遊び人は新メンバーと狩りに出る。
翌日は、新PTメンバーとなった、キャトルと四人で初狩りへ。
場所はゴランの密林だ。慣れ親しんだ狩場で出現するモンスターもわかっている。
俺が「キングスライムの咆哮」さえ使わなければ比較的安全な狩場といえるだろう。
使わなければね……
「キャトル今日から改めてよろしくね。」
「はいご主人さまよろしくです。ご主人様を守るため精いっぱいがんばります。」
幼女に守られる男って……ちょっとかっこわるいよな。
とにかく、キャトルの戦闘スタイルを知り、それに合わせた陣形を組みなおす。
「キャトルはどんな風に戦うのが得意なのかな?」
「はい、村で一番敏捷が高いのが自慢です。あとはハイゴブリンになったので、すべてのステータスがほぼ倍になっています。力よりスピードでかく乱し、最後は捨て身でご主人様を守るが私のスタイルだとおもいます!」
やはり敏捷重視だ。だてにワイルドウルフの余興をクリアしていない。
こんな幼女を肉壁にするわけにはいかないし、カリンの勇者スキルぶっぱなしに対応するのにも耐久力よりも、敏捷をあげてもらい、避けてもらうのが一番だ。
今のPTに一番欲しいタイプかもしれない。
シャルとカリンとの三人PTの時は、俺が敵の注意を引きながら火力で削り、カリンは俺の二歩三歩後ろといったところで勇者の固有スキルをためながら大火力で敵の体力を削り切る。
シャルロットは完全な後衛だ。
うまくキャトルが機能すれば、キャトルが敵の注意を引き付けスピードで翻弄し、神剣ゴブリンソードを得た俺と勇者カリンのダブル火力態勢!これは高体力の敵の対処がやりやすくなりそうだ。
今なら魔族が来てもへっちゃらさ!
なんてフラグを立てるのはやめておきましょうね。
「わかった、じゃあキャトルは最前線で敵の注意を引き付けることに注力して。あと、まだ連携がとれていないから、カリンの攻撃にも要注意だよ!火力凄いから敵より注意ね。シャルロットはキャトルを中心に補助&回復を。いつも通りだけどMP管理注意で」
「はいご主人様、PTのためにがんばります。」
「そう、ピッケルと同じ立ち位置で火力職ね、負けないわよ。」
「キャトルちゃん怪我しても、痛みを感じる前に回復飛ばすから、私を信じてね!」
大まかな作戦が決まったところで、冒険者ギルドから借り受けた、馬車がゴランの密林に到着。
ラッシャーをPTに誘いにいったら代わりに快く馬車を貸してくれたのだ。
持つべきものは良き副ギルドマスターだぜ。次は意地でもPTにいれるけどね。
待ってろラッシャー。
キャトルの様子を見るためにも、スライム2匹程度ならキャトルに任せることに決めている。
がんばれキャトルお兄ちゃん応援してるからな。
俺たちのPTメンバーとして有用なところを見せてくれ!
有用じゃなくても気にするな。おっさんシリーズ五人の特訓に一か月くらい耐えればきっとなんとかなるからね!!!
お兄ちゃん本気でお願いしてあげる。
緑色のポイズンスライムが三匹登場。
ポイズンスライムは、ゴランの密林に出現するスライムの中でも強い部類のスライムだ。
毒を吐くだけじゃなく吐いた後もその毒を自在に操って攻撃してくる。三匹が連携してくると避け切るのは困難だ。
俺が協力すると言い出す間もなく……
キャトルは駆け出す。
「いってきまーす。」
お使いに行くように気楽に駆けていくキャトル。
流石にスピードが速い。
両手にはゴブリンソードと交換したというヒッグスナイフが二本握り締められている。
ポイズンスライムまであと20メートルといったところで、更に加速する。何!ここから加速だと……
あら、これ俺やカリンより早いですな。
さすがだキャトル、お前をハイゴブリンにして本当によかった。
スピードを落とすことなく、ヒッグスナイフを投擲する、二本同時投げだ。
俺もたまにやるがどうしても一本に集中してしまい、二本目が狙いから外れてしまったりする。幸運チートで当たるんですけどね。
だがキャトルの投げたヒッグスナイフは真っすぐにスライムに飛んでいき、スライムが二匹同時に爆散する。
スピードに乗ったキャトルの投擲はかなりの威力だ。
武器がなくなったキャトルだが、まったく気にする様子はない。
ゴブリンの5メートル前でフェイントをかける、右に行くと見せかけて左に行くと見せかけて、
ジャンプした。
近くでやられると俺でも目で追い切れるか……
ジャンプの勢いを活かしてジャンピングキック。
スライムさんお陀仏です。
うん。キャトルさん合格!!幼女のくせにやたら戦いなれてるね君。生来お嫁に行く先に苦労するぞ?
「キャトルすごいじゃないか!正直こんなにできるとは思ってなかったよ。」
「えへへ。褒められちゃいました。伊達にゴブリンの村一番の狩りの腕してませんからね。モンスター狩りは五歳のころからの私の仕事ですから!でも前だったらポイズンスライム二匹が限界だったと思います、全部ハイゴブリンに進化させてくれたご主人さまのお陰です。大好き。」
すでにモンスター狩りに従事して五年だと?
俺たちよりも先輩狩り人じゃないか!!これは頼もしい。
戦い終わると同時にナイフを回収し、俺に飛びついてくるキャトル。早い!これはよけきれない!がっつりホールドお姫様抱っこだ。
不可抗力ってやつだよ。シャルカリン。怖い顔しちゃだめ。俺は悪くはない。怒るならキャトルをおこってね。
キャトルのことを幼女とあなどっていたシャルとカリンだが、冒険者としても、ピッケル争奪戦においても強敵の出現にキャトルへの警戒レベルを上げる。
「キャトルちゃんすごいですね。でもまだ狩りの途中です。気を抜かないで!」
「キャトルすごいスピードね!次の敵は私が狩るわよ!とにかくピッケルから降りようか?」
俺の腕からキャトルはスイっといなくなる。
あれ妹よどこいった?誘拐か?カリン脅し過ぎじゃないかい?
