスさん『竜の涙』はどうされました?」
「『竜の涙』か知らんな!といたいところだが……どうやら酔った勢いで俺自身に使ったみたいだな、流石俺ってところか?やけにスッキリするぜ。」
かかったなバッカス!リバースカードオープン!お前たちの負けだ。
「戦う前に取り決めた条件2では、竜の涙を誰かに使ったらその場で即時戦闘を終了のはずですよね。」
「何?そんな馬鹿な、それじゃつまらんだろ?」
いや、面白いつまらないじゃなくて最初に戦いの条件で設定しただろ!
俺に散々酔わされて、へべれけになりながらも洗脳されるかのように……今回の戦いの条件を一緒に覚えた、あの日のことを忘れたのか?
あの頑張りを忘れたとは言わせないぞ。
酔っぱらいの相手は大変だったんだ……
「さらに条件3では、『諸事情で明確に勝負が決まらなかった場合は、俺の裁量で戦闘を終わりとし、俺を含めて観衆たちが採決を下す。』っていってましたよね。」
うん、確実に言わせた。
「つまり現在の状況はバッカスさんが瀕死となり勝手に「竜の涙」を使ったことにより、条件2が発動され、戦闘終了。さらに、諸事情で明確に勝負決まらなかった場合に当てはまっていると思います。よって条件3を適応して、観衆たちが採決を下すべき状況だと認識してますがいかがでしょうか?」
状況を認識しはじめた、バッカス
「……そうか、さっきの悪夢は正夢だったようだな?俺は嵌められたのか?……すまんなセバスチャン。」
「バッカスさん、貴方は少しも悪くございませんよ、ピッケル様の卑劣さはすでに一流以上のもの、ピッケル様の卑劣さを侮ってはいけません。私も勉強となりました。卑劣さというのも一つの強さ、いつか、正道で私が正してさしあげます。」
嵌めてないし……卑劣でもないし……正さないで!勝つためだもん……
そこまで言われるとちょっと泣けてきちゃうよ?だから使いたくなかったんだ。
恨むべきはにっくき賢者か。
「まあ、酔っぱらってりゃ嵌めることも嵌められることもあるってもんだ、気にしていてもしょうがない。ピッケルが言ってるとおりだ。立会人としてここに宣言する、この試合は観衆たちに裁定をまかせる。」
やった!勝った勝ったぞ!見よこのゴブリンたちの数を!
最低卑劣愚劣な奥の手だが、仕込んでおいた甲斐があった!
このためにバッカスを酔わせ、条件を覚えさせ、立ち会わせ、セバスチャンを襲わせ、瀕死の重傷を負わせ、竜の涙を使わせたんだ。
あれ、こうやって並べてみると結構卑劣か?
とにかく、どれだけ労力を使ったとおもってるんだ?
どんな卑怯な手を使ってでも勝つ!その覚悟を持って戦いに挑んだ俺の勝ちだ。
とにかく勝てば官軍だ!
負けた賊軍をどうしてくれようか?ふふふ。
「まあ。このゴブリンの数だ……やるまでもないが、拍手の大きさで勝者を決めるってことでいいな?」
「はい、是非それでお願いします。」
「私も異論ございません。」
「よしそれでは裁定を始める。」
「ピッケルPTが勝ったと思うものは手を叩け!」
「バチバチバチバチバチバチパチバチ」
ゴブリンたちの盛大な拍手が響き渡る、流石我が民、いくら卑劣な手を使おうとも俺への信頼は変わらない、いつか恩返しするね、老後にでも……
「次にセバスチャンPTが勝ったと思うものは手を叩け!」
「バチバチバチバチバチバチパチバチ」
あれ?音が……遅れて……聞こえて……くるっよ!
じゃねい。
信じられないことに、俺たちPTの時と、同じくらいの大きさの拍手が巻き起こる。
どこだ裏切り者のゴブリンは?見つけ出してクスグリの刑に処してやる。
どういうことだ?何が、何がおこっている?
新手の敵の襲来か?
よく見ると、伝説のおっさんシリーズが凄い勢いで手を叩いているではないか……
「うおおおおおおおおおお」
マイケルが叫びながら手を叩く。
はじけるような爆音が響き渡る。
「パチパチパチ」
ラッシャーが凄まじいスピードで手を叩く。
もう手先が見えてませんけど?取れちゃったの?
どんだけすごい勢いなんだよ。
それがお前の本気か……すさまじいスピードだ、いいもの見せてもらった。
一緒にクエスト行った時も本気だせよ!
「カチカチカッシャンカチカチガッシャン」
トルネオが六つの武器を器用に使い音を鳴らす。
拍手としての効果は薄いようだが、やる気だけはやたら伝わってくる。
お前もかトルネオ……錬成の仲間じゃ……
「パチパチパチパチパチパチ」
一番大きな音を出していたのがそう、この男だ。
魔族に亀甲縛りされながらも、しぶとく生き延びた生粋の変態アイテムマスターダナン。
ダナンが取り出したアイテムから凄い勢いで拍手が鳴り響いている。
「いやぁ、パーティー盛り上げ用に開発したこのアイテムがこんなところで役に立つとは思いませんでした。ピッケルさん頑張ってセバスチャンを倒してください!あなたと私の道具があればきっと勝てます。」
駄目だこいつ……俺を使って自分の道具の効果を確認したいだけだ……
それにしても、さすがは伝説のおっさんシリーズだ。
五人でゴブリン300人と同等の拍手を巻き起こすとは……
やめろやめてくれーーー
その拍手を頼むからやめてくれ……
今までのこと、ちょとだけ反省するからお願いだ。
これからは使い捨てのおっさん扱いしない!伝説のおっさんとして、ゴブリン村の最高顧問達として、いまより少しだけマシな生活を保障しますから!
少しだけ、ほんの少しだけ、俺の日頃の行いが悪かったようだ…………
おっさん以外には優しい俺だが、おっさんだけは容赦してこなかったからな?何か前世で恨みでもあったっけ?
かくして俺が一番手と金をかけて練りに練った奥の手、いわば生きるための生命保険ともいえる秘策は封じられた……仲間だと信じていたおっさんたちの手によって。
覚悟を決めて戦うしかない!
少しだけ、待っていろ。
すぐセバスチャン倒して次はお前たちだ!
「ピッケル、おっさんの力を見誤ったようだな!観衆による拍手は、引き分けとする!よって戦闘再開だ!さあ俺を楽しませろ!」
そうして茶番が終わった……終わってしまった。
生死をかけた戦いが再度始まらんとする。
書いても書いてもなかなかセバスチャンが倒せませんw
【※読者の皆様へ】
「面白い」「続きが気になる」と思ってくださったら広告下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援していただとけますと幸いです!




