036 ドラゴンズダッシュ開催! 後編
こちらは本日2話分公開した部分の2話目となります。
1話目を読んでいない方はお戻りいただき、1話目をお読みください。
結構彼女がポカしがちなところを幼馴染のナギィは知っていた。
スィータンが走るのが好きなことも知っていたし、ちょうどこれは勘違いしている感じだな、とスィータンの様子を見て思っていたのだ。
じゃあそれを伝えてあげればいいのでは、とお思いの皆さま。
そうはなかなかならなかったのだ。
「あの、スィータンさん」
と声をかけようものなら、
「おい、ナギィ、総番に軽々しく声をかけてるんじゃねーぞ!」
とトールに邪魔をされ、
「いや、その、ドラゴンズダッシュの――」
と確信に切り込もうとしたら、
「ば、馬鹿! お前何を言ってるんだべ! そ、総番、き、気のせいだべ。ナギィは何も言ってないべ!
ナギィお前、ちょっとこっちにこい!」
と、一度ドラゴンズダッシュの事で総番の逆鱗に触れたと感じているショーンが、躍起になってその話題を逸らすのだ。
それだけ執拗に邪魔をされれば奥手のナギィは黙るしかなく。
おかげで当日までスィータンが勘違いしていることを確認できず。
もしかして本当はちゃんと理解しているかもしれないという一縷の望みにすがってしまった。
だけど、今日のスィータンの表情を見て理解してしまった。
やっぱり勘違いしていたんだと。
なんでしっかりスィータンに確認しておかなかったんだ、という後悔と、こうなったら自分が完全にフォローするんだ、という意気込みで盛り上がってきたナギィだったが、現在そんなことは忘却の彼方。
肩車したスィータンの事で頭が一杯になって、溢れ出してさえいる状態なのだ。
『さーて、参加チーム全4チームがそろいました! 司会は私、ドラゴンズダッシュ運営委員会のマティラがお送りします!』
始まってしまった。
解説席に座った一人の女子がマイクを使って観客全員に呼びかけたのだ。
『それでは出場チームの紹介です! 1チーム目は優勝候補、ドラゴンズダッシュ同好会の皆さま! 一年間今日のために命を懸けてきた男たちのチームです!』
「「「「ワァァァァァァァ」」」」
歓声が地鳴りのように響く。
それだけ多くの生徒がこのドラゴンズダッシュ会場に集っているということだ。
『事前にコメントをいただいております。【俺たちドラゴンズダッシュ同好会は今日のために地道な努力を重ねてきた。年1回、俺たちが一番輝ける日のために。そのために彼女も作らず、雨の日も風の日も訓練を重ねてきた。そして今日、俺たちは勝つ! 勝ったらぜひお付き合いしてください。】……なんだこのコメント。ま、いっか。はーい、モテない男たちからのメッセージでしたぁ』
ドラゴンズダッシュ同好会のリーダーが肩を落としている。
『さて、次のチームは、お祭り大好きウェーイ貴族チームです!』
「「「「ウェェェェーーーイ」」」」
組まれたドラゴンからメンバー全員が、人差し指と小指だけを立てた状態の手を伸ばしてひらひらした動きをしている。
『顔のいいチャラい貴族たちがノリで参加してくるいつものチームですね。大体1回戦で消えてしまう泡沫候補ですが、顔が良いために地味に人気があります。でも、今年は止めといたほうが良かったんじゃないかなって、私は思います!』
始まる前から彼らの力が知れてしまったが、すでに生徒全員が知っている情報なので問題はない。
『そしてそして、私がそう思うのも止む無し。だって、今年はこの人が参加するからだ! 皆さまもご存じ、一年生にして総番! その優しさと無言の背中に助けられた生徒は数知れず! これからも次々と伝説を生み出してくれるであろう、我らがヒーロー! スィータン総番チームです!』
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
地鳴りのような歓声が沸き起こった。
ただ大きいだけではない。振動として胸の底まで響いてくるような重く強い声援。
「っ! さすがは総番だ! この声援! この人気!」
予想を超えた応援だったのか、トールの声も少し上擦る。
だが、当のスィータンは笑顔を見せることも手を降ることも無い。
声援どころではないのだ。
両手をナギィの頭に固定して必死に、揺れるのを、落ちそうになるのを耐えているのだ。
『さすがはスィータン総番です。この声援に表情一つ崩さずクールなまま! あれほど安定したドラゴンを私はこれまで見たことはありません! 優勝の期待大です!』
解説のマティラが勘違いした解説を入れる。
それを真に受けて観客たちも大いに盛り上がる。
『それでは最後のチームですが、これまた異色のチームです。申し込み申請書によるとチーム名は、ダークネス・ヴァイン! 聞いたことのない名前でしたが、なんて言う事はないただの引き立て役! あのドラゴンの頭部を見てください! かつては暴君として名をはせていたが、スィータン総番に指先一つでやられてしまい、逆に伝説となった男! ワルーガ・ノーク! 今回も無様な姿を見せてくれるのだろうか!』
「「「「「ブーブーブー」」」」」
『会場からブーイングが巻き起こっております』
「うっせーぞお前ら! 誰がこの学園の王か思い知らしてやらぁ!」
人相の悪いワルーガが、親指を立てて下へ向ける。
『申し込み申請者の方から事前にコメントを預かっております。えーとなになに、【リーダーのワルーガは妹思いのお兄ちゃん。何を思ったか妹の喧嘩に出て行った挙句、妹と同じ年の年下女子に負けてしまう情けないお兄ちゃん。こんな姿が妹さんに知られたら、どうなるかなぁ。お兄ちゃんさいて~ぇ、って言われちゃうかな。】って、なんじゃこれは。よくわかりませんが、陣営からのコメントでした』
「フーカの野郎っ!」
青筋を立ててキレ顔を披露するワルーガ。
こうして出場の4チームが出そろった。
お読みいただきありがとうございます。
全てが空回っている状態のスィータン総番チーム。
果たして無事に戦い抜くことが出来るのか!
次回、強敵ドラゴンズダッシュ同好会チーム!
乞うご期待!




