034 野郎って……私は女なんですが
――学園のとある一室
「ワルーガさん、どうやらスィータン総番がドラゴンズダッシュに出場するようですよ」
椅子にふんぞり返って座っているワルーガに向かって、一人の女子がそう言った。
これまでワルーガの周りでは見なかった子だ。
3年生を示す紺色のネクタイをしていることから、ワルーガと同級生であることは見て取れる。黒いロングヘアーに前髪ぱっつんの、目の細い糸目の女の子。
スッと通った鼻筋が彼女の顔立ちの美しさの一つとなっている。
「馬鹿野郎! あいつを総番って呼ぶな!」
怒鳴り散らし、ワナワナと震えながら苦々しい表情を浮かべるワルーガ。
「野郎って……私は女なんですが、まあいいです。話を戻しますが、スィータン・アルゲンがドラゴンズダッシュに出場するようです。我々ダークネス・ヴァインはどうしますか?」
「ふん、おもしれえ。ボコボコにして借りを返してやろうじゃねえか。おい、フーカ、参加手続きをしておけ。最高の10人を選び抜いておけよ」
ニヤリと笑みを見せたワルーガ。
「私がやるんですか? ちょっと仕事を押し付けすぎじゃないですか? ただでさえアナタがスィータン・アルゲンに負けてから一味が総崩れになったところを、私一人のマーケティングでダークネス・ヴァインとしてよみがえらせたんですから」
フーカと呼ばれたその女子は口答えした。
彼女の言う通りなのである。暴力で支配していたワルーガの支配体制はスィータンに負けたことによって崩壊した。これ以上負けたワルーガに従う必要が無いと、多くの手下たちは逃げ去って行った。そこに突如あらわれたフーカが、巧みな話術と伝手で新たにメンバーを入れた上で拡大させたのが新たなワルーガ一味、ダークネス・ヴァインである。
「はぁ!? 負けてねえし! 壁に体当たりしただけだしぃ?」
「はいはい。負けてない負けてない。ワルーガさまさいこー」
抑揚のない声で適当な相槌を打つフーカ。
表情すら作らず無表情のまま答える様は、ワルーガと彼女の関係性の一端を示している。
「分かればいいんだよ分かれば。だが、お前には感謝してるぜ? ボロボロになった一味を見ず知らずの俺のために立て直してくれたんだからなぁ」
「ええ。普通の人はそんなことしませんからね。私だからそれをやって、私だからできたんです」
「もちろんだ。お前は俺の参謀としてふさわしい。だからドラゴンズダッシュも任せる」
「はーっ、仕方ないですねぇ。分かりましたよ。スィータン・アルゲンに勝てるように手を回しておきますよ。いろいろとね」
細い糸目が少し開いてニヤリと笑う様は、彼女を知る人が見れば恐怖を覚えるに違いない。
こうしてスィータンの知らないところでいろいろなことが動いているのであった。
お読みいただきありがとうございます。
復活したワルーガ、そして新たな組織ダークネス・ヴァイン。
付き従うフーカという女子は何者なのか!(番宣風
準備期間はここで終わり。次回、ドラゴンズダッシュが開催! お楽しみに!




