遊び人は戦後処理を行う。
なんとか金髪魔族ならぬ、黒焦げ魔族を殺した。
俺の奥の手を⑨個も使わされるとは何事だ?
遊び人なんて正攻法じゃ魔族やら魔王は倒せんのだ、奥の手秘策卑怯な手!まるごと使ってもまだ足りない。
そう、必要なのは強い肉壁おっさんと、強い神剣ゴブリーヌ+20だ!
「ピッケル大丈夫??あんな作戦無茶だったのよ!体は無事でも精神が壊れるわ!この作戦は二度と禁止よ!絶対だからね、勇者命令よ。」
といって、俺に抱き着いてくるカリン。胸がいい感じで当たるね。
そうだ、今の俺にはこういう癒しが必要だ。
「ピッケルさんこそほんとうの勇者です!一生ついていきます。」
顔を赤らめるシャル。んん?
結婚宣言?一生ゾンビピッケルでいこうってこと?
頬を赤らめながらシャルも俺に抱き着いてくる。
これは、圧迫感のある胸ですね。しばし精神を癒させてもらう。
「ピッケルさん、ありがとうございました!亀甲縛りからの解放ありがとうございました。何度死ぬかとおもったことか」
ダナンも感動のあまり抱き着いてこようとする。
とっさに、遊び人と勇者と聖者三人のキックが飛ぶ。
「ヒデブゥ」
ダナンが空高く舞い上がるアーメン。
せっかくの抱擁ピッケル癒しタイムが終了してしまったのだ、ダナン死すべし。本気のキックを入れてみた。
「亀甲縛りされて喜んでいたおじさんは、抱き着いてこないでくださいますか。」
「ん?あれは、亀甲縛りっていうのね?魔族特有の縛り方かしら?シャルは縄しばりにも詳しいわね。」
カリンのデリカシーのないセクハラ発言に、シャルの顔はまっかっかになる。
黒髪聖女の赤ら顔はずっと見ていられる。
どっかのおっさんの亀甲縛りとは大違いです。
でもなんで、シャルは亀甲縛り知ってるんだろうね?そういうお年頃なのか?
カリンいいぞもっと突っ込め!
「それにしても、驚きました。普通に商売していたら、魔族が現れてあれよあれよと半日も亀甲縛りですからね。いったい誰のせいなんでしょう?誰に慰謝料を請求すべきなのか??ピッケルさんしかるべき説明をしていただきたい。説明如何によっては出るべきところに出させていただきますよ。」
説明しよう……全部あらかたダナンお前のせいだ!!
だが、ダナンさん流石に少し怒ってる。半日も縛られてりゃね。
半日も金髪魔族の横にいたらね。
命すり減るよね。常時パワハラ上司の隣に座らされる的なね。
仕舞には仲間からトリプルキック食らうし。
これぞ道具屋という人懐っこい顔をしたダナン。
一見いい人に見えるが、化けの皮をはがせばアイテムマニアのマッドサイエンティストだ。
怒らせるとどんなフザケタアイテムを使ってくるかわからない。怒らせて得はない。
というか怒りたいのはこちらであって、お前が謝るほうなんだよ!
もう一度亀甲縛りするよ?縛り方知らないからシャルに頼む……なんてご褒美だ?
だが、ここで自己弁護するのもみっともない?ここは、わが僕、聖者シャルロットと、勇者カリンにキッチシ説明してもらい落とし前をつけてもらおう。
俺は二人に目配せする。
「ピッケルは悪くないわ!」
おわり?……みじかっ!!
シンプルだが、圧倒的信頼感と絶対的な自信で勇者が口にするとインパクトがある。
「むむむ」
たじろぐダナン。観念しろやぃ。つぎはシャルロットよ。いけ!
「ピッケルさんはラクーンを救うために活躍する真の勇者です。」
いえ。全く違います。半径五メートルの範囲を守れる力があればいい16歳のかわいい男の子遊び人です。
「むむむむ」
「そもそも悪いのは、ダナンさん貴方です。貴方が破格の報酬でクエストを依頼するから、冒険者が南のゴランの密林にあつまり、北側の冒険者がいなくなり、モンスターや魔族が跋扈するような事態になったのですよ!?
