遊び人とゴブリン村のドラゴンを懲らしめる。
矢は放たれた。
疾風のクロスボウから放たれる疾風の矢は、限界速度でクリスティーナへ。
その心臓に突き刺さる前に、片手で矢を払いのけられる。
予定外、お前はドジっ子キャラだろ?そこは、無難に矢に刺さるべきところだろ??どうせ死にはしないっしょ?
だが仕方ない、彼我の戦力差は甚大だ、無理に戦うことはあるまい。
調子にのってクロスボウしちゃったけどごめんなさいしよう。
「クリスティーナ!ごめん、手がすべっちゃったよ。怪我はない?心配だ……」
遊び人にはよくあることです。
「どう手が滑ったら、急にクロスボウ装備して的確に私の心臓狙ってくるんですかっ」
あらやだ、なんかおこってらっしゃる?
勘違いしてもらっちゃ困る、怒るべきはこちらで、お前はただただ土下座して謝るべき存在邪竜なんだ。
なんなら慰謝料もダナン級に払ってもらおうか?
「遊び人にはよくあることです!気にしないで、それよりお前俺たちの中で邪竜認定されてるんだが?自分の悪行について身に覚えはあるか?」
丁寧にしゃべるのが馬鹿らしくなってきた。
「じゃじゃっじゃ邪竜って!私はここで、ゴブリンちゃんたちを護ってるんです。いわば守護竜ですよ?邪竜だなんてどういうことですかっ?さすがの私もドラゴンブレスしちゃいますよ。」
待てっ、それだけはやめろ。
「クリスティーナって結構大食いらしいよね?ゴブリンの村は貧しい村なんだよ?君が普通に食べるだけでゴブリンの何十人もの食料になってるんだ。そのせいでゴブリンたちが食べるものが無くなってしまうんだよ。今にもみんな餓死しそうになってるのに気が付かないのか??」
「えっそうだったんですかっ?ゴブリンちゃんたちがとっても優しくしてくれて、食べて食べてってドンドンご飯もってきてくれるから、パクパクしちゃってました……みんなのご飯だったの??ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。どうしよう。どうしよう。みんな飢えていただなんて。私しらなくてっ」
それはきっとドラゴンが怖かったからじゃ?無意識で恐喝してたんでは?
涙目で謝る金髪幼女の姿をした邪竜クリスティーナ。かわいいなーもう少し言葉攻めさせてもらおうか??
謝るだけならだれでもできる。
俺もさっき心にもなく謝ったばかりだ、まったく反省はしていない!
クリスティーナお前がしたことは、取り返しがつかない!わが民ゴブリンを虐げた罰、体で払ってもらおうか?
潔くゴブリーヌの餌食になってくれれば、お前のドロップアイテム全部くれるなら、後の面倒は俺が見よう。
「ドラゴン様は悪くないです。私たちも魔族や人間から守ってもらいたくてドラゴン様にいてもらいたかったんです。用心棒代としては妥当、むしろ安いくらいです。誰も死んでませんから。ご主人様どうかドラゴン様をこれ以上責めないであげてください。」
おお。なんと健気で優しいゴブリンちゃん。さすが我が民だ。心優しき民に幸あれ。
「わかった、ゴブリンちゃんもこう言ってるしなあ。今までの悪事は、これからの善行で償うってことでどうだろうか?クリスティーナはこれからは、自分の分の食事は自分で確保するし、飢えさせた分の謝罪としてゴブリンの分も取ってくる。それから、ゴブリンに迷惑をかけたお詫びに引き続きゴブリンの村を外敵から守る。こんなところでどうだろうか?」
ゴブリンちゃんの善意にあてられてしまい、ついつい許しの方向へ話がそれていく。
もっといじめていじめぬいて、秘蔵のレアドロップ「竜の涙」を無償ゲットするのが得策なのにぃ。
俺の格好つけマンめ。
「わかりました。今もヒモジイ思いをしているゴブリンちゃんがいると思うと、いてもたってもいられません。すぐに狩りに出ます。夕方には戻りますから、それまでにお肉を焼く準備をっ今日は肉祭りだよ!みんな楽しみにしていてね。」
言うや否や空を飛んでいく金髪幼女。
その姿はまるで俺の言葉攻めから逃げるようでもある……
おーい。一番手っ取り早いお肉はドラゴンのお肉じゃないかな?腕引きちぎってお肉にしようよ。アイテム「竜の涙」で完全回復できるしね。
なんて思いつつも、俺も調子に乗りすぎてドラゴンブレスされては、死んでしまうからこれでいいのだ。
クリスティーナが真の邪竜じゃなくてよかった。
危うくトルネオを使い捨てのおっさんにするところだったぜ。
「さすがピッケルさんドラゴンと対等に話すとはいい度胸ですね。私は+10の剣を錬成の泉投げ込むくらい緊張してみていましたよ。」
トルネオは、なんでも錬成で例えてくるね。
確かに幸運チートなしで+10を泉になげいれるってのは、折れる覚悟がないとできない行為だ。
って俺も錬成中毒だ。
「さすがピッケルね!これでゴブリンちゃんたちの村は守られるし、ご飯もドラゴンがたくさんもってきてくれるしで、大助かりよね」
「ですね。当初の目的通りゴブリンソードの入手もできそうですしね。ピッケルさん悲願の錬成タイムですね。お金が足りなくなったらいつでもいってくださいね。無利子でお貸ししますからねっフフフ」
シャルありがとう。君からだけはお金は借りちゃダメみたいね……
ゴブリンちゃんを先頭に村を奥へと進んでいく。
最近は人間との関係も悪化しており、人間が村にくる=良くないことが起こる。
という考えからか、みんな家に閉じこもっている。
人間って最低だな。
そりゃゴブリンも魔王の味方したくなるよな。
俺も全部ゴブリン全部殺してゴブリンソードゲットだぜ。
なんて考えてた時期があるくらいだしな。
真に怖いのは人間だ!
