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ガンテツ 滅亡のパラドクス  作者: ちみあくた


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30/66

第二章 1

今回より第二章「昭和編」、開幕です。

また色々と仕掛けを盛り込んでみましたので、お楽しみください。



<ある男の供述 昭和39年12月聴取>


 アイツさ、最初見た時、思ったんでがす、俺と同じだなや~、って。


 いきなり空の、光る輪っかから出てきて、雲つくようなでっけぇ体で、青い目ぇ光らせながら、ポツンと霞ヶ丘競技場のど真ん中に立ってる。


ついさっきまで、七万人の大観衆がキラキラ目ぇ光らせながら、東京オリンピックの開会式を見つめてた日比谷のど真ん中で、な……

 

 何ンか、アイツ、途方に暮れてる気がしたっちゃ。

 

 俺、集団就職で宮城から上京した日、思い出しました。上野駅へ迎えに来た工場の人さ見つけるまで、もう心細くて、心細くて……

 

 故郷から遠く離れたら、誰だってそうなるモンじゃないすけ?

 

 俺、競技場の観覧席にいたんです。

 

 社長の徳田寛一さんや奥様の香代さん、一人娘の光代さん、それに工場の職員も一緒に来でた。

 

 奥様が町内会の福引に当って、足りねぇ分、社長が買い足してくれてな。

 

 折角の東京オリンピックの開会式だども、凄ぇ騒ぎでなや、後を続ける所じゃねぇ。

 

 あの巨人……大鋼人って、言うんすか? 何ンもすでねぇのに、誰も彼も、泡ぁ喰って逃げようとすでた。

 

 そこへ行くとウチの社長は大したモンだ。ちっども慌てね。アイツの事、目ぇひん剥いて観察しでがした。

 

 社長、戦時中は陸軍の技術者で「汎用人型戦車」って新兵器を研究しでたそうだから、その分、面白がったんでねか?

 

 それはもう熱心に、逃げる所か、近づこうとなさる。

 

 奥様は気が気で無ぇ。で、俺、社長の代りに側さ寄り、写真撮るって言ったんだなや。光代さん、ハイカラなカメラ持っでおられて、俺、無理矢理借りた。

 

 アイツの方へ走り出した時、後ろから光代さんのおっがねぇ声聞こえたから、さぞ怒ってたんだべ。

 

 

 

 

 

 観覧席から競技場へ降りようとしだら、他の人からも声掛けられた。背が高くて、舶来の服さ着込んだ、アメリカ映画の主役みてぇに恰好良い人だ。


 その人も逃げようとしねぇで、珍しそうに見物してる。その癖、俺には危ないから、とっとと逃げろって言う。

 

 俺、ノッパリじゃ誰にも負げねもん。写真撮るって社長に約束したすけ、何が何でも撮らんといかん!

 

 そのバタ臭い人さ振り切って、グラウンドへ飛び降りたら、アイツ、妙な事始めてた。

 

 自分が出て来た輪っかへ両手掲げて、力込めてる感じで……

 

 もしかして、閉じようとしてんのか?

 

 そう思ってカメラ構えた時、又、何か輪から飛び出して来たんだなし。

 

 一見、虫みてぇだった。ほら、三年前、でっけぇ芋虫が蛾になる怪獣映画が流行ったじゃないすけ? あれ、思い出したっちゃ。 

 

 顔はトカゲっぽいけんじょ、蜘蛛みてぇに八本足で、内、二本が鎌の形してる。

 

 今、新聞で何て言われてンでしたっけ?

 

 ああ、大鋼獣?

 

 そう、そいつに体当たりされて、巨人は俺の方さ、倒れてきた。ド~ンと地響きしたなや。俺、もう少しで潰されっトコだ。

 

 したら、アイツの……大鋼人の胸ン所さ開いて、女の人の綺麗な声、した。

 

 「乗れ」って、言うだ。

 

 敵の攻撃が来る前に、巨人の中へ入れって。鎌さ十字に構えた虫は、甲高い声で吠えてて、今にも飛び掛かって来そうでがした。

 

 そりゃオッカネェべ、やっぱ?

