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005 学校デビュー 後編

(あれ? 外履きが無い)


 この学校では学校の中は上履きを履き、外に出る時は外履きに履き替える。

 ある日、家に帰るために靴箱の前に来たスィータンは、自分の靴が無いことに気づいたのだ。


 (ちゃんとここに入れたよね?)


 場所を間違って入れたのかもしれないと思って、他の棚を探す。

 だけど、靴箱には名前が書いてある。よっぽどのことが無い限り他の人の靴箱には入れない。


 (どうしよう! どこにもない!)


 ワタワタしながら靴を探すスィータン。靴をなくしたなんて知られたら父親に怒られること間違いなしだ。


 そんな様子を陰から見ている女の子がいる。ハーリクちゃんだ。

 スィータンが無言のまま慌てているのが面白いのか、ニヤニヤと笑って見ている。


 (あったわ!)


 そんな様子は永遠には続かなかった。

 なんとスィータンは靴を見つけたのだ。

 靴箱の横に隠されるかように置かれていた靴。

 ホッと一息ついて、靴を抱え上げるスィータン。


 その日は事なきを得たのだが、そんな出来事は回数を増してきた。


 お遊戯用のスモックが無くなったり、読もうとしてた本が無くなったり。

 まだ悪戯の域を出ないので、すぐに見つけることができ、先生たちの耳にも入っていない。

 まあしゃべれないスィータンは先生に言うことができないのだが。


 そして今日もカバンが無くなっていた。


 (カバン、どこいったんだろう……)


 辺りを見回すスィータン。

 そろそろパターンを掴んできたころだ。大体は大きなものの影に隠されていることが多い。

 だけど今日は違った。


 近くに隠したのでは効果が無いとハーリクちゃんは気づいたのか、いつもと違うパターンに出たのだ。

 それはすなわち、校舎の外にある茂みへと遠出して……そこに隠していた。

 

 辺りを探しているだけでは絶対に見つからない場所。

 これで慌てふためいて泣き出す様まで見られるに違いないとハーリクちゃんは期待していた。


 だけど――


「あら? あの子どこに行くのかしら。探すのを諦めたのかしら?」


 ハーリクちゃんはスィータンの姿を隠れ見ながら、スィータンの行動がいつもと違うことに気づいたのだ。

 いつもならワタワタしながら近くをごそごそと惨めに探しているのだが、今日は近くには隠していない。だから、気に入らないスィータンが慌てている姿をずっと見られると思っていたのに……、スィータンは教室を出て行ってしまった。


 その後をこっそり追うハーリクちゃん。

 スィータンはスタスタと歩いていき、外履きに履き替えて校舎を出て。そして、茂みに隠してあったカバンを見つけてしまったのだ。


「なんで! どうして見つけるのよ! 覚えてらっしゃい!」


 あっさりと見つけられたことに腹を立てて地団太を踏むハーリクちゃん。


 次こそは、と隠す場所の難易度を上げてみたものの、その後何度やってもスィータンは簡単に隠したものを見つけてしまうのであった。


 その理由はというと。


 《今日はゴミ箱の中だよスィータン》


 《いつもありがとうフラ》


 《スィータンに見つからないように隠してるかもしれないけど、フラには丸見えだからね》


 スィータンに付き従う精霊フラがハーリクちゃんがものを取って隠すところまで一部始終余すところなく見ているからだった。


 そんな事を全く知らないハーリクちゃんは、今日も今日とてスィータンの持ち物を隠すのだが――


「あら、ハーリク・ノークさん。それは?」


「えっ? えっと……」


 隠す場所を探していた時に先生と鉢合わせしたハーリクちゃん。咄嗟に持っていたものを体の後ろに隠す。


「何を持っているんですか? 先生に見せられないものですか? もしかして学校に持ち込んではいけないものを持っているんじゃないでしょうね」


「ち、違います!」


「じゃあ見せてごらんなさい」


「えっと、その……」


 もちろん出すに出せない。持っているのはスィータンの名札だ。

 そして程なく先生に見つかってしまう。


「どうしてハーリクさんがスィータンさんの名札を持ってるのかしら?

 そう言えば他の先生が言ってたわね。スィータンさんがいつもフラフラ歩いて、人気のない所に行っては戻ってきたら手に自分のものを持ってるって……。

 もしかしてハーリクさんがスィータンさんの持ち物を隠しているのかしら? 素直に言いなさい。黙っているならご両親にお伝えしなくてはなりませんわよ?」


「ダメっ! パパとママには言わないで!」


「だったら話して?」


 もはや隠すことのできなくなったハーリクちゃんは、涙目になりながら自分の犯行を認めたのだった。


 当然その行為は淑女教育を行っている学校としては許されるものではなく。ハーリクちゃんは学校一厳しいと言われる先生にこんこんとお説教をさた。


「ごべんなざぃぃぃぃぃぃぃぃ! もうじまぜぇぇぇぇぇぇん!」


 二度とこんなことはしないとマジ泣きしながら誓ったにもかかわらず、お説教から解放されたのは一週間後の事だった。


 ◆◆◆


 《最近あの子に持ち物を隠されなくなったよね》


 《隠しても隠してもスィータンが見つけるから飽きたんじゃないのか?》


 《フラのおかげだよ。いつもありがとうね》


 《フラはスィータンの精霊だからね。いつでも力になるよ》


 こうして神隠し事件は幕を下ろしたのだった。

お読みいただきありがとうございます。

初日の投稿はここまでとなります。

セレンUKの新作はいかがでしたでしょうか。


いつものとおり、良かった、続きが気になる、応援します! という方はぜひ評価の★を入れてください。とても喜びます。

感想もお待ちしております。良い、好き、などの2文字から気軽にどうぞ!

作者のモチベーションに繋がりますので、よろしくお願いします。


この後はストックが無くなるまでは毎日更新予定です。

次回をお楽しみに!

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