遊び人再び冒険者ギルドへ
宿屋に戻るとマイケルが声をかけてくる。
「よう、遊び人どうだった勇者様PTは?お前でついていけそうかい?」
おいおい、むしろ俺に二人が付いてきてる状況だよ!
「ええ。なんとかですね、まだまだ連携不足ですがキットいいパーティーになりますよ。マイケルさんがパーティーに入れば、より手っ取り早く強くなれるんですけどね。まだ、竜の涙もあるし、シャルはいいヒーラーです!今なら安全に何度でも瀕死になれますよ。」
「断固断る。寧ろお前が宿屋に店員になるなら日給1Gでやとってやるぜ。なんせ遊び人だしろくな仕事につけないだろ。ガハハ」
「復帰不能な怪我でもしたら本当におねがいます、日給は10Gね。」
老後の就職先を確保する。
さて、今日から、シャルとカリンもマイケルの宿に泊まることになったのでその手続き、俺がシャルたちの宿に移る方法もあったが、勇者と聖者の御一行様は無駄にいい宿とまってやがる、一泊100Gだと?
それ、ゴブリーヌを1回錬成の泉に投げ込める値段だぜ。
まったくどうかしてるぜ。
今は、金を節約してゴブリーヌ+20を完成させるのが、魔王討伐よりなにより優先されるってのに何考えてるんですか。
わかってる錬成の虜になってるのは俺だ、ギャンブル依存症ならぬ、錬成依存症。
もしかしたら剣ごと消滅するかもしれないというあのスリルがたまらないんだ。
「シャル、カリンこんな小汚い宿で本当にいいの?店主はハゲマッチョだよ?」
「フン。ハゲでマッチョで悪かったな。だが小汚くはないし、セキュリティーは最高だぜ、なんせこの俺の宿だからな、強盗何ぞ向こうから逃げていくし、客はそれなりに選ばせてもらってる。一人間違えて遊び人を泊まらせちまってるがご愛敬だ。」
「はい、ぜひこちらでお世話になりたいと思っています。今はパーティーとしての連携、お互いのコミュニケーションを深めなくちゃいけない時期ですからね。」
シャルがウィンクしてくる。意味深だ……
「是非お願いします。ピッケルとは話したいこと一杯あるわ、それにピッケルが変なおっさんに襲われないか心配だもの。」
うん。俺も心配
「おうよ。勇者様PTだしそれなりの部屋を用意させてもらおうかね?個室でなら30Gだ、全員が泊まれる大部屋も空いてるがどうする?」
マイケルがニタリと笑う。このおやじ……
誰かが何かを言う前に神速でいう
「個室でお願いします。」
みんなの貞操が危ない。
たまに襲い来る俺の遊び人としての衝動がちょっと怖いのだ。
パーティー内恋愛なんざ、絶対禁止。
俺はまだ、若いとっとと強くなってに幸せ結婚生活を送るには、勇者パーティーなんかにいてはならんのだよ。
マイケルがうちのPTに入ってくれない気持ちがわかる。
大切なのは魔王討伐なんかじゃない。家族を守る力だ。
そうして、今日の宿を確保した俺たちは、早速冒険者ギルドで清算だ。
事前に今日のドロップ品は、すべて俺の総取りという、すさまじい契約をしているので、
気分はルンルンだ。明日からはどうするよ。
ゴブリーヌの育成に俺には金がいるんだ!
冒険者ギルドにつくとすでに何組かの冒険者たちがいる。
こうして見渡すと、全員俺たちより強そうだ。
女装がにあう勢いでカワメンのピッケル16歳
貴族風美少女という言葉はこの子のためのもの、カリン16歳
聖者の名に恥じぬ気品と美貌と、勇者二度殺しからくる儚さをまとうシャルロット18歳
うん。俺たちどこからどう見ても只の駆け出しパーティーだ。
事実駆け出しでした……
だが、とくに他のパーティーからチャチャをいれられることはなかった。
なんかみんなすごいお行儀いいです。
なぜなら、本日は歴戦の受付嬢が目を光らせているから、不用意な発言は命取りになりかねない。
なんて息の詰まる冒険者ギルドなんだよ。
あの受付嬢がいる限り、他の冒険者から因縁つけられて、軽くひねり上げる的なイベント発生の余地はない。
普段どれほど魔物を狩っていようが、ここでは、狩られる側だ。
歴戦の受付嬢何者だよ……こんなのが受け付け嬢やってたり、マイケルが宿屋やってたり、武器屋のオッサンも只者ではない。
この世界には普通の店員さんいないのか?
歴戦の受付嬢の前に、冒険者たちは、律儀に全員列にならび、各種業務を行っていただいている。
歴戦の受付嬢は、依頼された業務を最低限の言葉で、しかし的確にそして圧倒的にスピードでこなしていく。
手の動きが追いきれません、ナイフでも持たせたらと思うとぞっとするね。
あっという間に俺たちの番になった。
「また会いましたね。ご盛況のようでなによりです。」
反応はない。歴戦の強者のようだ。
「これからもお世話になると思うんですが、なんとお呼びすればいいです?」
反応はない。名前もないのか?
「要件をいえ。」
ああ、美人なんだが、おっかない。この歴戦感はどっからくるのかねえ?レベル差ってやつなのか?
「ドロップ品を売りにきました。」
これです。ジャジャーンっとばかりにカウンターに並べてやる。
北の森は、レベル25くらいまでの冒険者の狩場として有名らしく、そこまでレアなモンスターはいない。
だが俺が持ち込んだのは、通常モンスターの物はもれなくレアドロップ品、さらには北の森で絶滅が危惧されていた、ワイルドパンダのフンまである。これは期待できるぜ。
値段もそうだが、歴戦の受付嬢の反応がだ。
「合計で1000Gだ。」
そっけない。実に事務的だ。
「待ってください!こっちは、ワイルドパンダのフンまで持ち込んでるんですよん。1000Gじゃとてもうれません。貴方の目は節穴ですか?」
相場なんて知らないが、今度もとにかく煽っていくスタイルだ。ベリーストロング!こちとら勇者PTだぜなめられるわけにはいかん。
カリンと歴戦の勇者とのキャットファイトとか見たいよね?セコンドから応援するぜ。
ギルド内の空気が一気に凍る。オレの後ろに並んでいた冒険者たちが、一目散に逃げだす。
おいおい……歴戦すぎんぞ。なんの魔法だ?
「そうよね、ピッケルの言うとおりじゃないの?、1000Gじゃ安すぎるわ。私のお小遣いの半分じゃない?命がけで狩りをしてこれじゃあ冒険者が報われないわよ。」
おいカリンお前勝手に火に油を注ぐな。
確実に火事になるだろうが!
あと、お前はお小遣い貰いすぎな。
親の顔が見てみたいぜ、そして場合によっては、貴族になってもいいよ?
「前も話したはずだが??査定を変更することはない。どうやら死にたいらしいな。表へでろ。」
恐ろしい威圧感とともに、その一言が発せられた。
こいつが、魔王なのかもしれないな。
なぜか冒険者ギルド受け付け嬢に扮していたのだ。
とにかく、だれか助けて。
なんでこうなったんだ?魔族の企み?
俺にはわからない……
俺のせいだなんて認めない……




