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捨てられた女  作者: yukko
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15/25

離婚

夫が選んだのは妻と子ではなかった。

18歳の恵を選んだ。

妻は娘とお腹の中の子と、再び捨てられた。

上司夫婦は「あの時に離婚していた方が良かったのに……京都へ行くよう言って本当に申し訳ない。あんな奴とは思わなかった。」と妻と幼い恵子に謝った。

妻は恵子に話した。


「お父ちゃんとはね、お父ちゃんのお仕事で一緒に居られなくなったの。」

「お仕事?」

「そうよ。お仕事………。

 だから、恵子とお母ちゃんはここから引っ越すの。」

「引っ越すの?」

「そうよ、ごめんね。お友達とお別れすることになって……。

 恵子………本当にごめんね。」


「ごめんね。」と言って泣いている妻を幼い娘は、タオルを持って来て「お母ちゃん、泣かないで。」と涙を拭いてくれた。


⦅恵子とお腹の子を守り抜く。私だけが……私だけ……で……。

 守り抜いて育て上げる!⦆


引っ越し先は夫と妻が出逢った職場の近くにした。

上司夫婦がアパートを見つけてくれた。

「私達の責任は重い。出来得る限りのことをさせて欲しい。」と言ってくれたのだ。

妻の就職先も何とか探すと約束してくれた。

もう今の妻には縋るしかなかった。

夫が帰らなくなってから、引っ越しまでの間に、夫と会ったのは二度。

その度に恵子は大喜びだった。

その喜ぶ姿を夫はどう思ったのか……何も感じなかったのか……。

夫から貰ったのは引っ越し代金と一月の生活費だけだった。

長じた娘と息子からは「慰謝料と養育費請求出来たのに!」と言われたが、その当時の私には「慰謝料」も「養育費」も言葉すら知らなかった。

引っ越しの日、夫はやって来た。

夫が帰らなくなってから二度目だった。会いに来たのは……。


「恵子………ごめんな。」

「お父ちゃん、お仕事、頑張ってね。」

「うん、お父ちゃん……頑張るよ。」

「お父ちゃん、お仕事終わったら帰って来る?」

「…………また、いつか……恵子に会いに行くよ。」

「うん!」

「恵子………勉強、頑張れよ。」

「うん!」

「恵子、もう行くから……。」

「うん、お母ちゃん。

 お父ちゃん、行ってきます。」

「………うん、行っておいで………。

 無事、出産してくれ。産まれたら知らせてくれ、頼む。」

「……………知らせて……意味があるの?」

「……………父親だから…………。」

「………………恵子、行こう!」

「元気で! 元気で居てくれ!」

「お父ちゃんも! 元気でね。恵子、勉強、頑張るよ!」

「…………恵子……………恵子………お父ちゃんを許してくれ。」


夫の最後の言葉「許してくれ。」は小さくて誰の耳にも届かなかった。

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