遊び人とセバスチャンPTの闘い②
さあ、戦の始まりだ。
戦うからには勝たなくてはならない……
この日の為に散々準備してきたんだ、負けるはずがない。
そうセバスチャンさえいなければね。
「作戦変更だ!賢者から一気に狙おう。」
「こちらは予定通りいきましょう、予定通りピッケルさんへ集中攻撃します。最初の攻撃で心を折りましょう。」
PTリーダーがセバスチャンじゃないという予想外の展開に、こちらは作戦変更を余儀なくされるが、ものは考えようだ。
セバスチャンを倒さなくてもいいのだ!
ちょっと賢者さんをこの世から追放するだけでいい。
それくらいできなくて何が勇者PTですか?
作戦通り最初は様子見で……なんて作戦を俺が立てるはずがない。
最初から全力投球だ!
神剣ゴブリンソードのチャージスキル開放!
「物真似:ファイヤーストーム」
いつだって俺を助けてくれた「ファイヤーストーム」を初手から切っていく。
毎回同じ展開だって?強いんだからしょうがない。
この「ファイヤーストーム」はゴブリンソードに事前にチャージしていた分だ。
MPの消費はない。
これぞ神剣の真骨頂よ。
MPSPの消費が倍になってしまう「物真似」とは最高に相性がいい。
賢者アルレシアを中心に炎の渦が巻き起こらんとする。
「遊び人が炎の上位魔法『ファイヤーストーム』を使うですって?そんな馬鹿な…………想定外です…………とでも言うとお思いですか?あなたが、ファイヤーストームの使い手だというのは、事前に調査ずみですよ!」
「マジックキャンセル!」
アルレシアが賢者固有スキルを発動させる。
マジックキャンセルだと!なんだそれは?まったく知らんな!
聞くまでもなく……その名の通り強制的に魔法の発動をキャンセルするスキルのようだ。
これはマズイ。
「マジックキャンセル……」
俺の炎が嵐様がかき消されようとする……
「想定外です…………とでも言うと思ったかな?全ては織り込み済み!」
俺は冷や汗をかきながらも、ハッタリもかましておく。
だが、炎の嵐打ち消されることなく、賢者を中心にセバスチャンPT全員を巻き込み無事に発生するではないか。
「マジックキャンセル」の効果はなかったようだ?
たぶん、「物真似」はスキル扱いで魔法として認識されなかったのだろう。
ふはははは、伊達に倍のMP使ってチャージしてないんだよ!賢者の「マジックキャンセル」ごときでかき消される我が最強スキル物真似!最強魔法ファイヤーストームでは無いわ!
今知った事実だけどね……危ない危ない、賢者怖い。
「なんですって……マジックキャンセルが効かない…………どういうことでしょうか?これは想定外です…………とでも言うと思いましたか?」
はい、言うと思いました。
もう降参したら?
「熱くもかゆくもありませんよ?」
おっずいぶん我慢づよい賢者さんだ。
これは降参させるのに、あの手この手、奥の手が必要だな。
だが、実際に、熱くもかゆくもなさそうだ、PTメンバーが攻撃態勢に入っている。
あれ?どうなってるのかな、おかしいね。
最強の技が効かない?
これはもう降参すべきかしら?
「炎系攻撃を多用してくることは想定内です。事前にアクセサリーで対策済みです。今の私たちに炎系攻撃は一切聞きません。」
なんだって!良いことを聞きました。
じゃあ「マジックキャンセル」しなくても良かったのでは……覚えたてのスキルで使いたかったのかな、その気持ち良くわかるよ。
「炎攻撃が効かないだなんて…………俺の必殺技が封印されてしまったってことか?…………想定外です…………とでも言うと思いましたか?」
手の内をしゃべっちゃだめだよ賢者さん。
教えてくれなければ俺にはわからなかった!