その北側に派遣されていた、銀髪の気持ち悪い魔族を倒してくれたのがピッケルさんです。あのまま銀髪の魔族をほうっておいたら、今頃ラクーンに魔族の軍勢が来ていたかもしれません。」
あら。そうだったの?いつの間にかほんとにラクーンを救ってたのかな。えへん。
「むむむむ」
「わかりました、たしかにピッケルさんは悪くないようですね。疑ってすみません、私のアイテムの良さがわかる人に悪い人なぞいるはずがなかったですね……」
いやお前のアイテムは本当にすごい。寧ろ悪人にこそ評価されてるだろう。
「わかってくれましたかダナンさん。では先ほどの慰謝料の件ですが?」
「ええ、請求するつもりはありません。アイテム同好の士よ、疑ってすみませんでした。」
「いえいえ、ちょっと勘違いされているようですね。此方への迷惑料のことですよ。先ほど此方のシャルロットがご説明さしあげたとおり、あなたのせいで私は何度も命を危険にさらすこととなりました。そのうえこちらはあなたの命を助けた命の恩人ですよ。さあ、慰謝料を払うのはどちらです?出るところとやらにでて見ますか?」
慰謝料の請求だなんて思いつかなかったよダナン!お前のおかげで俺はまた一つ賢くなれた。
さあ、払え。有り金をおいていってもらおうか?こちらには勇者と聖者がいるんだぜ。ぐへへへへ。
「えっと……確かに私が悪かった面は認めましょう。欲しいアイテムがあったとして、あまりに高額の報酬を提示するのは今後止めることにします。ですが、慰謝料を私が払う?亀甲縛りを半日耐えてさらにお金まで払うんなて!そんな馬鹿な……」
「勇者の卵にして、とある大貴族のご令嬢であるカリン、そして、修道院の最高権力者マザーに愛されし聖者シャルロット。そしてそして、ただの遊び人ピッケル!この三人を二度も魔族に襲われる危険にさらした慰謝料。ラクーン一番のアイテム愛好家、ラクーン最高の道具屋、ラクーン最高の商店経営者ラクーン一番で一番亀甲縛りに耐えた漢としていくら払うのが適正とかんがえますか?」
「勇者と聖者とピッケルの命よ!お金がいくらあっても足らないわね。」
慰謝料の相場なんてわからない、相手に決めさせてしまえ。
「確かに私の犯した過ちは大きいのかもしれませんね。アイテムに目がくらみ町や人の安全を考えていなかった……確かに命も助けられた……私がすべてわるいのか……」
少しづつダナンが洗脳されはじめた……
「そうね、いくらほしいものがあっても、節度が必要よね。東の方では村の近くで魔物が確認されたとも聞くわ。小さい子供の命が失われていなければいいのだけど……」
「カリンの言うとおりです、ダナンさんあなたはとんでもないことをしたのですよ。俺たち以外にも死にかけた人がいるかもしれません。」
もう無茶苦茶である。このまま押し切るぞ!これぞPT戦だ。むしろ洗脳戦だ。
「あっあっあっーー私はなんて罪深いことを……」
「お金で解決できる問題とはとても思えませんが、これでどうでしょうか?」
といって五本の指をだす、ダナン。
5000Gかな。
500Gだなんてせこいことは言うまい??
まあそんなものでしょうか。
貰えるだけめっけものだ!いやむしろめっちゃ多い
「5万Gですか……今回の慰謝料には、貴方の命を助けた報酬も入っていると考えます。亀甲縛りを解いたのは誰ですか?聖者の私ですよ。思い出したくもない経験です。聖者を怪我したも同然ですよ。5万Gなんてダナン商会の影響力を考えると、屁でもないでしょうに。」
守銭奴シャルロットがストロングに煽りにいく……たしかに亀甲縛りを聖者に解かせるのはちょっとしたプレイですよね。プレイ代ももらっておこうか?
確かに慰謝料も当然だけど、命を助けた報酬も必要だよね。こちとら慈善事業で人助けしてるわけじゃないんだ。
そこらの偽善勇者PTと一緒にしてもらっちゃこまるんですよ!助けてもらったからには金を払うべきでしょうな。
だが5万Gだと?めちゃくちゃ多いですよ??
ダナンの眉間にしわが寄る。
「聖者シャルロットさん。ダナンの道具屋をなめてもらっては困りますよ。この5はただの5ではない!桁が一つちがいますよ。桁が!」
まさか、500G?さすが道具屋せこい商売しやがるぜ。
「50万Gの5です。ダナン商会が命の恩人に慰謝料で5万Gしか払わなかったなんて話が市中に出回れば、商会の信用にかかわりますからね。」
ふふふうふ。ふふふふふ。
むむむむむ。えええええええ?
えっえっえっ?
ダナンさんすみません。そんなに金を持っている奴は悪い奴に決まってる!
ダナン商会という名のマフィアに違いない。
50万Gもらったが最後、一生暗殺者に付きまとわれるぞ。
「ダナンさん。シャルロットが言い過ぎました。そんなに多くもらえないですよ。アイテムの好事家の同士じゃないですか?そのお金あるのなら、アイテムの開発につかってください。」
遊び人としたことがビビりがはいってしまった。
「道具屋に二言はありません。50万Gといったら50万Gです。」
「幸い最近私のテントや、冒険者グッズが何故か飛ぶよう売れましてね。金ならいくらでもあるんですよ。ぐふふふふ。」
ほんとなんででしょうね……
……それ、お前のせいで急遽遠征用品をかわされた可哀そうな冒険者たちの血と涙の結晶の金じゃねーか。
冒険者を代表してお金はありがたく頂戴します。
ダナンお前はやはり曲者だ。




