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二つの世界

 そびえ立つ巨大な石製の椅子が目立つ場所。周囲には先が見えない闇と、灰色のタイルだけがある。そんな場所で今日も腕立て伏せや腹筋、背筋など、体のみでできる筋トレをしている。僕にとって筋肉の痛みだけが時間がわからないこの場所での時計になっていた。

「はぁ、はぁ」

 限界を感じ地面に寝転がる。この疲れは肉体的ではなく精神的なものだった。筋トレも何度もやっているのでそろそろ飽きてきた。リベアに負担をかけたくなかったのでこれ以上頼みごとをしたくなかった。しかし、あまりにも辛くなってきたので考えておいた方がいいかもしれない。

 リベアは今、何をやっているだろうか。ふと気になったので会いに行ってみる。リベアはいつも椅子の後ろにある研究所にいる。人間の行動や思考を研究しながら僕を転生させる世界を作っている。最近は大きな失敗も少なく、人の気持ちを優先して世界を作ってくれるので良い世界が多い。だけど、僕が優柔不断なせいでどの世界に転生するか決められないでいた。そんな僕を責めないで世界を作り続けているリベアには感謝しかない。

「こんにちは、リベアさん。今日は何をしているんですか」

「今は世界の元を作っている所ですね。優也こそどうしたんですか。まだ世界はできてないですよ」

 手に持ったフラスコを見せながら不思議そうしている。

「特に意味は無いんですけど、なんとなくリベアさんが何をしてるか気になって。お邪魔になりそうなら帰ります」

「いえ、このまま見ていってください。見てて面白い所はないと思いますが頑張ります」

 そう言われたからには見ていくしかない。せっかくならリベアの手伝いをできないか聞いてみよう。

「見ていくだけではもったいないので手伝えることがあったら僕も一緒にやって良いですか」

「そうですね、そろそろ勉強したことを実践しても良いかもしれませんね。今から女神の体験学習をしましょう」

 長机の上にフラスコが並べられていた。しかし、机の上だけでなく魔法で上空に浮かばせたフラスコがあって、リベアが話している間もいくつも混ぜ合わせていた。

「……ここは手伝えそうにないですね」

 圧倒されて心の声が漏れてしまった。前の事件もあったから世界の要素自体が少し怖い。それにリベアが魔法で大量に混ぜ合わせているのだから僕なんかに手伝える所はないだろう。

「そうですね、ごめんなさい。世界を優也に触らせるのは危ないので、次の工程に行きましょうか」

 仕方がないと諦めながら、リベアに先導されて次の場所に移動し始める。前に聞いた時は世界を発展させるために別の場所で育てていると言っていた。増やしている場所には行ってない。新しいものが見られると思うと心が踊る。歩いて少し経つと下へ続く階段があった。下を覗くと端が見えないほど大きな湖があった。湖はフラスコの中の世界と同じようにカラフルに光っていた。

「ここが育成所です。あの中に何万個もの世界が入っていて、文明が出来上がる時を待っているのです」

 世界が何万個もある。これまで見た世界でさえ数個だったのに。数の膨大さにクラっとした。

「さらにこの施設が何個もあるって言おうとしたんですけど、優也がダメそうなのでやめておきますね」

 隠す気だったのに言ってしまっている。心の中で思っただけで口にしなかった。正直、真実を知っても現実味がなさすぎて理解できていなかった。リベアは僕の反応を見てハッとして自分が行った事を思い出したようだ。顔が少しずつ赤みを帯びてくる。

「まっ、まあその話は一旦置いておいて、今回はこの中に入ってもらいます。怖いかもしれませんが一緒に行きますよ」

 背中を押されて湖の淵まで追いやられる。

「リベアさん。ちょっと待ってください。心の準備が……」

 振り返ろうとしたら体を強く押された。耐えられる訳もなく体は宙に浮く。リベアの顔は赤くなったまま、失敗した時の顔へと変わっていく最中だった。

 普段とは違う光景が広がっていた。辺りは暗いが点々と光る明かりが幻想的な雰囲気を作る。目の前にある二つの大きな球体と燃え盛る球体はテレビで何度か見たものだった。どうやら宇宙にいるみたいだ。いつもと違うと思い、視点を下げてみると自分の体があることに気がついた。体の重さを感じず、空をふわふわと浮いている感覚に体が慣れない。改めて、星に目をやると地球とは違うところが多々あった。片方の星は全てが青く、海しかない星だった。もう片方の星は赤いマグマをところどころに噴出させる赤と黒の星だった。さらに、両星の間をつなぐように青い柱が立っている。

