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選択肢
妻は悩み続けた。
夫からは「会いたい。」と何度も上司夫婦を通して連絡があった。
娘は何度も父親がいつ帰って来るのかを聞いた。
幼く拙い言葉で………。
娘を抱き締めて妻は聞いた。
「お母ちゃんだけじゃ駄目? お父ちゃん、居て欲しい?」と………。
娘は意味が分からないようだったが、「お父ちゃん、居て欲しい?」だけは分かったようで「おとちゃん、居て。」と言った。
涙が止まらなくなった。
妻は夫と娘が会うことを了承した。
それから、夫は何度もやって来て娘との時間を楽しそうに過ごした。
娘は父親に初めて「たかい、たかい」をして貰って喜んでいる。
公園でのブランコも滑り台も父親に抱かれて楽しそうだ。
娘の輝くような笑みが、妻には寂しく思えた。
⦅もう……戻るしかないの?
信じられないのに……愛されていないと分かっているのに……。
夫婦として……やっていくこと……出来るの?⦆
娘の為に全てを飲み込んで夫婦としてやり直すしかないのだろうか……。
夫が「一度、京都へ来てみないか? 家を見て欲しいんだ。」と言った。
妻は悩み続けた結果、その提案に反対出来なかった。
娘と二人で京都へ行くことになった。
昭和46年、まだまだ女性が一人で子育てしながら働き生きていくことが可能な社会ではなかった。
妻の選択肢は最初からなかったのかもしれない・




