遊び人は魔族を退治する?
銀色魔族の足元から猛烈な炎が嵐となって立ち上がる。
今回は魔族のクールタイムが終わっていない、結界が張られることはない。
これなら、ファイヤーストームのダメージも期待できる。
魔族は必死の防御の構え、顔の前で腕をクロスさせ、胸と顔と首筋あたりを守っている。
必死だな。
ファイヤーストームの効果時間は約30秒間だ。
泣いても笑ってもこの魔法がの効果が終わった時、どちらかの命が消えることだろう。
この三十秒間の間に逃げることも考えたが、銀色魔族が生き残っていた場合には、どうせすぐに捕まってしまい実験体やら、拷問の餌食になることに変わりはない。
ならば俺は、逃げる代わりに考える。
生き残る手段を!マイケルの仇を打つ手段を!
そして美少女二人を無事に逃がす手段を!
早く助けを呼んでくるんだ!
転移魔法とかあるんでしょ?
考えて考えて考える。
やはり俺の最大の武器は、幸運だ、それに尽きる。
物真似がここまで失敗せずに、発動してくれてるのも幸運が発動率を上昇させてくれたおかげだろう。
ファイヤーストームが使えるだけのMPがあったのも幸運。
ファイヤーストームの中で、飛ぶように舞い、魔族を切り刻んでいる神剣マイケルも幸運のたま物。
これはたぶん命中率に補正がかかってる。
だが、ここまでの幸運は、自らの高い幸運をあてにしながらも、考えに考えて戦闘プランを練ったゆえの幸運だ。
20秒がたったが、新しい戦闘プランはたたなかった。
後は本当に幸運まかせだ!
俺はお前を信じる。頼む殺し切ってくれ!
25秒になろうとしたあたりで、神剣マイケルが炎の嵐から飛び出してくる。
俺の目の前に突き刺さる。
あぶねええ。
マイケルの反乱?
これはあれか、やったってことか?
俺は神剣マイケルを引き抜く。
重い、さっきこれを炎の嵐の中に投げ入れたのは、火事場の馬鹿力って奴で納得しておこう。
神剣マイケルはその重さゆえに、俺では装備できない代物だ、その分切れ味はすごいのだろう。
俺はマイケルをアイテムボックスに入れる。
28秒になり、ゴブリーヌまで、嵐の中から飛び出てくる、お帰りゴブリーヌ。
わが愛しの愛剣よ。
しっかり仕事したか?
俺と同じで逃げてきたんじゃあるまいな。
そして運命の30秒。
炎の嵐がやみ、視界が開けてくる。
ここからが生死を分ける実況見分の始まりだ。
銀色魔族は右手、左手、右足、左足、体中すべてに裂傷があり、それこそホラー映画状態だ。
そして、片膝をつきながらも……生き絶え絶えながらも……口が動いている
何かを詠唱している様子が見て取れる。
転移魔法で逃げるんですね?それなら許す……訳ないだろ。
何にしろ、詠唱が終わり魔法が発動する前に、最後のとどめを刺さなくてはならない。
本当にあと一押し、ほんの少しのダメージで魔族は死ぬだろう、だが、もうMPはない。
残るSP20と幸運にすべてをかけて銀色魔族に向かって突進する。
イチかバチか、ゴブリーヌを最上段に構え、防御は全く無視して突進する。
俺の力とゴブリーヌでは、防御無視した命がけの一撃でどうにか魔族にとどめを刺せるかの際だろう。
「危うく死にかけたが、もうSPもMPも残っていまい、貴様の攻撃ごとき真っ向からうけてやるわ。」
詠唱しながら器用にしゃべる銀色貴族。
両手両足に怪我して痛くて動けないだけでしょ?
「両手両足大ダメージでまともに動かせないお前は俺のこの攻撃をくらうしかねーんだよ!」
「だまってしにやがれーーーー」
俺は振りかぶったゴブリーヌを神速で打ち下ろす、すべてのスピードとすべての体重と、すべての幸運とマイケルへの思いを攻撃力へ変えて俺の攻撃が銀色魔族にさく裂する。
「うおおおおおおおお」
「うおおおおおおおお」
「スキル『早着替え』!神剣マイケルよこの手に!」
神速で打ち下ろされたゴブリーヌが一瞬で神剣マイケルに代わる。
驚愕する銀髪魔族、しゃべる暇すらないが、(それ聞いてねえぞ)と心の声が届く。
だって言ってないもん。
今思いついたんだもん。
神剣マイケルは自らの重みでさらに加速し、銀色貴族の頭に突き刺さる。
銀色魔族は断末魔を上げる間もなく、真っ二つに切り裂かれた。
それこそきれいにぱっくりと。
ちょっとやりすぎたかな?スマンスマンちょっとしたトラウマだ。
とにかく勝った……
初めて使用するスキル「早着替え」効果はなんとなくわかっていたが、攻撃モーション中に発動できるか?
どれくらいの速度で武器が入れ替わるのか?
タイミングが悪ければ最悪武器がない状態で、最後の攻撃が行われていただろう。
賭けに勝ったのだ。
最後の最後、未知のスキルに頼るという賭け。
この賭けに成功していなければ、ゴブリーヌではトドメはさせなかったかもしれない。
最後の攻撃に移行する数秒前に考え出した最後の切り札 奥の手⑥だ。
すべてが紙一重だった。
HPこそ満タンだが、SPもMPもすべてを使い切った。
持ちうるすべてのスキルと幸運、そして愛すべき友マイケルを使い切ったのだ……
レベルが大量にあがった。ドロップ品も大量だ。スキルレベルもアップした。
だが、今は確認する気にもならない。
「マイケル…………」
異世界に転生して、右も左もわからない俺にとても親切にしてくれた。
アシッドサンをかけても半殺しでわらって許してくれた。
だが、もういないのだ。
人が死ぬ。いともたやすく死ぬということ。
友が死ぬ、目の前で殺されるということ。
とてつもない無力感、敗北感、焦燥感、ありとあらゆるマイナス感情が俺を襲う。
とんでもないことをしてしまった……
だが、泣いてばかりいてもしかたないのは俺が一番わかっている。
泣いてる遊び人はピエロだけだ。
俺はピッケル遊び人だ。サーカスの主人公ピエロにはまだなれない。
マイケル俺はお前の仇を打つ!
楽しく遊んで遊び人してられる世界じゃないことはよくわかった。
ちょっと狩りに行くだけで、あっさりと人が死ぬ世界に俺は来たのだ。
初めて俺は強く思う。「強くなりたい」と。
「誰よりも強くなりたい」
遊び人がなんだって?関係ない。
俺はこの世界の最強を目指す!
柄にもなく「遊び人」らしくもなくてもいい、努力を惜しまず生き抜く……
そう固く誓った時である。
忘れかけていた……奥の手その①がやってきた。
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