「シャル頼む。」
「はい!判りました……気が乗りませんが使うしかありませんね……」
「聖者の呪い!」
シャルの新スキルが発動した……聖者の呪い……名前だけでも恐ろしい、俺ならこの時点で降参だぞ。
「聖者の呪い」はシャル固有スキルだ。
勇者二名の怨念を込めて相手を弱体化するスキル。
相手の武器、防具、アクセサリーで付与される各種特殊効果を5分間無効化する……
武器や防具にたよった金満PTに正義の鉄槌をくだす呪いのスキル。
金の力で強くなろうなんて?勇者PTの一員として許せないね……
アクセサリーなんかに頼った自分たちを呪うがいい。
「ええっ……熱い……アクセサリーの効果が無効化されてしまいましたか……完全に想定外です…………参りました…………とでも言うとお思いですか?」
えっとこのやり取りあと何回するの?
思っても思わなくてもいいのでは?
「マジックシールド」
上位加護魔法が発動され、ファイヤーストームの効果が4割減した……
ふふん、六割でも食らってくれれば十分よ!
「4割削減してるとはいえ、ファイヤーストームは流石に熱いですね……とでも言うとお思いですか?」
口癖なのかい?……とでもいうとお思いですか?
「ダブルマジック マジックシールド」
同じ魔法をクールタイムなしで使って来ましたね……
なんていうチートですか、さすが、賢者です。
これでファイヤーストームの効果は八割減………………
俺も相手に合わせよう。
「ダブルマジックですか…………序盤でそのスキルを使ってくるとは…………完全に想定外…………とでも言うとおもっちゃってます?」
お前の口癖は俺が貰った。
ファイヤーストームが二割でも通れば、少しでもダメージが入れば初手としては十分だ?
いや……ここで一気に決める!
「みんないまだ、頼む。」
「マジックスクロール:ファイヤーストーム発動」
「マジックスクロール:ファイヤーストーム発動」
「マジックスクロール:ファイヤーストーム発動」
ついでに俺も!
「マジックスクロール:ファイヤーストーム発動」
俺の奥の手①がさく裂した。
金に物言わせたファイヤーストーム四連撃!いや五連撃だ。
金だよ金、やっぱり金、金で楽に強くなれるなら迷わず使うべきだ!
見たかこれが俺たちの覚悟だ……
炎の嵐が激し過ぎて、賢者PTの姿が、見えなくなる。
本来はセバスチャンを一気に倒すために用意した作戦だ。
賢者のお前に耐えられるかね?
流石にやりすぎたか?
丸焦げになったりしないでね、目覚めがわるい。
「えええええ…………ファイヤーストームのマジックスクロールを四つも使うなんてどんだけ、お金もってるんですか…………さすがにこれはマズイ…………想定外です……とでも言うとお思いですか?」
賢者の口癖また来た!
何度でも何度でも言わせてやるよ!
言うたびにお前の想定を超えてやろう。
でも実際、結構マズイ状況でしょ。
俺はそう思うよ?ファイヤーストーム五発も喰らったら……丸焦げになってしまうぞ。
実際こちらの懐事情はマズイ状況だ。
ファイヤーストームのマジックスクロールいくらすると思ってるんだ?
しかも君たち倒してもドロップアイテムとかないよね……なにやっても赤字じゃないか?
倒しても経験値もドロップも悪い強いモンスター、一番嫌われるモンスターだな。
そういえば、破格のお値段ファイヤーストーム五連撃とはいえ、マジックシールド二連発で八割減されているんだった……
「みなさん、ファイヤーストームが目障りです、吹き飛ばしてください。」
やめて吹き飛ばさないで!この奥の手は金がかかってるんだ、それに綺麗でしょ?
炎の中から見る景色は格別でしょうに……
ついに剣聖セバスチャンが動く。
「ファイヤーストーム五連発とはさすがです、私のような貧乏性な人間には無理な芸当でございます。ですが無駄な浪費に終わることをお覚悟ください。」
「剣聖技 エアブレイド!」
セバスチャンが剣を振るうと刀身から暴風刃が巻き起こり、ファイヤーストームが二個ほど消滅する。
さらに暴風刃をちゃっかり俺目掛けて打ってくるあたり、さすが剣聖といったところ。
危ないからやめなさい!
