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防衛学園の相棒契約《エンゲージメント》  作者: 夢達磨
第1章 謎の転入生と白き戦乙姫

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8/10

第7話 記憶を失った少女


 レイラとの戦闘から一夜明けた翌日。


 いつもと変わらぬ授業のはずだったが、教室の空気はどこか違っていた。

 昨日の激闘を目にした生徒たちの、歩夢を見る目が明らかに変わっていたのだ。

 昨日まで彼を笑い者にしていた者たちでさえ、今は恐れるように距離を取っている。


 地上の生徒たちが知る戦い方は、相棒同士で支え合う“相棒星繋式戦闘”のみ。

 一人ですべてをこなす歩夢は、彼らにとって“異端”そのものだった。


 そんな中、笑実だけはいつも通り明るく授業に参加していた。


「私たちはアセイラントとセイヴィアだけでなく、自分の得意・不得意で『星導士』と『星導術師』にも分かれます!」


「片橋さん、ありがとう。じゃあ星導士と星導術師の特徴を説明してくれるかな?」


「はいっ! 星導士は――」


 笑実は身振りを交えて、分かりやすく説明する。


 星導士は、星導力を武器や防具に宿して戦う近距離タイプ。

 星導術師は、星導力を具現化やエネルギー弾として使う遠距離タイプ。


 さらにロールとの組み合わせも説明した。


 武器や防具に星導力を宿し、戦うのが得意な人は――『星導士のアセイラント』。

 宿せるけれど戦いは苦手な人は――『星導士のセイヴィア』。

 星導力を具現化して戦うのが得意な人は――『星導術師のアセイラント』。

 具現化は得意だが戦うのは苦手な人は――『星導術師のセイヴィア』。


「アセイラントとセイヴィアは“ロール”、星導士と星導術師は“クラス”って呼びます!」


「完璧な解答だよ。ありがとう」


 ムヘッド先生に褒められ、笑実は嬉しそうに「えへへっ!」と笑った。


 キンコーンカンコーン。

 授業の終わりを告げるチャイムと同時に、校内放送が流れる。


『透導歩夢さん。透導歩夢さん。放課後、学園長室に必ず来てください。繰り返します――』


 歩夢を呼び出す内容だった。


「透導君、ホームルームが終わったら学園長室に行ってね。では明日の連絡を――」


 ホームルームが終わり、歩夢は荷物をまとめ始める。


「透導君、何したの?」


 笑実が心配そうに声を掛けた。


「多分、昨日のことだな。放課後来いって言われてたが……忘れてた」


「アハハ、透導君らしいね。道、覚えてる?」


「いや、一階にあることしか知らん」


「そ、そうなんだ……」


 笑実はクリアへ視線を向ける。


「クリアちゃんも学園長室に行くんだよね? 透導君を連れてってあげてよ。ホントは私が案内したいんだけど、今日は切覇ちゃんと特訓があって……」


「はい。大丈夫です」


「ありがとう! 透導君、クリアちゃんに案内してもらってね」


「ああ、頼む」


「了解です」


 歩夢とクリアは並んで廊下を歩いた。

 だが、会話はなかった。


 クリアは「コンコン」とドアをノックし、静かに扉を開ける。


「クリアです。失礼します」


 部屋の中には、学園長とレイラが待っていた。


「クリアさん、いらっしゃい……あっ、透導君! なぜ昨日来なかったんだい!?」


「すみません。忘れてました」


「忘れてました、じゃないよ。昨日はどう過ごしたんだい?」


 歩夢は昨日の流れ――戦闘後に山で修行し、川で水浴びし、また修行して寝た――を淡々と説明した。


「……まるで野生の猿ね」


 レイラが冷たく吐き捨てる。


「そうか。まあそんな猿にお前は負けたんだがな」


「なっ……!? わ、私はスターダストランサーズの活動で四日間も動いていたのよ! 万全ならあなたみたいな猿に負けるはずないわっ!」


「なら、日にちを改めればよかっただけだろ」


「なによっ!!」


 二人の言い合いが激しくなるのを、学園長が手を叩いて制した。


「はい、落ち着いてください。透導君には寮を用意しました。今日からそこで寝泊まりしてください」


