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捨てられた女  作者: yukko
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22/25

賢一の結婚

息子・賢一が結婚したい女性(ひと)が居ると言った。

そう言った週末、賢一は家にその女性を連れて来た。

⦅年上?⦆と女性の姿を一目見て思った。


「初めまして、お母様でいらっしゃいますね。」

「初めまして、賢一の母でございます。」

「母さん、彼女は一人で子どもを育ててるんだ。」

「まぁ……そうなの。」

「はい、一人で息子を育てています。」

「男のお子さんなんですね。」

「ええ、今日はご挨拶なので私一人で来ました。」

「そうですか………あの、お子さんのご年齢は? お幾つですか?」

「小学1年生です。」

「小学生…………。」

「ええ、あの子、もう賢一さんに馴染んで……慕ってます。」

「そうですか。賢一を…………。」

「仲良くなれたんだ。」

「そうなの、良かったじゃない。」

「では、反対されないんですね。」

「息子と言いましても、幼い子ではございません。

 決めて歩むのは賢一でございます。

 母親の私が口を挟むことはございません。」

「まぁ! 賢一、素敵なお母様ね。」

「うん、母さんは苦労しただけ人として優れてるんだ。」


二人は挨拶だけに来たと言ったように、本当に挨拶だけして彼女は家に帰った。

賢一はその彼女を送って行った。

夜遅くに帰宅した賢一に一言だけと思い、心の内にある不安を話した。


「賢一、あなた……同情じゃないでしょうね。」

「同情? 違うよ、好きになったんだ。」

「だったら、いいけど……同情では不幸な結婚になるかもしれないから……

 母さん、心配で聞いてしまったのよ。」

「分かってるよ、母さん。

 ………他に聞くことある?」

「年上って何歳なの?」

「13歳年上だよ。」

「13歳………年上……なの、ね。」

「うん。」

「じゃあ、しっかりしないとね。

 頼りないと思われないように!」

「大丈夫だよ、安心して。」

「……そう?」

「何? その疑問符が付いてる言い方………。」

「母さんは母親だからよ。」

「あはは……そうだよね。

 子どもは親にとって何歳になっても子どもって言うし。」

「結婚式とか決めたの?」

「ううん、これから……。」

「先様にご挨拶は? 母さんしなくていいの?」

「また、これから彼女と考えるから………。」

「そうね、決まったら教えてね。お姉ちゃんにも話してね。」

「うん、分かってるって!」


その挨拶から1年後のことだった。

賢一はその彼女と別れたと言った。

結婚式場など全てキャンセルしたと賢一は言った。

別れの理由は単純だった。

彼女は二股を掛けていた。

賢一から、「『何方も好きだけど、賢一より彼の方が年収が高いの。息子を育てるのに、どうしても年収に目が行くのよ。やっと結婚するって言ってくれたの。ごめんね、賢一。許して。』と彼女に言われた。」と言った。


「賢一、母さんね。

 彼女の気持ちが全く分からないって訳じゃないのよ。

 母さんも一人で育てて来た。

 正直、お金が足りなくて……あんた達に充分に出来ないことが辛かった。

 だから、少し分かる気がするの。」

「………うん。」


賢一の酒量が増えた。

⦅親は何も出来ないのよね。ただ待つしかない。立ち直ってくれるのを………。⦆と賢一の姿を見て思い、祈った。


「どうか、あの優しい賢一に心休める時間を下さい。

 どうか………この世に神様がいらっしゃるのなら……

 あの子の涙を……生きる力に代えて下さい……お願いします。」


賢一は仕事に今まで以上に打ち込んだ。

それは、医師という職業を選んだ時に言っていた言葉を賢一自身が思い出したかのように……。


「母さん、俺、人を命を救いたいんだ。

 それが出来る職業に就きたい。

 母さんが俺をおんぶして夜中に走ってくれただろう。

 その時に開けてくれた医院の先生みたいな医師になりたいんだ。

 俺、頑張るから……見守ってくれ。母さん………。」



賢一は、その後、紹介された賢一より1歳下の女性と結婚した。

賢一には「同居は絶対にしません。二人で助け合って暮らしなさい。これから、賢一は彼女の人生をも背負うのよ。責任は重いの。分かってる? しっかりしなさいよ。」と言った。


妻の子育てが終わった瞬間だった。

辛かったことが思い出されると共に、楽しかったことも、嬉しかったことも……思い出した。

恵子も、賢一もいっぱいの嬉し涙と笑みを与えてくれた。


⦅こんな母親なのに……いい子に育ってくれて、ありがとう。

 非行に走ることも無く……反抗期というほどのことも無かった。

 私は子どもに恵まれた。ありがとう……本当にありがとう。

 ………これからは、私は独り。

 自分の人生を残りが僅かなのかどうか分からないけれども……

 誰にも恥じ入ることが無い人生を、自分の為に生きよう。⦆

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