表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

ゴミ箱の世界

「ありがとうございます。わがまま聞いてもらっちゃって」

「こんな物、わがままでもないですよ。一瞬で作れますもの。優也は遠慮しすぎているんじゃないですか。もっと遠慮せずに言ってください。他にも欲しいものはないんですか」

 リベアの研究所。リベアから僕のことを呼んだので何かあったのかと心配して、急いで向かったがリベアに異常はなくどうしても欲しい物を頼んで欲しいと言われた。何も頼まないのが心配だったらしい。ただでさえ世界を作ってもらっているのだからこれ以上求めるのは良くないと思って何も頼まなかった。それに特に欲しいものがなかった。でも、リベアは頼むまで帰さないと言うから仕方なくダンベルを頼んだのだが納得していない。たまたま思い浮かんだものがダンベルなのもどうかと思うが。

「本当に何もないんです。今はダンベルがもらえるだけで嬉しいんですから。また他のものが必要になったらその時にまた頼みます」

「そうですか……まだ次の世界ができるまで時間がかかりますから待っていてください」

 リベアは残念そうに仕事に戻っていった。僕も頼むものを考えておく必要があるか。生活空間である椅子の前に向かって歩きながら考えていた。

 ちょうど中間地点に差し掛かった辺りのことだ。前から白い羽を生やした女性が飛んできた。リベアが同じように飛んでいたので他の女神だろう。服装も同じように真っ白で艶のある布が羽ばたくごとに揺れ動いている。顔を見てみると心臓が激しく動き出した。

 リベアと双子と言われてもおかしくないほどそっくりだったからだ。違うところは色ぐらいだ。瞳の色は紅玉のように光り輝く。髪も肩にかからない程度に揃えられ、薔薇色に染まっていた。偽物の可能性を疑ったがあの時にはなかった一目惚れのような胸の高鳴りが本物と同じではないかと考えさせる。

 思考が飛んでしまったがきっとリベアの関係者だろう。目を合わせたのに挨拶をしないのはどうかと思ったので軽く会釈をした。しかし女神は何かが気に障ったらしく怒りを露わにしながら速度を上げて飛んでいってしまった。リベアのあんな顔は見たことがなかったので少し意外だ。でも、怒らせてしまったのは僕のせいだ。一体なぜ怒らせてしまったのだろう。人間の感性で行動したら神様を傷つけてしまうことがあるのだろうか。今度リベアに聞いてみないと。

 いつもよりも気分が下がった状態で椅子の前へと戻ってきた。もらったダンベルの動作を確認してみる。触れた状態で重さや大きさを思い浮かべるだけで自由に変更できる。長さや重さを変えて思い通りの筋トレを、とリベアは言っていた。ダンベルにその機能はもったいないとも思ったがリベアは簡単なものだからこそ凝った作りにしてみたとも言っていた。ありがたく使わせてもらおう。

 それから数分ほどダンベルを使って筋トレをしていた。やはり便利な代物でこれまでの筋トレよりも捗る。バーベルのように棒の部分を長くしたり、アリぐらいの大きさにして重さを増やすなど、いろんな使い方をして筋トレを楽しんでいた。

 そんな中、先ほどの女神が椅子の横から現れた。先ほどの鬼のように怒っている顔ではなく無表情で遠くから僕のことをじっと見つめている。その顔の方がむしろ怖いがもう怒らせたくはなかった。でも挨拶で怒らせてしまうなら一体何をすれば良いのだろうか。どの行動が怒らせてしまうのかわからなくなっていたのでただ筋トレを続けるしかなかった。

 女神を視界からできる限り離すように体を動かす。しかし、どんな風に体を動かしても視界の中に絶対に入るように移動してくる。何も話さずに見てくるので不気味に思う。でも何か気にいるところがあったのではないだろうか。変化をつけてどこまでついてくるのか知りたくなってしまった。

 急にランニングを始めたらどうなるのか。女神の反対側に向かって走った。しかし一瞬で前に着かれてこちらを見ている。速さを急に変えても邪魔にはならないように一定の距離を保っている。さらに腕立て伏せで顔を上げないようした。さすがに視界の中には入らなかったがとてつもない威圧感を前方から感じる。威圧感に負けて前を見るとほんの数センチ前に真顔のまま屈んで僕のことを見ていた。とっさに後ろに飛び退く。突然のことに心臓の鼓動がおさまらない。少し間違っていたら顔と顔がぶつかっていた。何がしたいのかわからない。さすがに怖くなってきたので話を聞いてみることにした。

「あの、なんで僕のことをずっと見てくるんですか」

 女神は呆れたように僕の全身を見てくる。顔が赤くなっていき怒り始めた。

「どうしたもこうしたもないわよ! あんたの行動に腹が立ったから見ていたの。文句ある! 」

 初めて聞いた声はリベアと同じようにも感じるが、声量と勢いの激しさが上品な印象をかき消す。

「確かに僕は人間なので神様から見たら気に触ることをしてしまったかもしれません。それについては謝ります。でも、言ってくれないと僕も直しようがありません。一体何が気に入らなかったんですか」