暴風の中には無数の闘気の刃が仕込まれており、俺のHPを削る。
ファイヤーストームに相殺されていなければ、俺は風にのって星になっていたかもしれない……
星になってしまえばよかったのに……強制的な戦線離脱はしょうがない。
俺の考えを見越して直撃はさせなかったのか?恐るべき執事である。
武闘家ユンさんもスキル発動。
「風雲脚!」
目にもとまらぬ速さで足を振りぬき、風を起こす。
これまたすごい風が巻き起こり、ファイヤーストームがさらに一個ほどかき消される。
もうやめて!僕らのファイヤーストームはあと二個よ!
お金が……錬成資金が……錬成錬成錬成……
だが、すべては想定外だがまだまだ想定内!なんのこっちゃ。
炎の渦がまだ持続している間に俺は奥の手②を使う。
「物真似:剣聖技エアブレイド!」
俺は物真似で今くらったばかりの「エアブレイド」を発動させる。
SPがかなりもっていかれるが、奥の手なのだしょうがない。
ファイヤーストームの効果で、俺たちの周囲は炎と砂塵が舞っており、見通しが悪い、今が不意打ちの絶好の機会!
俺の放ったエアブレイドは、ファイヤーストームをさらに一個消し去る。
しょうがない、必要な犠牲だサヨウナラファイヤーストーム、また逢う日まで。
ファイヤーストームを打ち消し威力を相殺されてはいるがさすがは、剣聖の技だ。
威力を落としながらもバッカス目掛けて飛んでいき、バッカスを切り刻む……はずがバッカスは暴風の中の闘気の刃を完全に見切ったように回避する。
「えっバッカスさん狙いですか??さすがにこれは想定外!だなんて言いませんけど……意味あるのですか。
」
バッカスはすべての闘気の刃を回避するが、暴風にさらされ手に持っていたワインが瓶ごと粉々にくだけちる。
俺の狙い通りにね
「ヒックヒック。今のはセバスチャンの剣聖技エアブレイドか……今日の俺の酒が……ピッケルにもらったすごい良いワインが……この世から消えた……世界でも有数のレアワイン……魔王愛飲のワイン……無くなった……なぜ?どうして?許さない、ゆるさないぞセバスチャン!ワインの恨みお前の血で払ってもらおうか!!」
「これ以上飲まれては立会人がいなくなってしまっては、困りますからね、ワインは消し去らせてもらいました。そもそも、神聖なる決闘中にワインなんぞ飲んでいるのが悪いのですよ。たかがワインごときで、騒ぐのはよしなさい。ただのアル中ですか?立ち合い人は立会人らしくしなさい。」
スキル「声真似」で俺がしゃべった。
完全に宴会芸用に取得したスキル「声真似」だが予想外のところで役に立つ。
スキルで再現した、完全なセバスチャンの声だ。
「たかがワインだと?あのワインがいくらすると思っている……どれほどの価値があると思ってる……許さない許さないぞセバスチャン!お前だけは、許せない。立会中?俺には関係ないな、酒乱は酒乱らしく乱闘といかせてもらおうか?」
そうして、昨日から散々俺たちに酒を飲まされ続けぶっ倒れる寸前のバッカスが戦闘に乱入してきた……
こいつをここまで酔わせるのに10万Gほどかかっている……頼むぞバッカス。
奥の手②が華麗に決まったようだ。
酔いに酔わせたバッカスをセバスチャンの声真似で挑発し、戦いに乱入させ、セバスチャンの足止めに使うである。
あっちなみにバッカスはPTメンバーにはカウントしないでくれよ。
あくまでただの乱入者、神聖な決闘を邪魔するものだ。
バッカス死ぬなよ……しばらくセバスチャンと遊んでいてくれ……また逢えたらいいね。
その時は、また酒を奢ろうじゃないか?




