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捨てられた女  作者: yukko
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19/25

娘の挙式

娘の結婚式当日、新郎新婦の旅立ちを祝福しているような晴れ渡った青い空が広がっている。

娘・恵子は妻と共にバージンロードを歩いた。

歩きながら妻の目からは大粒の涙が流れ落ちている。

先で待っている新郎に大切に育てた娘を委ねる。

言葉を、伝えたい言葉を用意していたのに、涙で妻は伝えられなかった。

席に着くと息子・賢一がハンカチを出して「母さん、泣きすぎ。」と耳元で言った。

教会での挙式が終わり、席を立ち外へ向かっている時、一番後ろの端の席で一人座っている元夫の姿を見た。

⦅恵子……呼んだんだ。⦆と思った妻。

その妻に頭を深く下げた元夫。

賢一は元夫に声を掛けなかった。

そのまま外へ出た。

挙式には、あの上司夫婦も参列してくれた。

一番、助けてくれた二人の姿を見て、妻は声を殺して泣いた。

教会の外で出て来る新郎新婦を待つ間、今までのことが走馬燈のように思い出された。

愛する夫の裏切り、そして離婚。

経済的に大変だったが、子ども達は真っ直ぐに育ってくれた。

妻がこの人生で願うことはただ一つ。


「どうか、子ども達が健康で幸せな人生を……。

 人様に迷惑を掛けない人生を……、歩めますように。」


ただ、それだけだった。

高学歴を望んだことも無い。

健康でなければ幸せではない。

だから、先ずは健康であって欲しい。

幸せな人生かどうかは、命が尽きる時まで分からない。

ただ、努力して欲しい。

人様に迷惑を掛けない人生を……警察の御厄介になるような人生だけは歩まないで欲しい。


「自分がされたら嫌なことを人にしてはなりません。

 自分の嫌は他の人も同じように痛いのだと分かりなさい。

 虐めたら駄目。それはね、卑怯者がすることなのよ。

 だから、何かあったら、見たら、お母ちゃんに話しなさい。」

「そんなことしたら、チクったって虐められる。」

「お母ちゃんは絶対に守るから……虐められている子も、恵子も、賢一も。

 守るから、話しなさいね。」

「……………。」


あの時、子ども達は返事をしなかった。

恵子が虐めに遭った時、「お母ちゃん、学校に行きたくない。」と話してくれたことは今でも嬉しい。

母を頼ってくれたことが今でも嬉しい。

学校側と話し合えて対策も立ててくれた。それから虐めはなくなったから……。

貧しい事を理由にした虐めだった。

「ただ懸命に生きているだけなのに、蔑まれる謂れは無い。」と校長の前で言った。


◇◇◇◇

教会の外で新郎新婦を待つ妻と息子の後ろの方に元夫は向かった。

その姿を見て、妻は⦅全く役に立たない父親だったわ。⦆と心の中で吐き捨てた。

⦅見目がいいだけ、高学歴なだけ……夫としても父としても最低。⦆と心の中で毒を吐き続けた。


そんな風に思いを巡らせていると、隣に居る賢一が「母さん、姉ちゃんが出て来たよ。」と笑みを零して言った。

教会のドアが開いて、新郎新婦が出て来た。


⦅恵子……ごめんね。充分なこと出来なくて……ごめんね。

 お金持ちだったら……お母ちゃんが正社員だったら……

 そしたら、もっと、してあげられた。

 恵子……ごめんね。⦆


今も娘に息子に申し訳ないと妻は思っている。

妻は涙で恵子の美しい花嫁姿が霞んで見えない。

⦅あぁ……もう巣立ったのね。恵子………幸せに……幸せに………。⦆と妻は心の中で繰り返した。

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