 そんなのもわからないのかと言わんばかりに長いため息を吐かれた。

「その態度が気に食わないの! なんで私を見て普通に過ごすことができるの! 人間は私の姿を見て何もできなくなるほど欲情するはずでしょ。しかも人間如きに気を使われるとか信じられない。理解ができないわ」

 捲し立てるように理不尽な怒りを押し付けられる。おそらくこの女神には何をしても怒るのだろう。普通ならもう関わらないようにするのが良いはずだ。でもなぜかリベアと同じ顔をした女神に怒っていて欲しくないと思ってしまった。

「怒らせてしまうのを覚悟して言います。どうしたらその怒りを鎮めることができますか。このまま怒ったまま別れてしまうのは両者にとって良いものではないですよね。後味が悪くなるのは僕も嫌ですから」

 突然のことに驚いたように見えた女神は少し考えて口を開いた。

「その思考は理解できないけど……そうね、心意気は気にいったわ。今開けた穴に飛び込みなさい。そしたら気分が良くなるかもね」

 女神は地面を指差す。僕の数センチ隣に穴が開いていた。穴は人が一人通る空間しかない。覗いても底は見えず、先がどうなっているかもわからない。少し足がすくんだ。でも、この女神のため勇気を振り絞って穴へと飛び込んだ。

 真っ直ぐに落ちていくものだと思っていたけれど滑らかに角度がついていき斜面となって滑り落ちていく。スピードはどんどん上がり、体がこすれて火傷したように痛い。足や手で止めようにも壁が滑らかで掴めないし、何より早すぎて簡単に止まりそうにない。先を見られないのが更なる恐怖心を駆り立てる。叫んでもどうしようもないのに助けてもらいたいと口と心が叫ぶ。簡単に入るんじゃなかったと後悔していたら突然、右にカーブを始めた。何周かバネのようにグルグルと滑り降りていくと光が見える。視界が広がり、空間に滑り込んだ。スピードもゆっくりと落ちて止まった。すれた肌はやはり赤くなっており血も少し出ている。

 体を起こしてまず目に入ったのは橙色の玉だ。熱くも冷たくもない、暖かな光を放つ玉が十個浮かび、空間全体を照らしている。ドーム状に覆われた空間のようで出入口はなくかわりに闇が全体を包んでいる。先ほど滑り出たところもいつの間にか無くなっていた。それなりに広い空間だが置かれているものは石製の椅子しかない。リベアの空間にあった大きなものではなく一人用のものだった。座面には分厚いクッションが置かれていた。手で触れてみると押した型がそのまま残るほど柔らかい。血がでていなければ座りたいものだ。汚すのも悪いので我慢しよう。あの女神はこんな空間に僕を移して何がしたいのだろう。実はこの外から見ているのではないだろうか。外側にある闇に近づいて観察してみる。闇はこの場所を避けるようにして逃げているように見える。またよく調べてみると淵には白い線が引かれておりそれより内側には入ってこないようだ。他に調べられそうなところはないし脱出のためにはやるしかない。闇の中に顔をつける。全く先の見えない闇だ。試しに僕の手を自分の顔に当ててみる。当たるまで近づけても見ることができなかった。もしこの先に出口があるのだとしたら探すのは大変だ。

「何をやっているのですか。今すぐこちらに来て正座しなさい」

 どこかで聞いたことがある強気な声。なぜか命令に何があっても従わなくてはいけないと思考が変わる。声のする方に振り返るとあの女神が椅子に座り足を組んでいた。もちろん顔は怒ったままだ。走って女神の前に正座した。足の裏がピリピリと痛む。すれているので正座なんてしたくもないのだがやめることもできない。体が金縛りにあったように動かないのだ。

「あの、肌がすりむけているので……」

「誰が口を開いて良いと言いましたか。黙りなさい」

 途端に言葉を発せなくなる。痛みに耐えるために歯を食いしばる。目の前の女神は冷めた目でこちらを眺めていた。

「あなたのおかげで気分は多少なりと良くなったわ。でもほんと、愉快だわ。中がどうなっているかもわからないのに飛び込むなんて。愚かすぎない? 」

 全然愉快そうではない表情で言われる。睨みつけることしかできない。

「そんなにリベアと同じ顔してる私が怒っているのが気に入らないの? 初対面なのに躍起になるのは何か理由があるからなのよね」

 図星だったがこの女神には知られたくない。否定しようにも言葉を出せないので首を横に振ることしかできなかった。

「随分と必死ね。あなたに正直なことを話させるように命令しても良いのよ。まぁ人間に話される方がイライラするからやらないけど」

 話せないのがもどかしい。なんで命令を聞かければならないんだ。僕から何かを読み取ったのか女神は疑問を持ったようだ。

「あれ、リベアから聞いてないの。こいつの上で命令したらどんなことでも言うことを聞かせられるって」

 そんなこと初めて知った。ただのインテリアだと思っていた。

「ふーん、まぁいいわ。一応、いつもの名乗りもやっておきますか。私はフォビア。人間の言葉で言う地獄のような世界を紹介する案内人よ。拒否権はないから魂が綺麗になるまでせいぜい苦しんでね」

