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037 脅威! 同好会ドラゴン! 前編

『それでは改めてルールの説明となります。リーダーであるドラゴンの頭に位置する人が地面に落ちたら負けとなります。もう一つ、ドラゴンの頭部側から6人以上が脱落すると負けとなります。この競技の主体はあくまでドラゴン。体半分の5人までは驚異的な再生能力で生き延びることができますが、それ以上のダメージを追うと死んでしまいます。つまりは敗北です。あと、武器の使用は認められていません。ドラゴンは武器とか使ったりしませんからね。それ以外はルールはありません! ドラゴンとドラゴンが文字通り命を懸けて生存権を獲得するための戦い! それはそれでどうかと思いますが、建国王の定めたルールなので仕方がありません!』


「殴る蹴るはありだべよ。総番の手を煩わせるまでもないっぺ。俺たちでやってやるべ!」


 土台に位置しているサイドがそう言う。

 荒々しいイベントなのだ。だから女子の出場チームが無い。今回も女子で出場しているのはスィータンだけ。あとは全員男子。


『それでは第1回戦を開始します。ドラゴンズダッシュ同好会VSスィータン総番チーム!』


「総番、行きますぜ」


 いっちにぃ、さんし、と全員の歩調を合わせて会場の中央へとドラゴンを動かすスィータンチーム。


「す、スィータンさん、もうちょっと、ゆるめて……」


 揺れに対応するために、一層股をぎゅっと閉めたスィータンだったが、それ即ち、下のナギィの首を絞めることに。なんなら足を交差させて首絞め技見たいになっている。


 上がそんなんだが、下は割とスムーズに動いている。

 スィータンを除いた9人は総番の優勝という目的のために練習を重ねてきたからだ。


 中央で向かいあう二チーム。

 ドラゴンの頭部部分の二人、すなわちリーダー同士がにらみ合う。


「たとえ相手が総番チームであっても、我々ドラゴンズダッシュ同好会に負けは無い。それを見せてあげるよ」


「…………」


 もちろんしゃべれないスィータンは無言。

 それ以前にバランスを取るので必死。

 同行会長のキメゼリフを聞いていないどころか、にらみ合ってすらないのだ。


『準備は整いましたね。それでわっ! ドラゴンズぅぅぅぅぅぅ、だあぁぁぁぁぁぁぁしゅ!』


 解説のマティラが開始を宣言する。

 気合の乗った声。実はこっそりと練習していたのだ。


「総番! 突撃します!」


 ドラゴンズダッシュの見せ場は神輿のぶつかり合いのようにドラゴン同士の激しいぶつかり合い。組み付かなければ戦いも始まらない。

 そのためトールは総番ドラゴンの歩を前に進める。

 地面に足を付けている8人が地を蹴る音が響く。一糸乱れぬというわけには行かないが、これまで練習を重ねてきた力強い音だ。


「!! !!」


 頭部のスィータン総番。驚きで声も出ない。


 地面に足を突いている人たちはいい。だけど、上に乗っているナギィや肩車状態のスィータンは揺れの影響を諸(もろ)に受ける。

 ぐわんぐわんと大きく揺れる体を、あっちでゆらゆら、こっちでゆらゆら、なんとか体勢を維持するので精一杯。大きく右に左にと腕を振って、辛うじてバランスを取っている。


「やはりそうくるか、総番ドラゴン。だけどそんな攻撃をくらう俺たち同好会ドラゴンじゃないぜ! 右方横進!」


 勢いに任せた素人ドラゴンの突進だ。前回開催から一年間練習を積み重ねてきた同好会ドラゴンにとっては、それを正面から受けてやる義理も無い。

 頭部の会長からの指示によって統率の取れた足音が響き、同好会ドラゴンは右方向へと移動する。


「かわされたでやんす!」


 ドラゴンは急には止まれない。

 そのため、突進の勢いを少しずつ殺しながら総番ドラゴンは右へと円を描く様に移動し、向きを相手へと戻す。


「行くぞ、もう一度だ!」


 総番ドラゴンが再度突撃体勢に移行する。


「何度やっても同じだ!」


 第2撃も同好会ドラゴンは回避するつもりでいるのだが――


 (思ったよりもスィータン総番の動きがいい。あの腕の振りは危険だ。掴まったら終わりだと思っていいだろう。だから組み合うわけには行かない)


 冷静に相手を分析する同好会長。

 彼はワルーガがやられたときの事を見ていたわけではない。人づてに聞いただけだが、スィータンの力が脅威だという事は認識している。

 そのせいで的外れな分析結果を出してしまっている。


「お前ら、声出せ! うぉぉぉぉぉ!」


 トールが叫ぶ。根性論ではあるが、総番親衛隊はだいたいそんなもの。ナギィのような頭脳派メンバーは少ないため、どうしてもそちらに方向が流れていく。

 今回も他のメンバーがうぉぉぉぉぉ! と釣られて声をあげている。

 声を出したことで実際に総番ドラゴンの勢いが増し、同好会ドラゴンへと迫る。


「タイプC、8だ!」


 同好会長が奇妙は言葉を放つ。

 すると、同好会ドラゴンが先ほどと同じく右へと移動しだし、突撃してくる総番ドラゴンから距離を取って回避する。


 だが、それだけに終わらなかった。


「うわっ! やりやがったな!」


 勢いのまま通り過ぎようとしていた総番ドラゴンの横っ腹に対して、突如進行方向を変えた同好会ドラゴンが体当たりをかましたのだ。


「右方横進! 深追いはするな!」


 お互いのドラゴンの振動は一瞬。同好会ドラゴンがすぐに距離を取ったからだ。

 同好会長の思惑通り、がっつり組み合う事はしない。相手の隙をついて小さなダメージを与えたのだ。

 先ほどの暗号は攻撃を示している。タイプCは回避後に体当たりする作戦で、8は8歩移動後逆方向へ体当たりする意味だった。

 それを実行に移せるという事だけで、同好会ドラゴンがかなりの練度を誇ることがわかる。


「この程度じゃないぞ。いくぞトルネードアタックだ!」

「「「「「「「「「オウ!」」」」」」」」」


 9人のかけ声とともに、一糸乱れぬ同好会ドラゴンが、ぐるぐると総番ドラゴンの周りを回り始める。

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