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捨てられた女  作者: yukko
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23/25

元夫・神原昭雄

元夫・神原昭雄は3回結婚したが、3回共、離婚に至った。

最初の結婚の妻は、和子。

最愛の人・恵子の余命宣告を受け、家族をそのままに家を出た。

それから帰って来て、やり直した。

だが、最愛の人・恵子に似ている恵子の姪・恵との出逢いが、不倫に繋がり、また家族を捨てた。

二番目の妻は、恵。

昭雄の両親との同居が上手くいかず、同居して間もなく別居、そして離婚に至った。

三番目の妻は、両親が進めた縁談で結婚した相手だった。

両親の勧めで結婚したが、両親との折り合いが悪く、別居だったのに離婚に至った。


昭雄は髪に白い物が増えた今、後悔している。

思い出すのは最初の妻・和子だけになっている。

もう最愛の人・恵子の面影は薄れて思い出すことさえ無くなった。

それなのに、何故だか和子のことばかり思い出す。

共に暮らした日々を……幼い恵子の顔を姿を……お腹が大きくなった妻・和子のことを……思い出してばかりだ。

両親は看られないので、老人ホームに入れた。

会社で働きながら自宅で介護など不可能だからだ。


昭雄に恵との間の子は面会も出来ないままだ。

恵の再婚相手が拒否したからだ。

和子は恵と違い、昭雄が子どもと会うことを拒否しなかった。

だから、今、娘・恵子と息子・賢一には電話をして会いに行っているし、会いに来てくれる。

今の昭雄は、孫に会うのが楽しみで、子ども達に出来なかったこと……おもちゃを買ってあげることを……している。

年を重ねると、孫はゲーム機やソフトを欲しがり、昭雄はその度に全く分からないから、子どもに……恵子に、賢一に店まで連れて行って貰い購入している。

孫達の七五三の祝いなどで和子にも昭雄は会えていた。

その時には、いつも和子に言われる。


「あの日はね、晴れてたのよ。

 恵子さんの元へ走った日も、戻って来てから離婚した日も……

 雲一つない晴天だったの。

 私は泣いてるのにね。

 お空は綺麗な青……笑顔みたいだと思ったわ。」

「…………良く覚えてるな。」

「傷つけられた方は覚えてるのよ。」

「……済まない。」

「……捨てたのに、ね。若い頃に捨てたのに……よ。

 この人ったら……よりを戻そうって言うのよ。

 馬鹿なの?って思うわ。

 あんな目に遭わせておいて、何が籍を入れようよ!

 ねぇ、そう思うでしょう。」

「………そう思うか。」

「何が、そう思うか、よ。」

「まぁ、こんな風に会えれば……生存確認が出来ていいよな。」

「生存確認する必要、ある?」

「あるよ。」

「ふぅ~~~ん。」


昭雄はその度に「あの日は晴れていたんだ。」と言う。

すると、和子は決まって「そりゃ、あなたは捨てた方だから記憶に残ってないのよ。捨てられた方は……忘れられないのよ。」と言う。

不思議なものだ。

離婚して離れていたのに、子どもが繋がっているから、自ずと繋がった。

そして、いつの間にか話せるようになっていた。長い時を経て……。


◇◇◇◇

桜が満開の春。

昭雄は恵子と賢一に呼び出された。

昭雄に会って直ぐに恵子と賢一は目を合わせて軽く頷いた。


「どうした? 何か用か?」

「お父さん、私達から話しておきたいことがあるの。」

「何だ? 改まって。」

「お父さんに私達の子どもは良くして貰ってるわ。」

「本当に感謝してるんだ。」

「当たり前だろう。孫なんだから……。」

「良くして貰ってるけど……お父さん。」

「うん?」

「私達はお母さんの介護をするけど、お父さん……。

 お父さんの介護をする気持ちは無いの。」

「!……………そうか……。」

「僕達は母さんがどんなに大変だったか、辛かったか、見て来た。

 僕達を育ててくれたのは、母さん一人。

 だから、母さんには何でもしてあげたいんだ。

 出来得る限り最期まで寄り添いたい。

 でも、父さんには……そんな気持ちは芽生えない。」

「お父さん、私達、お母さんが夜中に泣いている姿を見て来たの。

 賢一は知らないけど、私は覚えてることがある。

 お父さんが帰って来なくなってから、どんなにお母さんが泣いてたか。

 それは幼心に覚えてる。

 不倫したのよね。

 離婚の原因はお父さんよね。

 だから、私達はお父さんの介護をする気持ちになれないの。」

「…………分かった。」

「孫と会うのは今まで通りよ。」

「それを変える気は無いよ。僕達も今まで通り会うよ。」

「………分かった……孫達に会わせて貰えるだけで充分だ。

 お前達とも会えるんだな。」

「うん、それは変わらないから………。」

「充分だ、ありがとう。」

「話は、これだけ………。」

「そうか………。」

「お昼ご飯、お父さん、一緒に食べようね。」

「この店の天婦羅は美味しいよ。」

「そうか………。」


昭雄は子ども達と別れて「自業自得だ。」と吐き出すように呟いた。



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