 リベアとは何もかもが正反対だ。言動も振る舞いも転生先の世界さえ違う。こんなのがリベアと同じ顔なのが信じられない。

「とは言ったもののあんたには聞きたいことがたくさんあるからすぐには送らないわよ。感謝しなさい」

 少しだけ安心した。これからの行動次第で地獄行きを免れるかもしれない。

「あんたは首を縦か横に振りなさい。言い訳はさせないし嘘をついたらわかるから。理解したかしら」

 縦に首を振った。するとフォビアは僕のひたいに手を当てる。意味は理解できなかったが否定すると怒られそうだったのでそのまま受け入れることにした。

「じゃあ始めるわよ。あんた、リベアに惚れてるわよね」

 惚れている。思いもよらない言葉に聞き間違いかと思った。しかしフォビアの顔を見ると真剣な眼差しを向けている。確かに初めて会った時に一目惚れをした。でも、神様だと知った時から僕如きの人間が恋をしてしまい恐れ多いと感じた。それからはリベアのことを恋愛対象のように見ることはない。だから、わからないと首を傾げる。

「何でわからないのよ。自分のことでしょ。嘘をついてないのも腹が立つわ」

 また怒らせてしまった。仕方がないじゃないか。わからないのだから。

「質問を変えるわ。リベアを好きになったことはあるわよね」

 惚れてしまったのだからもちろんある。それに容姿を抜きにしても明るい性格や真剣に勉強するところには憧れを抱いている。

「人間なのだから汚らしい考え方に至らなかったの? ずっと一緒にいたいとか独占したいとか。あとは淫らな発想とかしなかったわけ? 」

 一緒にいたいと思うことはある。でも独占したいとは思わないし、ましてや淫らなことなことなんて僕からできるわけがない。リベアから寄ってくるような気がするが。首を横に振るとフォビアはなんとも言えない顔をしてひたいから手が離れる。紙を持って何かしているようだ。

「うーん、やっぱりわからないわ。あんたの人生も特筆しておかしなところがない……やっぱり人間じゃないでしょ。人間にしては汚い欲が少なすぎて異常よ。そろそろ本性を現したらどうなの」

 そんなことはない。僕は人間だ。何度も首を横に振るが理解してくれない。

「どうやって私の魔法を回避してるかわからないけれど私は騙せないわよ。リベアにこんなよくわからないやつ任せるわけにはいかないわ。あんたには本性を出すまで地獄にいてもらうわよ」

 フォビアが手を叩くと背後でガラスが割れたような音がした。振り返ると外にあったはずの闇が勢いよく伸びてくる。僕の体に紐のようにまとわりつき、外へ引きずられる。抵抗しても足は正座のままのせいで力がうまく入らない。

「あんたにぴったりな地獄を用意してあげたから、本性を出すまで閉じ込めてあげる。あんたの罪は優柔不断な所ね。選んでいたらこんな目にも合わなかったのに。哀れね」

 最後に聞こえた言葉の意味は理解できないまま闇に包まれた。

 光が目に入る。どうやら気を失っていたようだ。仰向けになってベッドに寝ている。ベッドの上で体が動くことを確認する。言葉も話せるようになっていた。体を起こすと机に向かっている一人の少年を見つけた。全身に鳥肌が立つような感覚に襲われる。

 ここは僕の部屋だ。それで目の前にいるのは中学生の自分だ。いったいどうなっているのだろう。話しかけて良いものかと悩んでいたらもう一人の自分が体を突き抜けてベッドへと飛び込んだ。どうやら世界を見る時と同じように僕はいないものとして扱われているようだ。携帯に向かってニヤニヤと気持ちの悪い笑みを見せている。

 思い出した。この時は中学二年だ。好きな女の子ができてメールアドレスも交換できた。その日の内に相手からメールが届いて浮かれている。相手にも気がありそうだったから告白するか悩んで結局何もできずに話すこともなくなってしまった。あまり思い出したくない記憶の一つだ。