「とりゃああーーーご主人様キングスライムです」
先ほどよりすさまじい勢いで駆けていくキャトル。
俺もシャルもカリンも気が付いていなかったが、50メートル先にキングスライムがいた。
俺にお姫様抱っこされながらも警戒を緩めないとは、流石先輩冒険者だ……頼りになるぜ。
「咆哮する直前にナイフを投擲します。ご主人様とカリンねえちゃんでとどめをお願いします。」
ポイズンスライムがむなしく爆散したのを見たのかキングスライムは早くも咆哮で仲間を呼ぼうとしてる。
なあお前スライムキングだよな?少しは自分の力で戦おうぜ。民が泣くぜ?同じ王としてお前は許さん。
咆哮が発動する少し前、20メートルの位置からキャトルのヒッグスナイフがキングスライムに突き刺さる。
咆哮は中断されたが、傷としてはまだまだ浅い。
俺とカリンも一挙に駆け出す。
咆哮を使われてはやっかいだ。いまは無限に倒し続けてくれるラッシャーっておっさんがいないんだよね。
咆哮を使うのはラッシャーがいるときにしてくれ。
俺はスキル「ステータスアップダイス」を使用する「敏捷1.5倍効果時間3分」上出来だ。
一気に俺は加速するが、キャトルのほうがまだ少し早いか?
キングスライムの懐に入ったキャトルはすさまじい連撃でキングスライムの注意を完全に引いている。
ダメージより手数重視の攻撃だ。
俺が到着するまで意地でも咆哮はさせないという覚悟が見える。
キングスライムも、口から毒液やアシッドサンやら多様な攻撃を繰り出すが、キャトルは的確に回避していく。
キングスライムとキャトルではスピードに差がありすぎる。回避に集中したキャトルには当たらない。
「キャトル、遅くなった。」
「いえ。寧ろ早くてびっくりです。早さだけが私の取り柄なのに負けそうですよ。」
そうして加速したまま俺は神剣ゴブリーヌを振りかぶる。キングスライムの注意は完全にキャトルが引き付けてくれているのだ。
ゴブリーヌの異常な攻撃力にキングスライムが気が付いた時にはもう遅い。
必殺!速度の乗ったゴブリーヌによる通常攻撃!!
ゴブリーヌはやすやすとキングスライムを切り裂いていきキングスライムさんが爆散されました。
流石神剣と自分で名乗るだけのことはある。切れ味すごすぎなんですけど?
下手に振り回して自分をきっちゃわないか怖いわ。
「さすがご主人さま!かっこよすぎです。」
といってまた俺に抱き着いてこようとするキャトル。
「キャトルあぶない!!」
まだ戦いは終わっていないんだ!うちのPT特有の戦いがまだある。
ここからは、ゴブリンと遊び人と勇者の戦い!
予知していた俺はやすやすと避けたが、すでに俺に飛びつこうとジャンプしてしまったキャトルはどうしようもなかった。
勇者固有スキル「ブレイブスラッシュ」がキャトルに直撃する。
闘気を刀に宿し、中距離からの攻撃が可能、通常攻撃の1.5倍の攻撃力カリンの十八番だ。
「ひでぶーー勇者さまー」
「ごっごめんね!!久しぶりにいいところ見せようとしたら……ピッケルに抱き着こうとしてるのを阻止しようとかそういうのじゃないのよ?本当にごめんなさいね。」
「ハイヒーリング。キャトルちゃん大丈夫?」
宣言通り、シャルの回復がキャトルが痛みを感じる前に飛んでくる。
だが、傷はいえたが、受けた衝撃は消すことができない。体が軽い分とっても気持ちよくキャトルが飛んでいく。
「あーれーご主人さまーーーハグがー」
空を飛びながら叫ぶキャトル。
そういうところもかわいいなキャトル。
体の痛みは癒えた。だが仲間から攻撃を受けたトラウマは癒えないんだぜ。
これからは、戦いが終わっても気を抜くな。飛んで抱き着いてくるなんてとんでもないんだぜ。
うちのPTこんなんだけど、大丈夫かなキャトル。
一緒に魔王と勇者を倒す旅にでような?
その後は、カリンも冷静になり同士討ちすることはなく、順調に連携訓練をしながら狩りができた。
でもみんな聞いてくれ?俺たちは魔王を倒すためのPTだよな。
こんなぬるい狩りをしていて、強くなれるのだろうか?いやなれるはずがないだろう!
俺は心を鬼にして……
「物真似:キングスライムの咆哮」
すべてはPTが強くなる為だ!
多少の犠牲は看過されてしかるべきである!!
「ご主人様ーこんなにスライムいたら殺し切れません!」
「ちょっとピッケル!!」
「もう、ピッケルさん!危なくなったら守ってくださいよ!!」
うるちゃい!すべてはPTの為だ!沢山倒して経験値とPT資金を用意しようじゃないか。
幸い特段強いスライムが来るわけでもなく、アクシデントもなく危なげなく狩りつくす。
チっつまらんぜ。
こうして四人での最初の狩りは無事に終わった。
キャトルは思いのほか強い、準オッサン級の強さと認定する。
下手すると俺PT追放されかねない??
いやそれはない。
ゴブリーヌを持った俺の火力はそこらの勇者にまけてないからな。
ビバ、ゴブリーヌ!!ビバ、錬成!!




