決心
妻は決心せざるを得なかった。
夫と再び夫婦として暮らすこと――それしか選べなかった。
不安は大きい。
また、夫が他の女性に心を寄せたら、また退職して内職すら続けられずに京都へ行く。
それは大きな大きな賭けとも言える。
また娘と二人になったら、その時、知らぬ土地の京都で誰が助けてくれると言うのだろうか。
妻は「私に親が居れば……少しは安心出来たのかな……。」と呟いた。
不安しか無いまま、夫への愛情は以前とは違っている。
愛情は冷めきってはいない。
妻は「また、捨てられたら……。」と呟いた。
捨てられるのが怖いのだ。
だから、踏み出せない。
「でも……もう京都へ行くしかないのかもしれない。」と三度呟いた妻。
上司夫婦が再度聞いた。
「どうだろうか……彼も反省していることだし……。
恵子ちゃんにとって、お父ちゃんと暮らす日々が要ると思うんだ。
京都へ行くのは不安が大きいだろうが………決心してもいいんじゃないか?
彼も悔いていることだし、恵子ちゃんの進学に父親が居た方が経済的に……
安心だと思う。
どうだろうか……また3人で暮らすのは………。」
「…………私一人では……満足に暮らせませんよね。」
「……私達、無理に……って思っていないわ。」
「分かっています。あの人が居なくなってから、こんなにお世話になって……
私、もう前みたいにはなれないと思います。
夫婦には戻れないように思います。
また捨てられる。」
「もう! そんなことは無いよ。後悔していると言っていたからね。
もし、そんなことになったら……その時は連絡してくれないか?
出来得る限りの相談に乗ろう。」
「そうですよ。」
「ありがとうございます。
両親が居たら……戻る場所があるんですけど……なんで……。」
泣きながら妻は一言「京都へ行きます。」と言った。