 この出来事を改めて思い出させるのが地獄なのかと思っていたら目の前の自分が急に狂気乱舞しだした。手に持っている携帯を覗くと「よろしくおねがいします」の一行が表示されていた。この僕は告白に成功したのか。この時に告白していたら成功していたということなのだろうか。目の前で喜んでいる自分に腹が立ってきた。こんなものは見たくない。怒りを鎮めるために目を閉じた。でも、まぶたの裏にも喜んでいる自分の映像がくっきりと映し出される。自分から逃げることもできない。せめて自分の声が聞こえないように叫ぶしかなかった。このまま喜んだ自分を眺めるのかと嫌気が差していたその時。足元から闇が現れて、僕を覆うように広がる。自分の成功を見えなくなって嬉しかった。だがこれは地獄の始まりに過ぎなかった。

 闇が晴れると再び自分の生活を見せられる。そして自分の成功を見て、闇に運ばれてまた新しい世界に移動させられる。それを何度も繰り返して他の年代の選択を見せられた。何を食べるか、暇な時間をどう過ごすかなど小さな選択。どの高校を受験するか、部活をするか、彼女とどこに行くかなどの大きな選択。どんなに小さなことでも目の前の自分たちは良い結果に向かっていた。目の前で起こっている成功に自分は失敗したという事実を押し付けられる。僕の人生自体が否定されるようで死にたくなる。そんな気持ちでいっぱいだった。

 数えるのを諦めるほど繰り返していた。ずっと見てきた僕の気分は最悪だ。初めこそいろんな感情が湧いていた。けれど次第に感情が動かなくなって、今ではどんなものを見ても何も感じない。代わりに僕の存在がなくなるような、体の中から蝕まれる感覚が嫌で仕方ない。

 もちろん最初は抵抗もした。でも、その場から離れようとしても闇がその場に縛り付けて逃げられない。全ての物に触れられないから自分を止めることも死ぬこともできない。耳を塞いでも、目を閉じても届く自分の喜び。どうしようもなかった。

 ただできるのは謝ることだけだった。見ているかもわからないフォビアに対して返して欲しいと謝るしかなかった。。これまでの人生を見てきて決断をしなかったことを悔やんだ。可能性を見せられるだけでこんなに心が辛くなるとは思わなかった。真の意味で懺悔をしていたら今回の成功した自分も終わり、視界は闇に包まれた。

 闇が明けると電車に轢かれそうになっていたお婆さんを助けたところだった。僕の人生最後の選択だ。間違った選択はしていないと思う。助けなければあのお婆さんは死んでいただろうから。お婆さんが取り残されたまま遮断機は降りる。そろそろ自分の登場だ。その自分は周囲が動かないことを確認してからではなく、非常ボタンを押してすぐに内側に入った。状況をすぐに判断して手押し車を抜き、お婆さんと共に担いで線路内から走り抜けた。一秒もしないうちに線路に電車は通り、速度を落として止まった。自分の周りには人だかりができ称賛されているようだった。

 絶望的だった。ほんの一瞬の躊躇がなければ僕はまだ生きれていた。僕の最期でさえ失敗だったと突きつけられたような気がした。もう嫌だ。このまま消えてなくなりたい。自暴自棄になったが一つの可能性を思いついた。これで僕の人生は全て見終わった。元の場所に戻れるのではないだろうか。闇に包まれながらそんな希望にすがることにした。

 闇が晴れて世界は変わる。出た場所はフォビアがいた空間ではなくどこかの家の中のようだ。僕の部屋なのかはわからない。足の踏み場もないほどゴミに覆われていたからだ。そんな環境の中パソコンに向かってマウスとキーボードを操作している誰かがいた。これまで見てきたからきっと自分なんだろうなとは思った。しかしあまりにも僕とは違いすぎて自分と認識したくはなかった。

 体には大量に肉がつき動かすのも億劫になるような大きさだ。髪も少なくなって肌が見えているところもある。こんな姿になって何をしているのかと画面を見てみたら遊んでいるだけだった。生きていたら仕事をやめて引きこもりになっていたということだろうか。僕のことながら絶望的だ。

 そんな中、扉を激しく叩く音が聞こえた。扉の施錠ごと破壊して入ってきたのは強面の男たちだ。何か話しているようだが僕には聞こえない。ただ言い合いの中で男の顔がどんどん曇っていき最後は暴力を振るっていた。その後、男たちは自分の体を五人がかりで外へと出した。外へ放り出された自分は家から一目散に逃げようとする。けれど自分自身でも体を動かすのは難しいみたいで足元はおぼつかないし顔中汗まみれだ。その場から動かなかったからその先はわからないが、闇が覆い世界は変わる。

 自宅近くの川、橋の下に出てきた。外は激しい雨が降っていた。先ほどより痩せ細った自分が橋の下で座っていた。顔からは生気がなくなり、服も汚れていたり切れていたりと大変な思いをしていたのがうかがえる。僕も今こんな顔をしているのだろうか。ここまで肉は付いていないだろうがきっと同じぐらい疲れているんだろう。それから数分もしないうちに自分の体が動かなくなった。死んでしまった。

