020 なんかすげえやつ 後編
それは私が道に迷って校内を彷徨っていた時の事。
「おい、一年、どっちだ? お前はどっちに行きたいんだ?」
「アハハハ、やめてやんなよ。1年になったばかりなんだよ? 読めるわけないって、ウケル」
私は女子の先輩に捕まっていました。
目指しているのは歴史資料室。先生に頼まれてそこから資料を持ってこなくてはなりません。
私は初等部からの上がりなのですが、初等部とは校舎が違うために場所の勝手がわかりません。
あれやこれやで道に迷ってたところを、目の前の女の先輩二人に見つかって、この場所まで連れてこられました。
目の前には二つの看板。
右の矢印に文字が書かれたもの、左の矢印に文字が書かれたものです。
先輩方が言うには、どちらかが歴史資料室ということです。
ですが、私には文字が読めません。先輩方の言う通り、まだ習っていないからです。
どっちに行くのか、と言われてもどちらが正解かわからず、私はオロオロするだけ。
そんな最中、一人の女の子が通りかかりました。
長く伸びた前髪で顔はよく見えないけど赤色のリボンをしているので、私と同じ1年生であることは分かります。初等部の時に見たことが無い子なので、外からの入学者だと思います。
その子はツカツカと歩いてきて先輩と私の間で立ち止まりました。
「なんだテメエ、こいつの友達か? だったら答えていきな。歴史資料室はどっちだよ」
「…………」
「なんとか言ってみろよコラ!」
「やめなよ、読めるわけないから、この子と同じだって。ウケル」
「…………」
その子も黙ったままです。
私と同じで読めないのでしょう。巻き込んでしまってごめんなさい……。
そう思った時でした。
その子は、スッと指を左側に差しました。
「テメエ、1年の癖に読めるわけねーだろ。あてずっぽうだな? 外れてたらひどい目にあうぜ?」
そう言われたにもかかわらず、その子は微塵も指を動かしませんでした。
そんな様子に、先輩たちは馬鹿にされたと思ったのでしょう。
「ふざけんなよ。アタシたちを馬鹿にしてただで済むと思ってないだろうな?」
と怒り始めました。
「……」
女の子が無言で私の方に振り返りました。
前髪で彼女の目は見えないのですが、何か力強さを感じました。
そして、彼女は同じく、指で左側を指したのです。
私に対して、左側が正解であると、そう指し示したのです。
「おい、お前、無視するなよ!」
「ちょ、ちょっと、やめなよ。この子、絶対読めてるよ。あれを見てみなよ」
「あれって? あの本か? うげっ、こいつ、古代言語の本持ってるじゃねえか。アタシらだってまだ習ってねえのに」
「もう行こ。しらけちゃった」
「そうだな。じゃあな1年」
そう言って先輩たちは行ってしまいました。
そして、その子も何も言わずに行ってしまいました。
本当は声をかけるべきだったんだと思います。
ありがとうって、言うべきだったんです。
だけど、あまりの出来事に私は立ち尽くすことしか出来ませんでした。
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「ということがあったの」
「まじかよ。古代言語って高等部で習うやつじゃん」
「そこもあるけどさ、なかなか先輩の間に割って入るなんて出来ねえぜ」
「そうだな。俺だったらできない。正直、すげえ」
「そうなの。すごくかっこよかった……」
「あいつ、何者なんだろうな」
「名前も知らねえしな……」
スィータンの事を全く認識していなかったクラスメイト達の間に、なんかすごい奴がいるという認識が広まったのであった。
お読みいただきありがとうございます。
いろいろと噂になるスィータンちゃん(8)。
一体次は何が起こるのか。
お楽しみに!




