遊び人とドラゴンと宿屋の店主
俺の最大の切り札にして、最初の切り札。
奥の手①が遅れてやってきた。
「竜呼びの笛」で呼び出した、ドラゴンだ。
あのケチなマイケルが俺にアイテムを渡す時点で今回の戦いが厳しいものになることは予想がついていた。
ならば戦力の逐次投入のような愚かな真似を俺はしない。
最大火力で一挙殲滅だ!
ということで開幕前につかっていた笛だが、いまになってドラゴンがやってきた。
「小さきものよ何か用ですかっ?」
「……」
「どうしました。約束ですよっ、あなたのお望みかなえやりますよっ!」
「遅いよ……」
「そこの魔族を殺してほしかったんだが……もう自分で殺したわ!遅いぞ、遅すぎなんだよ。」
竜化しているドラゴンはほんとに一撃で俺を屠るだろう。
だが自分の命の心配をしてるほど、今の俺に心の余裕はない。
「ごめんなさいっ。これでも急いだんだけど、間に合わなかったですか。」
ドラゴンが弱気になりだした。
「この役立たずドラゴン……お前がお前さえあと数分早く来てくれれば、マイケルは、死なずにすんだのに……俺とお前のせいでマイケルは死んでしまったんだ……」
なんか、八つ当たりしてしまって……後ですごい反省した。
マイケルの死を一人で抱えるのは俺には重すぎる。
「んっん。その魔族、私を捕まえていた魔族じゃないですか!あなたが倒してくれたんですか、麻痺系の魔術が得意でまんまとひっかかってしまったんです。でも倒してくれてありがとっ。昨日からずっと探していたんです。マイケルさん……あなたのお仲間はあちらの残念な姿の方ですね……」
残念な姿扱いされた英雄マイケル。
クリスティーナだっけ。お前地味にひどいな。
でもマイケルは怪我がなくても残念な姿だぞ?
禿マッチョだぞ?むしろ迫力が出てていいんじゃないかな、ゾンビ映画で主役級ゾンビできるぞ。
「そうなんだ……あなたの代わりに俺を守って死んじまったよ。本当にいい奴だったのに!」
「見ず知らずの女性二人を助け、挙句には知り合ってまだ2日の俺に、数々のアイテムをほんの少しくれた、まさに英雄の中の英雄だったんだ。」
ケチだってところは強調しておこう。
流石にドラゴン相手に高圧でいるのは無理があった。
「そっかっぁ惜しい人を無くしましたね。でもまだ諦めるのは早いですよっ諦めたらそこで死亡確定ですっ!」
そういうとドラゴンは、見る見るうちに小さくなっていき、金髪少女になってしまった。
うっ……何度見ても美しい。
何度見てもかわいい。
もって帰りたい。
はかなげな容姿の中に、力強い金色の目。
気高き美しさを内在した気品ある幼女だ。
って俺はロリコンじゃない!目覚めていなければな。
「間に合う?助ける方法あるのか?」
「ここは、剣と魔法とドラゴンと、ちょっと許せない魔族の世界ですよ!諦めさえしなければ大抵のことはなんとかなるものですよ。ほら?私だって魔族から助かったじゃないですかっ。」
そういうとおもむろに、ポケットから輝く鉱石のようなものを取り出した。
あっそれ知ってる!俺ももってるよ「竜の涙」!お揃いだね。
余ってるなら俺にもくれ。
「竜の涙よ、この者の友に竜の加護を!英雄をふさわしい姿に戻しその魂をあるべき所へ!」
幼女ドラゴンさんが、厳かに言うと、ポケットから出した竜の涙とやらが光りだす。
マイケルも光りだす。
ハゲてるだけに三倍まぶしい。
閃光系の攻撃かい?俺を攻撃する気か?
目が目がああああ……
なんか回復アイテムらしい。
頭の毛も治ればいいなマイケル……
あまりにまぶしくて見てられなかったが……
「よう坊主、ほぼ死にかけたぜ!三途の川のかなり奥の方からお前の活躍みてたぜ。」
坊主はお前だとつっこみいれる余裕がなかった。
マイケルが復活した……
捨てる魔族がいれば拾う竜族ありってか。
マイケルゾンビの爆誕である。ウォーキングマイケル!これ世界中がマイケルになっちゃうの?
俺は禿げるのは、いやだよ。
本当はうれしくて、泣いた。
マイケルには内緒な。
「ピッケルの涙」ゲットだぜ?
「マイケル!…………ちかづくなーーーこのアンデッドがあぁ。悪霊退散」
「まてまて、しんでねーよ。ギリギリ魂のこってたんだっての。魂がまだ体に残っていれば、体さえ直せば大抵は何とかなる。」
「そこにいる。ドラゴンのおかげだな。ドラゴンの涙はHPSPMPを完全回復させる超レアアイテムだ。なんだかわりーな俺なんかにつかわせちまって。」
確かにもったいないことをした。
敵がいるときにマイケルに使えばいい目つぶしアイテムになるのにな……回復薬として使ってしまうだなんて……
まあいいってことよ。
ドラゴンのだしね、また泣かせればドロップするんじゃね?
俺もまだ二つ持ってる。
「ほんとにマイケルさんなんですね?よかった……転生二日目にして唯一の知人を亡くすとこでしたよ。この世界ちょっとシャレにならってないですね。」
マイケル復活とともにやっと冷静になってきた俺、ドラゴン様への無礼の数々に背筋が凍る思いをするが、ドラゴン幼女は低圧のままでいてくれた。
「少しはお力になれたでしょうか。私は……」
「はい。ありがとうございます!あなたがいてくれて本当によかった。」
今日一のカワメンピッケルスマイルがさく裂する。
許してプリーズ。
「感謝されるなんて、よかったっ!私クリスティーナって言います。この森の向こうの先結構遠くが家ですけど、たまにこっちにも遊びにくるんです。また遊んでください!では、私はここらへんで、またいつでも呼んでくださいねっ!」
なんかドラゴン幼女ほっぺたが赤くなってる。
ヨシヨシしたくなるが、流石にな。
そして、なんかいつでも呼んでいいらしい。
可愛いし、竜の涙欲しいし、竜の涙売りたいし、むしろそのままいてくれてパーティーになってくれていいんですけど。
帰っちゃうのね。また禿げマッチョと二人切り?ハーレムはまだか!!
「はい!また、危ないときは呼ばせてもらいますね!今度はちゃんと間に合うように早めに呼びますけど全速力で駆けつけてくださいね!」
やんわりとグサリと釘をさしておく。
そうして俺の長い転生二日目が終わった、街道に出て町まで戻る。
HPこそ満タンだがMPSPは尽きている、精神的疲労が激しい。
だが、俺は強くならなくてはならない。
今のままじゃ遊んで暮らすなんて夢のまた夢だ。
強くなって、せめて自分とその身内をまもれる強さを確保しなくちゃならん。
だが、だがだが、今日はゆっくり休もうじゃないか。宿に帰ったらとりあえず一番いい個室に変更だ!
なんならマイケルの安宿ともおさらばだな。
資金ならさっきの魔族のドロップした1万Gがある……他にもレアドロップがザクザクと。
さてどうしたものか。
もうスライムハンターも引退して食べていけるんでないだろうか?
おっと強くなるんだった。
とりあえず遊ぶ?遊んじゃう??
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