 今のは決断ができないまま生きていたらあんな風に死んだということだろうか。不思議とこれまで見てきた自分達からそう思った。これで本当に終わりだ。僕を元の世界に返して欲しい。もう嫌だ。死にたい。涙を流しながら闇に囚われた。

 闇が晴れた瞬間、何かに拘束された。椅子に縛りつけられたみたいだ。動く気もなかった僕だが目の前にはこれまで見てきた世界がテレビのように映像で流れている。それが何画面も違う場所を移しながら。どこを向いても見たことがある自分がいる。今までの最悪な世界はあくまで前菜だったということだ。ここからが本来の地獄のようだ。四方八方から来る映像と自分の喜んでいる声。まぶたを閉じても流れる映像にあらゆる希望が押しつぶされる。腕と足が拘束されているから耳を塞ぐことも逃げることもできない。死ぬこともできない。何もできない。ただ心が蝕まれていくだけだった。

 あれからどれだけ時間が経ったかわからない。目の前に流れる映像は何も変わらない。忘れようとしてもこべりついて離れない。何年も、何十年も同じ映像を見せられている。でも良いこともあった。今苦しんでいるのは違う自分で僕は俯瞰して見ている。多重人格だろうか。そんなことはどうでもいい。おかげで僕はもう苦しくない。元々僕は死んでいるんだ。このまま消えてしまっても誰も悲しまないだろう。もう疲れた。早く休みたい。

 そう思っていた矢先だった。映像に歪みが生じて人の姿を映し出す。現れたのは懐かしい女神だった。

「今から記憶処理をします。少し痛みますが耐えてください。この世界の記憶は消せるようになりますから安心してください」

 すぐに石製の杖を取り出すと地面に突き刺す。周囲の映像は突然止まり画面ごと破壊される。僕の拘束も外れたようだ。力なく地面に横たわる。杖を中心に白い線で模様が浮かび上がった。リベアが僕の体を持ち上げ、杖を抜きその場に置く。心臓の辺りを触って何かを呟いた。

 瞬間、空に飛んでいた意識は体に戻り、激しい痛みが直接感じられるようになる。体全体に溶けた金属を流し込まれているような熱い痛みだ。

「……ア、ア! 」

「まだ耐えてください。後数秒です」

 どうにもならない痛みから逃げたくて手足を暴れさせる。リベアは押さえつけるように何かで縛り、頭を触って理解できない言葉を話す。言葉が終わると身体中の痛みが消えた。同時に忘れることもできなかった地獄のような記憶も遠い過去のものになっていた。

「気分はどうですか。良いものではないと思いますが」

「あ……とう、……います」

 喉を震わせようとしてもかすれた声しか出せない。話さない期間が長すぎて声の出し方がわからなくなっていた。

「優也にとっては時間の進み方が違かったのですね。わかりました。次は痛くないようにしますので動かないでください」

 リベアは再び頭に触れてまた何かを話している。言われた通り動かないでいると頭と喉に温かくドロドロしたものが突然現れた。体の中から頭と喉がつながっていくような感覚。痛くはなかったが気持ち悪い。ドロドロがなくなった時頭の中が冴え渡り、喉の使い方を思い出した。

「いろいろとありがとうございます。助かりました」

「問題なく話せていますね。良かったです。あとタオル、渡しておきますね」

 なんでだろうと思いながらタオルを受け取る。今まで他のことに気を取られたせいで全く気がつかなかった。視界はいつの間にかぼやけていて頬から口にかけて水が通る。少し塩味を感じた所で泣いている事実に気がついた。

「優也、私が来てからずっと泣いてますよ。落ち着くまで待ってますから安心してください」

 緊張の糸が切れたのか足から崩れ落ちる。拭いても拭いても出てくる涙に嫌気がさし、タオルを押し付けて声を出して泣いた。そんな僕にリベアは何も言わず隣に座り、落ち着くまで背中をさすってくれた。

 涙が落ち着いた頃にリベアが尋ねてきた。

「優也、ほとんど記憶を消してないですよね。どうしてですか」

 そう、僕はまだ自分たちを忘れていないのだ。

「正直、今でも思い出すと吐きそうです。でも忘れてしまうのもなんだか悪い気がして。これから選択から逃げないようにするためにも戒めのように残しておこうかと思ってます」

 立ち向かうためにこの記憶は残そうと思った。リベアはあまり

「そうですか……言っておきますがその記憶は偽物ですよ。フォビアちゃんがあなたの過去から作っただけです。悪意を持って作られた優也を絶望させるだけのものだと思います。記憶を消す方が良いと思うのですが」

