2−23:探索者が遺す最後の生の証
ダンさんのお店でスピードリングⅠとマジックリングⅠを入手した僕たちは、その足で探索者ギルド・アルカディア王国本部までやってきた。その目的は、もちろん……。
「……ふむ、そうか。亡くなった探索者の探索者証を持ち帰ってくれたのか。探索者ギルドの長として感謝しよう、エリオスよ」
「いえ、探索者として当然のことをしたまでです」
「……ここまでちゃんとした探索者って、そうそう居ないっすけどね」
「まあ、僕も軍事系貴族家の端くれだからね。家名に泥を塗るような真似はできないよ」
ギルド本部のカウンターに、ダンジョンで拾得した探索者証4枚を納める。第7階層のボス部屋で敗死した、4人の探索者たち……その生きていた最後の証を、ギルドに届けるためにやってきたわけだ。
この日はオズバルド本部長が下におられたので、一緒に立ち会ってもらうことにした……休養日なので対応できる職員数が少なく、それで仕方なくオズバルド本部長が出張っているだけらしいけど。そこで他人ではなく自分が出てくる辺り、オズバルド本部長は性根の優しい人なのかもしれないね。
「一応確認するが、探索者証を拾った時の状況を教えてくれるか?」
「分かりました、オズバルド本部長。この探索者証を遺した4名は第7階層のボス部屋で、スモールボア3体に敗北してしまったようです。扉越しでは何もできず、ただ倒れゆく探索者たちの断末魔を聞くことしかできませんでした。
その後、僕たちがボス挑戦のため中に入った際、探索者証を拾得しています。探索者証以外の遺品はありませんでした」
「なるほど、了解した」
亡くなった人たちの探索者証を、オズバルド本部長がマジックツールらしき台へ綺麗に4枚並べて置く。そのまま台の横にあるスイッチを押すと、探索者証が一瞬だけ白く光った。
【魔眼】で見た感じでは、探索者証から台のマジックツールに向けて魔力が吸い込まれていったのが見て取れた。おそらく、何かしらの情報を読み取ったみたいなんだけど……残念ながら、早すぎて詳細は全く分からなかった。
「……ふむ、エリオスが言った通りか。まあ、エリオスが嘘をつくとは思っとらんから単なる確認でしかないのだがな」
「なるほど、探索者証にはそのような機能があったのですね」
「……たまに虚偽の申告をする者が居るのでな。詳細は明かせないが、探索者証にはそういう機能を持たせているのだ。あまり口外はしてくれるなよ?」
「しませんよ、そんなこと。僕にメリットが何もありませんから」
オズバルド本部長が、小声で僕に釘を刺してくる。
一口に探索者と言っても、そこには色んな人が居る。まっとうな方法でダンジョン探索を行い、己の力を高めたり正統な手段で稼ぐ人がいれば……中には他の探索者を殺し、成果を奪う輩も居るかもしれない。そういう腐った奴らをあぶり出すために、探索者証に記録機能を付けているのだろう。
あまりその情報が広まっていないのは、この機能を使って炙り出された輩はその場で即処分されているからだと思う。一方で本当の善意で探索者証を届けるような人にとっては、そもそも記録機能があろうが無かろうが全く関係ないからね。ただ粛々と事実を説明し、ギルドに探索者証を届けるだけなのだから……。
「……ところで、亡くなった探索者はどのような方々だったのでしょうか?」
「カール、エルムント、ハイン、エリゼ……4人は、地方の村からここアルカディアスに最近出てきたようです。主に第5階層までを探索しており、幼馴染4人で力を合わせて頑張っていたようですが……」
「ホブゴブリンやスモールボア2体は倒せても、スモールボア3体は厳しかったというわけだ。確実に倒せる自信がなければ、逃走不可のボス部屋には挑まぬ方が良いのだが……少しばかり、背伸びし過ぎてしまったのだろう。その代償を命でもって支払うこととなってしまったのは、ワシとしては大変残念でならないがな」
受付嬢さんに続いて、オズバルド本部長が答えてくれた。
田舎の村から都会に出て、一旗揚げるために探索者として頑張る……こう言ってはなんだけど、よくある話だ。その中で、一流の探索者となって名を上げる人たちが居れば……誰の口からも語られることなく、屍となってひっそりとダンジョンに消えていく人たちも居る。ただ、それだけの話だ。
前者の代表がオズバルド本部長であり、残念ながら4人は後者の括りに入ってしまった、と。そういうわけだ。
「ダンジョンではよくあることだ。エリオス、あまり気にしてはいかんぞ」
「はい、十分に理解しています」
これから戦場に立つかもしれない身で、人の生き死にに執着し過ぎてはいけない。悼む気持ちは確かに大事だけど、やり過ぎれば心を病んでしまう。
……そうして自分が行動を止めている内に、また多くの人が悲劇に見舞われてしまうかもしれない。仮にも軍事系貴族家の一員として、誰かの大切な人を守るために立ち止まってはいられないのだ。
「ふむ、エリオスには愚問だったかな? さすが、10歳とは思えぬ胆力と精神力だ」
「ええ、まあ……」
そこは、前世の僕からの人生経験の蓄積もあるからね。僕としてはまだ10年しか生きていないけど、前世も含めれば優に80年は生きていることになる。ある程度、生きるということの厳しさは分かっているつもりだ。
「……これなら、特例申請も通るかもしれんな」
「……? どうしましたか、オズバルド本部長?」
「いや、何でもない。今後ともエリオスには、まっすぐ探索者として精進することを本部長として期待している」
「はい、オズバルド本部長のご期待に沿えるよう頑張ります」
「……というわけで、これは少ないながらも謝礼だ。遠慮せず受け取って欲しい」
「ありがとうございます」
探索者証を届けた謝礼として、オズバルド本部長から1万ペルナを受け取る。
……亡くなった探索者が遺す、最後の生の証を届ける。その謝礼金は特に額が決まっているわけではないし、必ず出るものでもないけれど……お金には代えられない何かがあるような、そんな気がする。今後も、そういう物は可能な限り持って帰ることにしようかな。
◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇
なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。
皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。
☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。