「今回はどうですか、まだ生物も大陸も何もないですけれど」

 いつの間にか、リベアが純白の羽を広げて隣にいる。先ほどの事を無かったように平然と話しかけてきた。

「いきなり宇宙で驚きましたけど、これはこれでいいですね。目の前の星がリベアさんが育成をしている二つの星ですか」

「はい、今から最後の作業をします。本来、外からでも行えるのですが、せっかくなので優也にも少し手伝ってもらいます」

「本当ですか。是非やらせてください」

 ついにリベアから頼られた。嬉しさのあまりリベアに近付こうと体を動かす。宇宙空間であることを忘れていて回転してしまったが。

「ふふっ、お願いしますね。でも、まずはこの星について知ってもらいますね」

 体の回転を止めてくれる。感謝の言葉を告げると星の解説を始めた。

「一目で気がつく特徴は海の水が両方の星に移動しているところですね。自転と公転の関係上、半周ごとに星の中心、つまり赤道から海が移動するようになった世界です」

「なるほど、あんまり天体に詳しくないんですが星同士がぶつかることは無いんですか」

「大丈夫ですよ。魔法で距離を固定していますし、危なくなったら魔法で離せばいいですから」

 魔法は便利だ。使ってみたい。でも、今は置いておいて思考を星の話に戻す。

「そういえば、なんで星を二つにする必要があったのですか」

「二つあります。一つは生命の進化速度が速くなるからです。私が研究していた時に生物の進化には温度が関連しているようでした。これ以上は難しくなるのでやめておきますが、優也ならすぐに結果を見たいのではないかなと思ったからですね」

 その通りだった。表情に出ていたのかリベアも微笑む。

「もう一つは興味です。星二つを近づけてみたらどうなるんだろう。それだけでした。でも、想像よりはるかに良いものになりました。優也はどう思いましたか」

「一目見た時に幻想的だなって思いました。僕はとても好きです」

 水が、海が、ずっと動き続ける。神秘的で幻想的な世界にいつも以上に惹かれていた。

「それは良かったです。でも、今回は見るだけじゃないですよ。しっかりと女神体験していってくださいね」

 これからの行動は勉強の時に聞いたから知っている。星に生を落としていく。きっかけを作ったら、後は星が勝手に育ててくれる。そう話していた。リベアが何かを取り出した。虹色の水が入った小瓶を受け取る。実物を見るのは初めてだが、生命の元なのだろう。

「では、少し体に触りますよ」

 腰に手を回される。突然の事で心臓が激しく動く。

「ちょっと、急にどうしたんですか」

「優也一人では動けないでしょう。だから、私の翼で一緒に行くんですよ」

 間違ってはいない。だけど、心の準備がまだ済んでいない。

「じゃあ行きますよー」

 制止をかける前に動く視界。体全身が強く押しつぶされるような感覚。中のものが全て出てくる。また痛みの中で意識を無くした。

 目が覚めた時は暗雲が空を覆う荒れた海の上だった。

「優也! ごめんなさい、人間には耐えられないですよね。すぐに治したので大丈夫だとは思うのですが、異常はありませんか」

「はい……おそらく」

 リベアに持ち上げられた状態で体を触る。もう体に痛みはなかったが、もう二度と体験したくないものだ。

「よかったぁ、次は丁寧に下ろすので安心してください」

「そうしてくれるとありがたいです」

 手に持ったままの小瓶を確認する。中は七色に発光して神秘性を感じる。瓶の蓋を開けて海へ流していく。虹色の水はすぐに広がり見えなくなった。本当にこんな簡単な事だけで生命が生まれるのだろうか。