 善意からリベアはそう言ってくれた。でも変わらないといけない。きっかけをくれたなら今変わらないと一生変われないだろう。

「それでも僕は覚えておかないといけないんです。さっきも言いましたが戒めです。生きていた頃は選択が嫌いでした。僕のせいで大きな失敗をしたり責任を押し付けられるのが嫌だったんです。だからずっと他の人に任せて選択から逃げてました。でも今回のおかげで選択しない方がずっと後悔するってわかったんです。死んでから気がついても遅いとは思いますが、まだここでの人生が残っています。今から実践しても遅くないでしょう。それにリベアさんと会わなかったら絶望的なことになっていたかもしれないって思えば今がもっと良くなるじゃないですか。自分の成功と失敗を背負ってこれからに生かします」

 リベアは突然、僕を抱きしめた。何が何だかわからないまま心臓の鼓動だけは早くなる。

「優也の覚悟にもう口は出しません。私にはこんなことしかできませんが全力で応援します。もし覚悟が辛くなったり、苦しくなったらいつでも言ってください」

 リベアは僕の気持ちを理解してくれたようだ。でもたった今、贅沢な苦しさを味わっている。リベアの胸が押し付けられているのは言うまでもないが力がおかしい。抱きしめる力がどんどん上がっていて、骨が鳴っているのが聞こえる。体の真ん中から二つに折れてしまいそうだ。

「あの……リベアさん。とてもありがたいんですけど、痛いです」

 リベアがとっさに手を離す。抱きしめられていた部分が解放されて血が体に回っていくのを感じる。同時に痛みが走る。

「すみません、痛かったですよね。すみません」

 壊れたおもちゃのように同じ言葉を繰り返す。しっかりと治癒魔法を使ってくれたので痛みは引いた。

「全然大丈夫です。それで、このあとはどうするんですか」

 振り返って円形のゲートを作り出した。奥にはいつか見た橙色の明かりが確認できた。

「これからフォビアちゃんのところに戻ります。気まずいかもしれませんが今回のことで話さないといけないので来てください」

 ゲートを潜ったリベアが呼んでくる。久しぶりのような、そうでもないようなゴミ箱の世界に戻ってきた。フォビアは何があったのかわからないが端の方でクッションを握りしめて小さくなっている。張本人を見てもなぜか怒りや恨みは湧かなかった。リベアは円形の机と椅子を作り、僕とフォビアに座るよう促す。フォビアも嫌がっていたが渋々近づき、三人が机を囲むように座った。話を始めたのは右手に座ったリベアだった。

「さて、何から話せば良いものですか。とりあえずフォビアちゃんの謝罪が先ですね。謝ってください」

「……なんかやだ」

 子供のように拗ねたフォビアに驚きを隠せない。あの高圧的な態度はどこにいったのだろうか。リベアの顔は微笑みから無表情に変わる。

「全面的に悪いのはフォビアちゃんですよ。無実の人がゴミ箱に送られるなんてあってはいけないでしょう。あと数年遅れていたら優也は消えていたのをわかっていますか」

 冷たい声でフォビアを諭す。フォビアは怯えた様子で目を背けている。あまり喧嘩はして欲しくない。謝って済む問題ではないし、心から謝りたいと思った時に謝罪してくれればいい。

「まあ、もう済んだことですしいいじゃないですか。謝られても心の傷は癒えません。それに無理に謝らせるのも違うと思います」

 両者の視線が僕に集まる。少しの沈黙が流れる。リベアは表情が戻り、やれやれと

「優也は甘すぎます。でも、私も言いすぎました。無理にさせるものではありませんよね。フォビアちゃんも優也に感謝してください」

 リベアは納得してくれたようで良かった。フォビアはふてくされたまま

「やっぱりあんたのこと理解できそうにないわ」

と小声で呟いていた。声は聞こえていたが怒られそうだったので聞こえていないことにした。

「まず私たちの関係性から話すべきでしょうか。優也も気付いているとは思いますが、私たち顔が似てる、もしくは全く同じだと思いませんでしたか? 」

 髪の長さや目の色を変えられたら見分けがつかないだろう。

「そうですよね。フォビアちゃんと私は元々一柱、簡単に言うと一人の人間だったんです」

 だから顔が似ているのか。なんで二人に別れてしまったのか

「大神様が私を創造した時に感情を付与しようとしました。ですが人間には必要のない感情が大量にありました。完璧な存在を作りたいと感情を持たせた時に必要のない感情を落としました。その時に生まれたのがフォビアちゃんです。人間には多くの細かな感情があるみたいですが喜怒哀楽の四つに区分して私たちに割り振りました」

「それで私には怒りの感情、リベアには喜び、哀しみ、楽しみの感情を植え付けられたってわけ。リベアも私もだけどない感情は表現できないから無表情になるんだよね。あんたもリベアが怒ったところ見たことないでしょ」

