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転生鍛冶師は異世界を往く。魔王の少女が旅に同行することになったが、たぶん俺のスローライフを邪魔しているのはコイツだと思う。  作者: 烏羽 楓
第一章

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第5話「舞い込む金の匂い」

 首都ヘンデルでの生活にも、少しずつ慣れてきていた。


 朝起きて、ギルドへ行って、依頼を受けて、こなして、帰る。

 そんな日々を数日ほど繰り返した結果、俺たちは駆け出しのFランクからEランクへ昇格していた。


 受けた依頼は、街道の見回りだったり、薬草採取だったり、畑を荒らす魔物の駆除だったり。地味ではあるが、命を落としかねない無茶な仕事ばかりでもない。黄泉を抜かずに済む範囲で、俺は堅実に実績を積んでいた。


 ちなみにティアは、その間ずっと不満そうだった。


「また荷物運びか。つまらんのう」

「つまらんで命が繋がるなら安いもんだろ」

「オーガを狩れば、一発で済むではないか」

「ああ、確かに。こっちの命が一発で終わるかもな」


 そんなやり取りも、もはや日課みたいなものだった。


 Eランクに上がったことで受けられる依頼の幅も広がり、報酬も前より増えた。おかげで、宿代や食費を差し引いても、手元に残る金は少しずつ増えている。


 とはいえ。


「……まだ貯蓄は金貨二枚、か」


 ギルドの掲示板を眺めながら、俺は小さく呟いた。


 金貨二枚。向こうの感覚で言えば二万円くらいだ。

 普通に暮らすだけなら十分そうに見える。だが、旅をするには全然足りない。


 毎日の食費と宿代に加えて、移動費までかかる。

 気ままに各地を回る旅なんて聞こえはいいが、現実は財布との殴り合いだ。


「どうしたのじゃ、そんな難しい顔をして」

「路銀を考えてたんだよ。金貨二枚じゃ、旅立つにはまだまだ遠いなって」

「ふむ。なら、やはりオーガじゃな」

「なんでそこに着地するんだよ」


 俺の横で、ティアがまたしても高ランクの討伐依頼を眺めている。

 

 こいつは本当に隙あらばオーガを狩らせようとしてくるな。

 いい加減、受注ランクというものがあるのを学習してほしいもんだ。


「儲かるからの」

「死んだら元も子もないだろ」

「死なねばよい」

「それが一番難しいんだよ!」


 相変わらず会話が雑だ。


 ため息をつきつつ、俺は改めて掲示板へ目を向けた。

 Eランク向けの依頼でも、物によって報酬に差がある。どうせ受けるなら、少しでも実入りのいいものがいい。


 街道警備、荷運び、素材採取、低級魔物の討伐……。

 どれも悪くはないが、決め手に欠ける。


「うーん……」

「まだ選んでおるのか。悩んでおる暇があればオーガを――」

「却下」


 その瞬間だった。


 ギルドの扉が勢いよく開かれ、大きな音が広間に響く。


「ギルマスは居るか!? ゴブリンどもの巣を見つけた!」


 飛び込んできたのは、土埃まみれの男だった。

 息を切らし、額には汗を浮かべている。その慌てぶりだけで、ただ事じゃないのが分かった。


 同時に、ざわり、とギルド中の空気が揺れる。


「ゴブリンの巣だと?」

「場所はどこだ」

「まさか、旧遺跡の方か……?」


 あちこちから声が上がり、さっきまで依頼書を見ていた冒険者たちが一斉に顔を上げた。


 ……ゴブリン?


 俺はその反応に、首を傾げた。


 ゴブリンって、あれだろ?

 ゲームとかで出てくる雑魚キャラ三銃士みたいなやつ。スライムとかコボルトとか、その辺と肩を並べてそうな小物ポジションじゃないのか?