「これでオッケーです。もう一つの星には優也が気絶している間に撒いておいたので、後は時間を置いてまた来ましょう」

「あっ、そうですか……」

 またリベアに負担をかけてしまった。自分を責めていたらいつの間にかリベアが湖の上に出してくれた。

「世界が出来上がるまでどれくらいかかりますか」

「あんまり時間はかからないのでここで待ちましょう。お茶とお菓子を出しますね」

 どこからか椅子と机、三段に別れて置かれたお菓子と紅茶が目の前に並んだ。椅子に座り、他愛のない話をしていたら時間が経つのを忘れていた。


 

「もう結構時間が経ちましたね。そろそろ見に行きますか」

 リベアの一言が時間の経過を教えてくれる。体感ではまだ一時間も経っていなかったのに。

「あっ、もうそんなに経ちましたか。行きましょう」

 椅子から立ち上がり振り向く。先ほど湖に入った場所に一着の薄い茶色のコートが掛けられていることに気づく。

「この服を着てください。様々な加護を入れておいたので痛みはほとんど感じなくなりますよ」

 言われるがままにコートを着る。大きさはぴったりでとてもおしゃれだ。

「よく似合ってますよ。では、今度こそ一緒に飛び込みましょうか」

 二度目は問題なく飛び降りる。すぐに景色は宇宙の暗さに変わり、遠くで恒星が光る。前方にあった二つの星は地面の茶色と緑が増えて、夜になった所でも光を発していた。文明はかなり進んでいるようだ。しかし、どちらの星も赤道から北半球と南半球を分断するように大きく削れていた。

「見た目は少し悪いですがいい感じに育ってますね。このまま星に降りてみましょうか」

 リベアはまた腰に手を回し僕を掴む。いくらコートを着たとは言え怖いものは怖い。

「信用しているのですが一応、徐々にスピードを上げてもらえますか」

 リベアは頷き、ゆっくりと星に迫る。体に異常は起きない。僕の様子を伺っていたリベアはさらに加速する。車窓を眺めた時のように風景は流れるように去っていく。そんな中でも体は扇風機の風程度にしか風圧を感じない。

「すごいですね、このコート。信用しなくてごめんなさい」

「いいんですよ、私の事ですから仕方ないです。それよりも、ほら、見えてきましたよ」

 雲を数回抜けるとショッピングモールもすっぽり入ってしまうほど大きな穴がどこまでも続いていた。地平線の先から反対側の地平線まで続く穴は水の移動により掘られたものだと気がついた。今も水の柱がこちらに近づき、轟音と共に反対側の星へと水が移動していたからだ。穴の底に水があるにしても地上からでは暗く、何も見えない。穴の周辺に目をやると人工物の跡が残っていた。見える範囲に等間隔に並んだ機械のような物体がある。

「優也はあれが気になるんですか。だったら一度降りましょうか」

 リベアにも伝わっていたようで一番近くの灰色の物体に降りていく。それは石製の椅子と大体同じ大きさの球体だった。しかし、球体の上部が内側から爆発したように壊れていた。地面に降りて近づいてもやはり大きく、この世界の住民は巨人なんじゃないだろうか。

「これは魔法が使われていますね。金属の強度を上げたみたいです。それでも壊れてしまい放置されたといったところでしょうか。よかったですね優也、魔法があるみたいですよ」

 リベアは冷静に解説してくれた。魔法があるのは喜ばしいが何かがおかしい気がする。なぜこんなものが必要になったのだろうか。考えていたら地面が小さく揺れ始めた。どうやら水の柱が近づいてきたようだ。リベアの方を向くと何か言葉を発していたようだが音が激しく聞き取れない。ジェスチャーを始めてようやく空に飛ぶと理解できた。すでに揺れは激しいものとなっており、立って歩くのがやっとだったが、リベアの手に捕まり無事に飛んだ。

