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捨てられた女  作者: yukko
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3/7

男尊女卑

残された妻は、就職など不可能だと思った。

無いのだ。

子どもが居る身では……第一、求人の多くが新卒採用なのだ。

子どもを保育園に入れるお金も無かった。

何よりも家賃、光熱費、そして食費に残された僅かな貯金を使うしかなかった。

夫が失踪する前から内職をしていた。

今の収入源は内職だけだった。

そんな時、夫の上司の妻と偶然、出逢った。

ふらふらと顔色が悪いまま歩いていた。

曾ての社宅の傍を……。

真面に食べていない。

ふらふらする身体で妻は子を背に負っている。

そんな妻の姿を見た上司の妻が声を掛けたのだ。

上司夫婦は妻と夫の結婚式で媒酌人をした。

上司夫婦は案じていた。

退職理由が夫の失踪だったからだ。

社宅も出て貰うしかなかった。

その時、上司夫婦はたまたま甥の結婚式に出る為に上司の実家に行っていた。

1週間、帰省を予て……。

上司夫婦が帰宅して、部下の失踪を知ったのだ。

その時には退職の手続きも終えていた。

部下本人が退職していたのだ。

それを部下の妻は知らなかった。

哀れだった。


上司の妻が声を掛けると、妻は驚いて後退った。

話を聞くために、上司の妻は自宅に連れ帰った。

上司夫婦も社宅に住んでいた。

上司夫婦の自宅は妻にとって幸せだった日々を思い起こさせた。

就職できないこと、夫の行く先は分からず、何ら連絡がつかなかったこと、夫の両親に見捨てられたこと……泣きながら話す妻。

上司の妻は可哀想で堪らなくなった。

顔色も悪く、ほんの短い間で窶れてしまった妻。

上司の妻は、取り敢えず何か食べさせたいと思った。

簡単な物を作るから食べるように言ったが、妻は固辞した。

「母乳も出ないだろう。子どもの為に食べて!」と言うと、妻は両手を点いて頭を畳みにつけて「ありがとうございます。」と泣きながら言った。

上司の妻が聞くと、近くのアパートに住んでいることが分かった。

「お父さんに頼んでみるわ。どこか働ける場所。」と妻に約束した。

上司は自分の妻から現状を知った。

上司は夫が働いていた職場と同じ建物の中の食堂で働くことを提案してくれた。

子どもを見る人が居ないことを理由に断ろうとすると、子どもは上司の妻が見ると言う。

有難かった。

地獄のような日々に仏様に会った!と妻は思った。


それから、妻は会社の食堂で働きながら、内職もしている。

夫からは何の連絡も無い。

当然のように現金書留も届かない。

夫の両親とも絶縁になった。

あの日、夫が居なくなったのは妻が至らないからだと義両親が激怒してから手紙すら届かない。

生まれた子が男の子だったら違っていたのだ!と妻は思っている。

男の子だったら跡継ぎだからだ。

男尊女卑の考えが蔓延っていた昭和40年代だった。

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