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015 おねえさんとの相部屋 前編

 それから数日。スィータンは毎日アネファのベッドにお邪魔してぐっすりと眠る日々を送っていた。


 アネファと一緒に登校している様子は仲睦まじい姉妹の様で。スィータンは全く気付いていなかったが、その様子は学園内でも噂になり始めていた。

 それもそのはず、アネファは学園で一二を争う人気お姉さん。彼女とペアで同室になりたいと願っていた女の子はたくさんいるのだ。


 この学園はエスカレーター式でもある。スィータンが前の学校で学んでいたように、その3年間をこの学園の初等部で学んだ子たちはそのまま中等部に進学している。アネファもその(たぐ)いだ。

 つまりはアネファの人気は初等部から上がってきた子たちにはすでに周知の事実。それゆえに多くの子が同室の座を狙っていたのだが、そこに入ったのは外から来たスィータンだった。

 大概の子は自分のくじ運の無さを残念がるところだが、ごく一部の子はそうではない。


「へぇ、あれがアネファお姉さまのペアね。ぼーっとして馬鹿っぽそう。いかにもお上りさんの田舎者って感じね。簡単に騙せそうだわ。ふふっ」


 二人の姿を遠目で見ていたひとりの女の子が小さく呟く。

 その様子はアネファとスィータンに目を奪われている他の女子達に気づかれることは無かった。


 スィータンに魔の手が迫る!


 そんなことはつゆ知らず、スィータンは校舎内を歩いていた。

 探検である。


 優しいお姉さん、アネファにお世話されたスィータンは早くも学園生活に慣れて来て、学園内を探検するくらいの余裕が出てきたのだ。

 スィータンは人見知りではあるが、完全インドア派ではない。むしろ一人で行動して人気のない場所などを探すのが好きな子だ。


 一人でいるように見えて、精霊フラが常に付き添っているので、本当は一人と一精霊ではある。


 《ここは音楽室。あっちは、美術室》


 《ご機嫌じゃないかスィータン》


 《私、気づいたの》


 《何に気づいたんだ?》


 《ここに住んでると、ココーク義母様やピアラお姉様に嫌な事言われないの》


 《そりゃあまあ、離れてるからね》


 《うふふ、それにアネファお姉ちゃんが凄く柔らかくて優しいの。ピアラお姉様とは大違い》


 《確かに、アネファはピアラとは全然違うね》


 《でしょ! るんるんるん。あ、あそこは何の部屋かなぁ?》


 上機嫌で校舎を見て回るスィータン。

 そんな折、謎の部屋の前へとたどり着く。

 その部屋の扉は閉ざされており、中の様子はうかがえない。それにこれまでの教室にはあった部屋名が書かれたプレートが設置されていないのだ。


 なんだか不気味な感じがするが、テンションが上がっているスィータンはそんな気持ちよりもワクワク感が勝って……そっと扉に手を伸ばす。


 (カギは開いてる……)


 伸ばした手はカギに阻まれることなく引くことが出来た。

 扉が完全に開いたが、明かりが無く、中は真っ暗。

 何があるのかと興味をもたげたスィータン。さすがに真っ暗な中に飛び込むのは勇気がいるので、頭だけ中に入れて中の様子を観察しようとしたところ――


 《あれ? 今、何か光った?》


 《そう? フラは気づかなかったけど》


 もっとじっくりと中を見ようとしたところ。


「あーっ! 見たわ、見てしまったわ!」


 急に背後から声が聞こえたものだから、スィータンはびくっと体を震わせて後ろを振り返った。


 そこには胸元に同じ1年生を表す赤いリボンを付けた女の子の姿があったのだ。


「その部屋に入ってはいけないって言われてるでしょ。そこは封印された道具とかが置いてある禁倉庫なんだから。かかってる鍵まで開けて入るなんて、いけないんだぁ」


 そんな説明は聞いた覚えがないスィータン。

 オロオロと視線をあちらこちらに揺らす。


 もちろんこれはこの子の言う嘘である。

 本当はただの倉庫。鍵がかかっていなかったのはたまたまであり、中に入ったくらいでは咎められたりはしない。

 とはいえ、先日入学したばかりのスィータンには分からないこと。


「言い訳はしないってわけね。よそ者の癖に関心じゃない。でも、駄目なものは駄目よ。私が先生に言ったら、あんたはすっごく怒られるわ。もしかして退学かもね」


 (た、たいがく!?)


 退学になんてなったら父親にすごく怒られてしまう。家から追い出されてしまうかもしれない。

 退学という言葉は慌てるスィータンをさらなるパニックに陥れた。


 せわしなく視線を動かすスィータンの様子を見てニヤリと笑みを浮かべた女の子は、畳みかけるように言う。


「退学よ退学。私が先生に言ったら、あんたは退学。退学になりたい?」


 その言葉にスィータンは無言でブンブンと首を横に振る。

 しゃべれなくても意思疎通は可能だ。


「ふーん? じゃあ、一つ言う事を聞いてもらうわ。あんたがそれに従ったら私はあんたが開けてはいけない部屋を開けたことを黙っておいてあげる。どう?」


 何をやらされるのだろうと考える間も無いほど早くスィータンは頭を縦に振っていた。

 退学になっては困るのだ。


「良い心がけね。じゃあ、あんた、私と部屋を代わりなさい」

お読みいただきありがとうございます。

さっそく騙されてしまうスィータン。

アネファお姉ちゃんとの幸せな日々もここまでなのか!

次回もお楽しみに。

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