「どうにかなりましたね。まさかここまで強い力を持っているとは思いませんでしたね」

 なんでこの状態で声が聞こえるんだろう。今でも水の音がうるさいのに

「いつもと同じようにですよ。優也が覗いている時に声が聞こえるでしょう」

 えっ、これ聞こえてるんですか。恥ずかしいですよ。さっきは口で話していたじゃないですか。わざわざジェスチャーまでやって。

「私と優也が触れている間だけ話すことができるんです。不便な機能でしょ」

 そんなに不便だとは思いませんね。今もそのおかげで話せているんですから。僕の本音もそうやって見ていたって言うのは少し嫌ですが。

「まあ、それは一旦置いといてください。この後はどうしますか。反対の星も見に行きますか」

 たぶん反対の星も変わらないと思うんです。なので、この穴の底が見たいです。

「私も行きたいと思ってました。せっかくだからどうやって水が移動するか見に行きますか。ちょっと危ないですが水に沿って穴を降りて行きますか」

 そうですね、お願いします。意思は伝わり、リベアは穴の底を目指して下降を始めた。下れば下るほど水の柱の勢いは上がり、地上や宇宙で見た大きさでさえ一部だったことを知る。最初は陽の光もあったが次第に辺りが暗くなる。リベアは灯りを作ると僕に渡した。周囲を確認すると壁を塗装するように透明な氷が一面を覆っていた。一瞬、目を奪われたが冷静になると、すでに気温が零度を下回っている事に気がつく。寒さを感じなかったので全くわからなかった。よく見ると前方を移動する柱から離れた水が飛び散り、固まり、落ちるを繰り返していた。

「私と優也のコートの周囲は快適な温度になるようにしているので凍ったりしませんよ」

 質問に先に回答するのやめてくださいよ。恥ずかしいじゃないですか。リベアの顔は見えないがきっと笑っているんだろう。

「ふふっ、今だけですよ。それにしても、もう一万メートルですか。地球最大の海溝を抜いてしまいそうですよ」

 もうそんなに行ったんですか。どこまで続いているんですかね。

「ここまで深いと少し問題ですね」

 何か良くないことでもあるんですか。

「難しい事は言いませんが、星には動きがあるんです。動く力をこの穴が弱めているので、長期的に見ると動きが止まってしまうのです。止まってしまったら星が死んでしまいます」

 大体は理解できました。星が死ぬのはいつぐらいでしょうか。

「そうですね……一千万年から二千万年ぐらいでしょうか。転生するとしても優也には関係はないので安心してください」

 ずっと先の話だった。安堵していたら前方の柱に変化があると同時に周囲の様子も急に変わる。長い間続いていた暗闇から白い煙が現れ、下から橙色の光が見えたのだ。さらに降りると地面は最初に星を見たときのような赤いマグマと固まった黒の二色となっていた。不思議な状態に思わず感嘆の声を上げてしまった。

「予想以上に掘られていますね。根底から考え直す必要が出てきました。少しここで止まりますね」

 僕の反応とは逆にリベアは事態を深刻に捉えているようだ。リベアが考えている間、周囲をさらに確認する。マグマの温度の影響は壁にも及んでいて、壁一面を覆っていた氷は無くなっており液体が壁を伝って流れていた。水が下に行くと水蒸気になって白い煙となる。そうして柱に近づいた煙が吸い込まれるように移動して、液体となって反対側の星への移動を始めていたのだった。こんな化学的に水の柱ができているとは思わなかった。全てに魔法や女神の力を使って無理やり水の柱を作っていると思い込んでいたから意外だった。

「お待たせしました。ここはもう良いです。次は都市に行きましょう」

 リベアが少し焦ったように言って、理由を聞く前に上昇を始めた。何か考えがあるんだろうと止めずに待っていると3分ほどで地上まで戻ってきた。降りた時よりも早い。そのまま都市に移動する。遠くから見てもビルやマンションのような高い構造物が見える。中でも最も高い建造物は雲を突き破る高さで、壁面全てに同じ画面を映し出していた。画面の右上に『緊急生放送!政府の会見で語られる真実とは!』と書かれていて、建物の周りに、道を埋め尽くして人だかりができていた。空中で止まったリベアに聞いてみる。