「まもなく、村長の家です。もう三十年も村長をしてるんですよ。」
村長の家は普通の人間サイズで作ってあって助かる、今まで見てきたゴブリンの家はゴブリンサイズなので、俺たちが入ろうとすると丁度天井に頭が当たるくらいの高さなのだ。
村長というからには、それなりに威厳があるのかと思いきや、見た目普通の男の子だった。
村長以外にも、村の有力者と思われる少年少女たちが、十人ばかしそろっている、ここはどこの小学生だ?
授業はじめますよー席に着きなさい。はーい静かになるまで三分間かかりましたね……
「ようこそ、わが王よ、伝説のゴブリンソードが誕生し、我らが王が誕生した時からあなた様のことを待ちわびておりました。ささ、どうぞこちらへ。」
上座へ通される。
悪くないな、こういう待遇。村賓っていうのかね?
どうやらこのゴブリンちゃんは、伝説のゴブリンソードの誕生を感じとっていたらしい、さすが村長!よっできる男。
「ピッケルと申します。ゴブリンソードを錬成していたら、特殊効果でゴブリンの王というのがついてしまい、困惑しています。貴方は何かご存知なのですか?」
「そのままの意味です。我が王よ!我々ゴブリンは今後あなたとともに!あなたが行くところどんな死地であろうとついていく覚悟!我らが命はあなたがもの。」
ゴブリンちゃんのくせになんかどっかの騎士みたいね。
可愛い癖に、暑苦しいぞ。なんというギャップだこれは。
「いやいや。急にそんなこと言われても困ります。そして、何もしていないのに、忠誠を誓われてもこちらとしても困ります。私には、勇者とともに魔王を倒すという使命がありますし、あなた方の王になるなんてとても私には務まりません。」
だって遊び人だぜ。
俺に統治させたら、色々面白いことになっちゃいそうだ。
遊び人に統治されるゴブリンほど可哀そうな生き物はいないだろう。
「そこをなんとか!わが王よ、我々の忠誠は我々の命はすでに王の為にあります。このような感情が芽生えたのは私の長い人生でも初めてのこと、とてもすがすがしい気分です。貴方に仕え貴方とともに生き、戦い、死にたいのです。」
死ぬこと前提だこいつ。ゴブリンちゃんて意外と戦闘民族なのかね。
「えっと。ほんとにごめんなさい。私はあなた方の王としてこの地にとどまることもできませんし、魔王を倒す旅にあなた方を巻き込むことはできません。ここに来た目的は一つのみ、ゴブリンソードをゆずっていただきたいのです。あと私を王扱いするのは禁止します。もうすこしフランクにしゃべってください。」
遊び人的に堅苦しい王様ごっこはもう飽きた。気楽な王様ごっこにしませんか?暑苦しいぞ。
「……あなたの事情はわかりました。ですが、王は王なのです!そこはかえれません。ゴブリンソードなら大量にあるんで、いくらでももっていってください。ただ、どうか今日はこの村に泊っていってもらえないでしょうか?せめてゴブリンなりの歓待と今後のことを少しだけでも話をさせてください。」
貧しい村なのに、もてなそうとしてくれる……ドラゴンが丁度狩りにいってるから、食料のあてはあるが、村長はまだそのことまでは知らないはずだ。
村に残されたわずかな食糧から俺を歓待しようとするだなんて、チクショウ泣けるぜ。
「うーん。まあいいか?トルネオさんゴブリンソードを適正価格で買い取る手続きをお願いしますね。今日はここでお世話になりましょう?ちょうどドラゴンも肉祭りしたいっていってるしね。」
そうだ、祭りだ!
ドラゴンと過度にかかわるとろくでもない目にあいそうで早く帰りたかったんだが、ゴブリンちゃんたちの王として、挨拶くらいはしなくちゃいけないよね。
それに、今日は、いままでニートだったドラゴンが真面目に働きに出た記念すべき日なんだ!祭りをしようそうしよう。
そうして俺たちは肉祭りを楽しむこととなった。
祭りに参加しない遊び人なんて遊び人失格だもんな。仕方がない。