「なんで、ゴブリンでそんなざわついてんだ?」

「さあの。あんなもの、魔法で巣ごと吹き飛ばしてしまえばよかろうに」


 いや、それはたぶんお前にしか出来ないと思うが……。


 そう内心でツッコんでいると、近くで話を聞いていたらしい冒険者の男が、苦笑混じりにこちらを見た。


「新人か?」

「ああ。そうだけど」


 男は肩をすくめる。

 年の頃は二十代後半くらいだろうか。日焼けした肌に短い茶髪。いかにも場数を踏んでそうな雰囲気がある。


「ゴブリンは単体なら大した相手じゃないんだが、巣となると話は別なんだ」

「別?」

「数が数十体、下手すりゃ数百になる。それだけ集まれば、上位種のゴブリンメイジやゴブリンジェネラルが混じっててもおかしくない」

「……へぇ」


 思ってたより随分と面倒くさそうだな。


 男はさらに声を落とした。


「放っておけば、近くの村や行商人が襲われる。数で押し寄せられりゃ、雑魚だなんだじゃ済まねえ。そうなれば推定ランクはB。おそらく、合同作戦(レイド)になるぜ」

「なるほど。ゴブリンといえど、集まると厄介ってことか」

「そういうことだ」


 数の暴力、ってやつか。

 人間同士でも厄介なのに、それが魔物側から押し寄せてくるとなれば脅威なのは当然だ。言うなれば、向こうの軍隊みたいなもんだろう。


「俺はカイル。Dランクの冒険者だ」

「Dランク……」


 俺は思わず男の胸元のタグを見る。

 Dランク。Eランクの俺たちより一つ上だ。


「俺はユウマ、Eランクだ。こっちはティア」

「魔王じゃ」

「はあ!? 魔王ッ!?」


 カイルが本気で飛びのいた。


 すかさず、俺は口を挟む。


「という設定だ。気にしないでくれ」

「あ、ああ……。びっくりした。ずいぶん個性的な仲間だな……」

「よく言われる」


 もちろん、そんなわけはない。まだこの街に来て数日だぞ。

 魔王だなんだって、そこらで言い回ってたら衛兵に捕まるわ。


「なんじゃと、妾は本当のことを」

「はいはい、今は黙ってような」

「むぐっ」


 後ろで何か文句を言いかけたティアの口元を手で押さえる。

 こんな人だらけの場所で何を言い出してるんだ、この厨二病は。


 カイルはそんな俺たちを見て、半ば呆れたように笑った。


「面白いコンビだな」

「笑い事じゃないんだけどな、こっちは」


 そう言い返したところで、ギルドの奥から大柄な男が現れた。

 冒険者たちの視線が一斉にそちらへ向く。どうやらあれがギルドマスターらしい。


 土埃まみれの冒険者がすぐさま前へ進み、発見した場所や状況を簡潔に報告していく。

 ギルドマスターは短く何度か質問を返し、それを聞き終えると、広間全体を見渡した。


「聞いたな。バーメニア大森林北部、旧遺跡跡地にてゴブリンの巣を確認した」


 低く通る声が、広間に響く。


「規模は不明。ただし、斥候(せっこう)の報告から見て小規模ではない。上位種が混じっている可能性も高い。よって、本件を合同作戦(レイド)依頼として発行する」


 ざわめきが、今度は熱を帯びたものへと変わった。

 報酬目当てか、腕試しか、それとも街の安全のためか。理由はそれぞれだろうが、多くの冒険者が乗り気なのは見て取れた。


 受付嬢たちが慌ただしく動き出し、やがて一枚の依頼書が中央の掲示板へ貼り出される。


 俺は人の隙間から、その内容を読み取った。


 場所は、首都ヘンデルから北に進んだバーメニア大森林にある旧遺跡跡地。

 内容は、ゴブリンの巣を襲撃し、上位種を含めて一掃すること。


 報酬は、参加報酬として銀貨一枚。

 さらに討伐した個体一体につき銀貨一枚。

 上位個体は一体につき銀貨五枚。


 受注ランクは不問。ただし、推定ランクはB。

 複数パーティ参加可能の合同作戦(レイド)依頼。


「……おいおい」


 思わず声が漏れた。

 参加するだけで銀貨一枚。その上、討伐数に応じて上乗せされるのか。


 もちろん危険なのは分かる。

 Bランク相当なんて、今の俺たちには本来荷が重い話だ。だが、レイドなら話は別だ。人数が集まるなら、Eランクでも後方や雑魚処理で立ち回れる余地がある。


 何より。


「ほう? これは金の匂いがするのう」

「お、奇遇だな。俺も同じこと思った」


 隣で、ティアがにやりと笑う。

 さっきまでオーガだの何だの言っていたくせに、こういう時だけ話が早い。


 危険はある。だが、路銀はもっと欲しい。

 だったら答えは一つだ。


 さぁ、俺の旅費、稼がせてもらおうか。

あとがき


見て下さりありがとうございます!

手探りながら、自分の好きと読者様の好きが重なるそんな境界線上の物語を目指してます!


続きが気になると思ったら、

評価、ブックマーク、リアクション等

よろしくお願いします!


――誰かの心に刺さる、そんな物語を貴方に――

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