「そろそろ教えてくれても良いんじゃないですか。急いでいたのは何故ですか」

「じきに分かりますよ。説明はその後でも良いでしょう」

 映像に動きがあった。おそらくこの星で一番偉い人が頭を下げる。会見が始まった。

「結論から先にお話ししますと、私たちは向かいの星アザーと戦争をする事となりました」

 それからは戦争をする理由、相手の星との交渉中の映像、これまで行ってきた対策とその結果などの映像が流れた。要約すると片方の星がなくならない限り水の移動は止められない。しかし、このまま水を移動させ続けるといずれは星の核まで穴が開いてしまい星の力が失われる。どちらかの星に住民を移住させようにも人が多すぎて土地も資源もない。交渉は二十年も続き、両政府共に星を捨てたくない考えから戦争に発展してしまった。説明の中で穴付近で見た物体についても語っていた。水を入れておくタンクだったようで強化を施し、水の移動を防ぐ物のようだった。しかし、両星で協力開発しても抑えることはできず、解体にも時間がかかるため、穴の周辺にそのまま残骸を残したとの事だった。政府からの発表を聞いていた人々は賛同する人、反対する人、諦める人など反応も様々だった。僕はこの星に住む人ではないから完全な共感はできないが、自分の住んでいる星がなくなるのはとても辛い事だ。どうにか助けられないか。

「今回ばかりは私でも手に負えませんね。仮に今助けたとしても、百年以内に同じような戦争で滅ぶ所まで計算しました」

 僕の思考を見ていたのか答えはすぐに帰ってきた。

「もしかして穴が原因ですか。今から穴を塞いだり星同士を離すとかできないんですか」

「完成した世界を変えるのはできないんです。私たちはこの世界を見にきただけなんで滅んでしまっても仕方がないですよ。責任があるとしたらこんな世界を作ってしまった私に問題があるんですから」

 そんな事はないはずだ。滅んで良い世界なんてない。何か方法がないか。リベアがこれまでにできたことで応用ができそうな物はあっただろうか。……思い出した。以前、リベアはお菓子の世界を小さくしたことがあった。その時の動作で小さくするのは世界を変えているのではないだろうか。

「あの時は世界の時間を戻して、人類が生まれる前の状態にしました。人類に私の存在がバレると良くないんで……」

 言い終わる前にハッとする。どうやら伝わったようだ。

「だったらこの世界も一度戻してしまってその後で手を加える事はできますよね」

「できます! できますよ! すぐに戻ってやりましょう」

 すぐに飛び立ったりベアは僕を連れて宇宙へと飛び出した。その間、両星の間にはミサイルが大量に反対の星に向かって飛んでいた。最後に見えた光景は二つの星に花火が上がっている所だった。そんな結果は認めない。湖に出た後のリベアの行動は早かった。僕を降ろし、手で円を描く。腕をあげると同時に湖の一部分が球体となって浮かび上がる。手で押しつぶすようにすると水球が圧縮されて、最終的にたった一滴の水になった。丁寧に湖の中に戻すと、

「優也、もう一度行きますよ」

 湖の中に飛び込んだ。後に続くように僕も飛び込むと、二つの星は最初に見た水だけの星とマグマに覆われた星に戻っていた。

「このままだと前と変わりませんよ。どうするんですか」

「色々方法はあるんですが、今回はただ離すだけにしましょうか」

 リベアが腕を動かすと、水の星がゆっくりと動いていく。片手で僕の服を掴み羽を羽ばたかせて星の移動と共に動く。周囲に何もない場所まで移動するとリベアはフラスコを取り出し赤い球を取り出した。リベアの手を離れると球は大きくなっていき、水の星よりも大きな恒星になった。恒星を中心にして水の星が周囲を回るように新たな惑星系を作った。

「これで戦争が起こることはないでしょう。文明が栄えるまで時間はかかるので今回の女神体験はここまでですね。お疲れ様でした」

 星を離れて湖へ戻る。地面に着くと僕を離した。

「やはり楽をしようとするのはいけませんね。優也も良い世界だと言っていたのに。なくなってしまったのは私のせいです」

「謝らないでください。他にも良い世界は生まれますよ」

 最近の世界は本当に良い世界ばかりだ。きっともうすぐ転生する世界が生まれるだろう。

「待たせてばっかりでごめんなさい。今回も優也がいてくれて助かりました。いつも私にない発想ばかりくれて感謝してます。本当にありがとうございます」

 素直に褒められることに慣れていないから恥ずかしい。普通に褒められたのはいつぶりだろう。気持ちの良い幸福感が僕を包み込む。この時間がずっと続いてくれれば良いのに。そんな甘い考えは普通に話していたリベアが突然倒れることで簡単に潰えた。

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