「りょう?」


「……自分の部屋という意味ですよ」


 学園長は肩を落とす。


「ありがとうございます」


「さて、レイラさん。スターダストランサーズの活動で透導君の力を借りるのはどうです? 人手不足でしょうし、戦力としては申し分ないと思いますが?」


 レイラは机を“バンッ”と叩いた。


「学園長! こんな野蛮な男の力なんて必要ありませんわ! 元々男子禁制のところを、学園長のお願いだからと“譲歩”しているんですのよ!? 相棒が男なら一部の入隊を認めてはいますけれど、わ・た・く・しは! 男なんて――い・り・ま・せ・んっ!」


「そ、そうですか……無理を言ってすみません。ただ、私は心配でしてね。戦いで亡くなる方も見てきましたから」


「ご心配なく。この命に代えても皆を守りますわ。それに“有害指定銀河組織”の『宇宙エネルギー技巧軍』と『闇銀商会』は壊滅させましたし、他も今は沈黙していますわ。気は抜きませんけれど」


「頼もしいですね。でも油断は禁物ですよ」


「ええ、承知していますわ。では失礼します」


 レイラは歩夢を睨みつけ、部屋を後にした。


「長く待たせてしまってすみません」


「いえ、大変ですね」とクリアは答えた。


「クリアさん、昨日の戦闘で何か思い出したことは?」


 クリアは静かに首を横に振った。


「そうですか。では今日は検査をやめておきましょう。気をつけて帰ってください」


「ありがとうございました」


 クリアは退出し、歩夢も続こうとしたが――。


「透導君、君はまだだよ」


「そうですか」


 クリアが廊下に出ると、レイラが待っており、二人は一緒に帰っていった。


 学園長は大きく息をついてから、歩夢へと向き直る。


「学園には慣れましたか?」


「二日で慣れるわけがない」


「そ、そうですね……」


「レイラさんと戦ってどう感じました?」


「大したことなかった。正直ガッカリした。地上のレベルは低い」


「今年は豊作なんですがね……」


「俺も言いたいことがある」


「なんでしょう?」


「俺は、この学園を辞める」


「!? いやいやいやっ、ちょっと待ってください!! なぜ急に!」


「地上の戦いがどんなものか期待していたが……昨日で分かった。星廻軍人式戦闘の方が圧倒的に優れている」


「レイラさんは三位ですよ!? 他に二組、もっと強い生徒がいます! 彼らと戦ってから判断しても遅くないでしょう!」


「三位であの程度なら、たかが知れてる」


 学園長は額に汗を浮かべながら、必死に説得する。


「わ、分かりました! こうしましょう! 透導君は黒い龍を探していましたね? こちらでも情報を調べよう。銀河組織との貿易で情報網がある。もしかしたら何か掴めるかもしれない」


「本当か?」


「もちろん。約束しよう。その代わり、君は学園に通い続け、スターロードフェスティバルで優勝を目指す。悪い条件じゃないと思うが?」


「……まあ、それなら」


 学園長はほっと息をつき、咳払いした。


「それと、クリアさんについてです。ご存じの通り、記憶を失っています。今の名前もレイラさんがつけたものです」


「なるほど」


「あの子は誰とも相棒になろうとしません。理由は分かりませんが、有害指定銀河組織に狙われているのです。透導君、君も相棒がいないのでしょう? クリアさんと相棒になって、守ってあげてほしいのです」


「構わないが……約束してほしい。情報が入ったらすぐに知らせると」


「もちろん。あなたがここの生徒である限り、私は約束を守ります」


「分かった」


「それとレイラさんには、戦闘館を無断使用した罰として……君のお世話係を任せました。何かあれば彼女を頼ってください」


 歩夢は小さく頷いた。


「では寮へ案内します。ついてきてください」


「はい」


 こうして歩夢は、生まれて初めて自分だけの部屋を手に入れることになった。

先に8話を出しておりました…正しい7話に更新しました_:(´ཀ`」 ∠):

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