 

 慌てて巨人の中さ飛び込んだら、柔らけぇモンにぶつがった。

 

 飛行機の操縦席みてぇな所に、俺と同じ年恰好の女がいて、そこ、まともに突っ込んじまったんだなや。

 

 迷惑そうに俺、睨んで、その娘は巨人の扉さ閉めた。俺も負けねぇ位、迷惑な顔したども、中は狭くてなす。


 すぐ側に娘がいるのなんか初めてだもの。おまけに娘さ、体にぴったりくっついた黒い水着みたいな奴しか、来てねぇんだもの。


 良い匂いするわ、温かいわ、ポニョッと柔らかいわ、で……困った。

 

 

 

 

 

 それからすぐ力道山顔負けの怪物プロレスが始まったでがす。座席の前に外の景色を映す仕組みがあって、様子、わかりました。


 虫は、鎌を使う機会伺ってた。ブ~ンと唸る鎌から水みたいなのが滴って、食らったら危ねぇなぁと、俺みてぇな田舎者でも察しが付きます。

 

 で、睨み合いになった所に、ようやく自衛隊さ、駆け付けて来だ。

 

 指揮官の号令一下、鉄砲や、車の荷台に積んだ大砲をぶっ放すども、効かねぇ。何しろ中にいる俺が怖いと思わねぇんだもの、平気の平左だ。

 

 逆に娘の方が、巻き添えで自衛隊がやられる事、心配し始めました。で、俺に操縦席のマイク向けて、指揮官さ説得しろって言う。戦うな、逃げろって、な。

 

 まぁ、一応、話しかけてみたっちゃ。

 

 何と、その笠井って指揮官は俺と同じ宮城の生まれで、まだ随分若いんだけんじょ、話のわかる人でがした。

 

「後でキチンと説明すっから……いや、俺じゃなく、このデカブツ、動かしてる人にさせっから、離れてけさい」


 そう言うと、取り敢えず笠井さん、返事してくれた。


「……と言う事は、つまり、君が巨人を動かしてるんじゃないのか?」


「んだ。この娘……え~、あんたの名前さ、何?」


「……ナナ」


「はぁ?」


「私の事は、ナナと呼んで下さい」


「んでなす、ここにいるナナさんが、後でちゃんと話するんで……どうか早ぅ……」


 と、まぁ、こんな調子でうまくいきかけたんだけんじょ、交渉は途中で途切れたんでがす。


 虫の鎌が襲ってきた。

 

 凄ェ切れ味でなや、あんだけ自衛隊の攻撃喰らってビクともしなかった巨人が、青い血噴きました。


 俺、てっきり、アイツは機械仕掛けだと思ったども、そんだけでねぇ。


 半分生き物みてぇな作りで、おまけに虫はその血ぃ呑み、中の柔らけぇ部分、喰おうとした。鎌以外の六本足でしがみ付いて、傷口チュウチュウ吸っでる。

 

 そらもぉ、気味悪かったなや。

 

 けど、ナナって娘は顔色一つ変えねぇ。

 

 巨人にガンテツって呼びかけて、虫の首根っこ鷲掴みにさせた。

 

 んで、思いっきりぶん殴ったんだ。

 

 ドデカい巨人の拳は光の輪そっくりに輝いて、虫の頭なんざ一発で潰し、競技場の外まで吹っ飛ばした。

 

 

 

 

 

 話に聞く戦艦大和の大砲でも、あんな威力無いんじゃねぇべか?

 

 後で社長に聞いたども、大砲の弾はすっ飛んでくから、弾も砲身も壊れねぇんだと。だから大砲並みの力で殴ったりしたら、普通は肩や腕に反動が来てぶっ壊れちまうが、アイツはそうはなんねぇ。

 

 得体の知れねぇ力で反動さ、消してる。恐ろしく高い技術らしいけんじょ、俺は訳わかんね。

 

 

 

 

 

 何にせよ、虫はぶっ飛んだ。で、息の根は止まってなぐて、街を逃げ始めた。カサカサってな、足元の木や家を片っ端から蹴散らして……

 

「何してんだ!? 早く、あいつさ、やっつけねば!」


 俺、思わず怒鳴ってた。


 ナナは又、迷惑そうにこっち見て、光輪に拳さ、撃った。何かなぁ、応急処置って感じだったども、輪っかが閉じてく。

 

 次は虫の始末だ。ナナは大鋼人を空飛ぶ繭の中に収めて、上から追っかけた。


 まぁ、考えてみっと、俺はそん時、あの操縦席から降りられたんだなや。したら後の苦労もしないで済んだども、全然、思いつきもしねがった。

 

 デカい図体の割に、虫の動きは目にも止まらねぇ速さでした。幾つも町さ壊して、その内、海まで辿り着いて……


 ぶったまげた事に、虫は海へ飛び込んだ途端、魚の姿に変ったんです。泳ぎも早くなって、追っかける内、時間ばかり過ぎていぎました。


 で、気ぃ付くと、宮城の海の懐かしい光景さ見えた。関東から東北まで、海の上飛んで来ちまったんだって、わかった。


読んで頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
第2章開始! 待ってました! (*^^)v
ちみあくた先生へ。 いよいよ、第2章の、スタートですね。 これからが、勝負です。
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