 確かに見たことはない。さっき怒った時も無表情だった。フォビアが怒った顔を見て想像することしかできない。

「でも真顔以外でも同じ顔する時がありますよね。驚いた時とか」

「そうですね、割り振られなかった感情は無理やり作ってます。二人とも同じ感情を共有したくてがんばりましたから」

「じゃあフォビアさんも笑ったり泣いたりできるってことですか? 」

「素直に笑うことはできないわ。大神の強制力が強くてね。できるのは近い感情を持ってくることだけ。引きつった笑いだから絶対に見せないわよ」

 リベアもうなずいている。

「それで感情が分かれた神様だと言うことはわかりました。それが今回の事件とどう関係あるんですか? 」

 フォビアが目を背ける。自分のことだから言いたくないんだろう。見かねたリベアが助け舟を出す。

「あの……あれですよ。フォビアちゃんはもともと怒りの感情が前にでやすくて行動に突発的なものが多いんです。優也と会った時も怒っていたでしょう。それが収まらなくてこんな事態になってしまったんです……はい」

 リベアもフォビアもまだ何か隠しているように感じる。二人とも目を合わせようとしない。嘘をつくのは下手らしい。

「まだ何か隠していますよね。本当はどんな理由なんですか」

 フォビアはあまり言いたくなさそうにしている。代わりにリベアが口を開こうとした瞬間。

「やめて! それだけは言わないで! 」

 フォビアが全力で止める。椅子から立ち上がり、リベアの口を抑えようとした。

「しかたないでしょう。優也を納得させるには言うしかないんです」

 魔法か何かでフォビアの体を縛るとあっさりと秘密を話してしまった。

「実はフォビアちゃん人間のことが怖いんです」

 意外だった。高圧的に僕のことを責めていたのに実際は怖かったから

フォビアの方を見ると僕に顔を見られないようにするためか椅子に戻って座り、腕と机で顔を隠している。

「大神様に人間について教えられた時に強い恐怖心と嫌悪感を持ってしまったみたいなんです。最初は気持ちの悪い生物って言ってましたね。その上フォビアちゃんは人の欲が見えるみたいで、実際に人間を見ると欲だらけの化け物と言ってました」

 確かに人間は欲だらけだろう。気持ち悪いと感じるのもわからなくはない。リベアはそのまま続ける。

「大神様は普通の案内人にしては人間を殺してしまう可能性があるとこの場所を任せました。それが良くなかったのか人間の中でも罪を犯した人やおかしな人とばかり会うようになりました。そのせいでさらに人間嫌いが進んでしまい、人間をゴミとか下等生物とか蔑むようになりました。ここがゴミ箱と言われる要因ですね。でも、そんな状態になっても恐怖心は取れなかったみたいで人間に会ったときは怒りで誤魔化してすぐに処理をしていたみたいです」

 周りの人間に悪影響を受けてしまったのか。少しかわいそうだと同情をしてしまった。でも、それだと余計にわからない。

「そんなに嫌いだったら、なんで僕に関わって来たんですか」

「話を少し聞いただけの予想ですがフォビアちゃんにとって礼儀正しく接されたのは初めてだったのだと思います。優也は人間の中でも欲が少ないように思います。その上、優しいですから普通の人間とは見え方が違ったんじゃないでしょうか。それが理解できなくて、でも理解したくて優也に話しかけたのではないでしょうか。どうなんですかフォビアちゃん」

 顔を隠していたフォビアが渋々と顔を上げる。

「そうよ! 悪い! これまで会ってきた人間はみんな欲にまみれて汚かった。でもあんたは違う。頭を下げられたとき意味がわからなかった。私に媚を売って何をするのか。私からリベアの情報でも手に入れて悪事を働くんだ。あいつには絶対裏があるって。ネガティブなことしか思い浮かばなかった。だから化けの皮を剥いでやろうってあんたのストレスが溜まりそうなことをやったのよ」

 怒りながら事情を説明していく。言葉を挟む余裕もないほど畳み掛けてくる。

「それでもあんたは欲で汚れた人間にはならなかった。それどころか私のことをもっと知りたい、仲良くなりたいって純粋で眩しい欲しかなかった。理解できなかった。むしろ腹が立ってきたのよ。理解できない私の方がおかしいってあんたに言われてる気がして。だから否定するために最大限の地獄を見せて本性を出してやろうってあんたを送ったの。結果は知っての通り、リベアにはこっ酷く怒られるし、あんたのことも理解できないままだし最悪よ。悪かったわね。こんなことして」

 フォビアは言い終わると顔を背ける。

最後に謝ってくれていた。まだ許せる気分ではなかった。けれど正直な気持ちを言ってくれたことが少しだけ嬉しかった。それに今まで見た記憶が僕の選択嫌いを克服するものにもなった。フォビアの問題も分かったのならあとは提案をするだけだ。

