026 ナギィと親衛隊 前編
ところ変わって校舎の裏に連れて行かれたナギィ君。
そこは人の気配も無く、何が起こってもだれも気付かないような、学園でも負の力を生む場所。
ナギィの目の前には3人の男子生徒。
スィータン総番の親衛隊を名乗る3年生達だ。
一人は背が高く、一人は横に広く、一人は背が低い三者三様の上級生。
そんな中の背の高い男、トールがナギイを睨みつけながら口を開いた。
「おまえ、総番とはどんな関係だ?」
ドスを効かせた声。その背の高さも相まって威圧感は半端ない。
「ぼ、僕は、スィータンさんとは幼馴染だ。彼女が困ってるように見えたから」
声が若干震えてしまったのも無理はない。
上級生と対峙するだけでも震えるところを、目の前には三人もいて、明らかに敵対行動をとられているのだ。
「総番がお困りになっているとしたらお前の存在だべ」
「これから総番に近づくんじゃねえでやんす」
「そんな!」
他の二人から次々と一方的に言葉を投げつけられてしまうが、到底受け入れることなどできないナギィ。
上級生へと食ってかかるが、それは逆効果。
「ええい、痛い目を見ないとわからないようだな。おまえらやっちまうぞ!」
「「おう!」」
頭脳派であるナギィは3人がかりでボコボコにされてしまった。
「これに懲りたら総番に近づかないこった」
そう言い残すと、3人は戻って行ってしまった。
ノックアウトされたナギィ君。
体中が痛く、動こうとすると口から声が出てしまうほどのため、ぼろ雑巾のように地面に横たわることしかできない。
そんな状態の彼の耳に、聞き覚えのある声が聞こえた。
それはナギィの同室の先輩の声。
「お、おい! ナギィ。大丈夫か!?」
先輩が駆け寄ってくる。
ナギィが連れて行かれたという話を聞いて彼を探していたのだ。
「せ、せんぱい……」
「何があったんだよ。とりあえずは治療だ!」
先輩はナギィを連れて男子寮に帰り、手当を済ませて、そして、落ち着いたナギィから事情を聴いた。
「なるほどな。スィータンちゃんに親衛隊が。で、お前はそれが気に入らなくて突っかかって、逆にボコボコにされた、と」
「はい……」
そこまで話を聞いて、先輩は、ふーっと息を吐き出した。
「あのなぁ、俺やお前は武闘派じゃないんだから。力で叶うはずがないんだよ。もしお前が、あいつらを気に入らないんだったら、あいつらを潰すんじゃなくて、親衛隊に入って内側から変えるしかないんだよ」
「はい……」
「気が進まないのか?」
「……そりゃそうですよ」
消え入るような小さな声だったが、悔しさがにじみ出ている。
先ほどボコボコにされたばかりで、あの3人と仲良くやれるとは到底思えないのもある。
それに、スィータンが困っているのは親衛隊という存在なのだ。すぐにでも無くしてあげたい。
逆に中に入って内側から変えるなんていう悠長なことはしたくないのだ。
「でもな、お前がスィータンちゃんの事を好きなんだったら、手段を選んでいる場合じゃないんじゃないか?」
「どういうことですか?」
「スィータンちゃんは総番になった。今までは目立たずにお前だけが見ていたのかもしれないけど、これからはそうじゃない。あの親衛隊の事もあるし、皆が注目している。それは、スィータンちゃんの事が広く知れ渡るという事だし、それだけ知れ渡ればお前のように好きになるやつが他にいてもおかしくないだろ。もちろん親衛隊もそうだ。どういった意図で親衛隊を組織しているかは分からないが、スィータンちゃんに最も近い。お前も近くにいないと、その時には手遅れになるぞ?」
「…………」
ナギィは無言だった。
自分がスィータンの事を好きだという事は自覚している。だけど、スィータンにそれを伝えるつもりも気持ちを無理強いするつもりもない。ただ、しゃべれないあの子の助けにはなってあげたい。
だから、戸惑っているのであれば困っているのであれば何とかしてあげたいのだ。
ふつふつと込み上げるその思いに、ナギイは決意を固めるのであった。
お読みいただきありがとうございます。
長くなりすぎたので二つに分けたら短くなりすぎました。
後編は3日後に公開する予定ですので平にご容赦を!