「謝ってくれてありがとうございます。でもごめんなさい。正直、僕の感じた苦痛は謝られただけでは癒えません。だけど引きずっても意味がないのでここで終わりにしたいです。フォビアさんも得体の知れない人間がリベアさんと一緒にいるのは嫌なのではないですか」

 少し悩んでいたが首を縦に振ってくれた。椅子から降りてフォビアに近づく。

「ならここで人間なりの謝罪の仕方で終わりにしませんか? ただの握手なんですが言葉のみよりは良いでしょう。僕は地獄についての話を掘り返しません。フォビアさんは僕のことを認めてください。こんな形でどうでしょうか」

 手をフォビアに向かって出す。フォビアは怒っているように見える。やはりダメだっただろうか。

「はぁ? そんなこと言って私の手に触れたいだけでしょ。って普通の人間ならそうなのに、なんであんたからは邪な気持ちが見えないんでしょうね。本当にあんたの考えはわからないわね! 」

 言い終わると同時に出した手を叩いた。痛みがジンジンと手の中で響く。フォビアはそんな手を握って体に寄せる。抵抗できずに引き寄せられた僕にこう囁いた。

「あんたのこと、いい人間だって認めてあげる。リベアに何かしたら許さないからね」

 フォビアの顔は見えなかったが優しい口調でそう言った。フォビアが体を突き飛ばしながら手を離し距離を取る。バランスを崩した僕は転んだ。

「帰り道は用意したからあそこから早く帰って。もうこんなとこ来るんじゃないわよ。リベア、早くこんなやつ転生させちゃってよね」

 背後にはいつの間にか木製の扉ができていた。

「はいはいフォビアちゃんも元気でね。優也、行きましょうか」

 扉を開くといつもの大きな椅子が見えた。僕もリベアも扉を通ると自動で閉まっていく。僕とリベアが手を振っているとフォビアも小さく手を振っていた。そのまま扉が閉まり霧のように消えた。色々とあったが最後は良い別れ方ができて良かった。椅子の方に向き直るとドッと疲れが出た。その場にへたり込んでしまう。

「大丈夫ですか。顔色が悪くなりましたよ」

「さすがに疲れました。ここに戻るとなんか安心しちゃって。少し休めばまた動けるようになりますよ」

 目の前に移動してきたリベアが僕から何か読み取ったのか尋ねてきた。

「もしかして、少し寂しいとか思ってます? 」

「いえ全然。かなり怖い神様でしたから。それに僕と反対にいるような性格でしたし、正直苦手だったんですよね」

 できればもう会いたくはないのだけれど。気持ちは押し留めておこう。少し声を出してリベアは笑う。

「そうですよね。もう、すぐに会えるとは思いませんよね」

 背後に悪寒を感じる。振り返ると鬼がいた。

「あんた、正直になりすぎたわね。認めるとか言ったけどやっぱなしかもね」

「どうして。さっき扉は無くなったはずでは」

 フォビアはいつか見たクッションを取り出した。

「私のクッションに触ったでしょ。お気に入りだったから文句言ってやろうと扉を繋げたのよ。そしたらあんたの話の最中でね。黙って聞いてたら本音も出しちゃって。もう許さないわ」

 フォビアに言い訳をしても意味がないだろう。それに全部僕が悪い。いないと思って悪口を言ってしまったのも僕だ。なら潔く罪を認めてしまおう。目を閉じて罰を受ける覚悟をした。

「……もう許さないから私がきた時にあんたの行動原理を説明できるようにしておきなさい。忘れてたら許さないからね」

 フォビアは僕が考えていないようなことを言った。意味がわからない。怒っていたんじゃないのか。隣のリベアはずっと笑いを堪えている。

「そこ、笑うな! とにかく忘れるんじゃないわよ」

 リベアを指差して軽く怒る。扉を通るとまた勝手に閉まり始めた。

「それからこれ。あんたのせいでもう使えないから捨てるわ。使いたかったら勝手にしなさい」

 クッションを僕に投げつけてくる。何も言う暇がないまま再び扉は消えた。本当に嵐のような訳のわからない神様だ。困惑していると隣から大人しく抑えようとした爆笑が聞こえる。リベアが立てなくなるほど大きく笑っていた。

「ははは。あー、ほんと。ふふ、面白いですね。優也とフォビアちゃん。あはは」

「なんでそんなに笑っているんですか。僕、死にそうだったんですよ。覚悟だってしてたのに」

「もーだめです。私を笑い殺す気ですか。ふふ。もう私行かないと。ほんとに死んでしまいます」

 椅子の側面に手を突きながらよろよろ歩いて帰っていった。リベアも今日はかなりおかしかった。考えている暇もなく体が横になる。今日は本当に疲れる一日だ。早速クッションを使うとは思っても見なかった。ここまで読まれていたようで負けた気がする。でも、フォビアに少しだけ感謝しながら眠りに落ちた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