表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生鍛冶師は異世界を往く。魔王の少女が旅に同行することになったが、たぶん俺のスローライフを邪魔しているのはコイツだと思う。  作者: 烏羽 楓
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/47

第28話「金色の閃光」

「硬すぎるだろ!」

「下がれ、ユウマ!」


 ティアが手をかざす。


 赤黒い魔力が渦を巻き、槍のように伸びた。


「砕けよ」


 魔力の槍がゴーレムの胸部へ直撃する。

 普通の魔物なら、それだけで胴体に穴が空いてもおかしくない一撃だった。

 

 だが、ゴーレムは倒れない。


 胸部に触れた魔力が、表面で散るように霧散した。


「今のはなんじゃ!?」


 ティアの目が細くなる。


 ゴーレムはわずかに後退しただけで、すぐに腕を振り上げた。


「こいつ、たぶん魔法を受け流してるぞ!」


 俺は斧を握り直し、地面を蹴る。

 正面から叩き割るのは無理だ。


 なら、関節を狙う。


 すかさずゴーレムの膝部分へ斧を叩き込む。

 だが、刃はやはり浅い。


 表面を削り、火花を散らしただけで止まる。


 そのまま横から腕が迫った。


「まずっ」


 避けきれない。


 そう思った瞬間、ティアの魔力が俺の身体を後ろへ引いた。


 ゴーレムの腕が鼻先をかすめ、岩壁に叩きつけられる。壁が砕け、石片が雨のように降った。


「助かった!」

「礼はあとじゃ。こやつ、普通のゴーレムではないぞ」

「ああ、物理も魔法も効きづらい。なかなか厄介だな」


 倒れている坑夫たちがいる以上、広範囲や高火力の攻撃は使いづらい。

 黄泉を抜く選択肢も、あるにはあるが正直どこまで影響が出るか分からない以上、今は使えない。


 そんな状況でこいつを止めながら、坑夫たちを外へ逃がす必要がある。

 物理に強いゴーレムが、魔法まで弾く。実に厄介すぎる。

 

 そんなもの、反則だろう。


「ティア、坑夫たちを動かせるか?」

「やってみる。おぬしは時間を稼げ」

「善処はする」


 俺は再び《鍛冶》を発動した。


 今度は斧ではなく、杭のように太い短槍を作る。

 狙うのは、膝の同じ箇所。


 一撃で壊せないなら、同じ場所を何度も叩く。

 俺はゴーレムの攻撃をかわしながら、膝へ短槍を打ち込んだ。


 一度。


 二度。


 三度。


 岩と金属の表面にひびが入る。


「よし、いける!」


 そう思った瞬間、ゴーレムの胸部に青白い光が走った。


 ひびが、ゆっくりと塞がっていく。


「はあ!? 再生するのかよ!?」

「なんと、厄介なッ!」


 ティアが舌打ちする。


 彼女は魔力の糸で坑夫の一人を引き寄せ、壁際へ移動させていた。だが、全員を運ぶには時間が足りない。


 ゴーレムがティアの方へ向く。


 まずい。


 俺はとっさに叫んだ。


「こっちだ、岩野郎!」


 短槍を投げつける。槍はゴーレムの肩に当たり、砕けた。

 ダメージは薄い。


 だが、注意は引けた。

 ゴーレムがこちらへ向き直る。


「よし、来い!」


 全然よくない。


 内心ではそう思いながら、俺は新しい武器を作ろうとした。

 その時だった。


 坑道の奥から、風が走った。いや、風ではない。

 誰かが、凄まじい速度で広場へ飛び込んできたのだ。


「あれか! はーい、皆伏せて~!」


 聞き覚えのある声が響く。


 俺は反射的に身を低くした。

 次の瞬間、金色の閃きがゴーレムの腕を横から叩き砕いた。


 重い破砕音。


 ゴーレムの片腕が吹き飛び、岩壁にめり込む。


「なっ……」


 俺は思わず声を漏らした。

 舞い散る粉塵の向こうに、一人の女が立っていた。


 堂々とした立ち姿。その顔には、見覚えがある。


「エイネシア……さん?」

「あ、やっぱりまた会ったね! てことは……」


 エイネシアはきょろきょろと周囲を見渡し、ティアの姿を見つけると満面の笑みで大きく手を振る。


「魔王ちゃーん! 加勢するよー!」

「やかましい! まずはそいつをどうにかするぞ」

「それはそうだね!」

 

 エイネシアは軽く肩を回しながら、砕けたゴーレムの腕を見た。


「ふーん。なるほどね……」


 ゴーレムが残った腕を振り上げる。

 エイネシアは一歩踏み込み、低い姿勢から拳を叩き込んだ。


 衝撃が坑道全体を震わせる。


「っく!」

 

 なんつー、威力だ。

 硬いゴーレム相手に素手で挑むのも凄いが、あの小さな身体から放たれる威力じゃねえだろ!


 エイネシアの一撃を受けてゴーレムの胴体が大きく傾いた。


 俺はその隙を逃さず、再び《鍛冶》で作ったハンマーで膝のひびへ一撃打ち込む。

 すると、そこへティアの魔法が、ハンマーの一撃をさらに押し込むように重なる。


 ゴーレムの膝が砕け、巨体が倒れた。

 エイネシアがさらに踏み込み、胴体に魔力を纏わせた拳を叩きつける。


 青白い光が乱れ、ゴーレムの動きが鈍った。


「今のうちに坑夫を!」

「分かった!」


 俺とティアは急いで倒れていた坑夫たちを移動させた。


 幸い、全員息はある。

 怪我はしているが、命に別状はなさそうだった。


 ゴーレムは膝を壊され、片腕を失ってもなお動こうとしていた。その身体は今も再生しようと周囲のマナを吸っている。

 だが、エイネシアが間髪いれず連撃を叩きこんで動きを封じ込めていた。


 人間一人で、巨大なゴーレムを止めている。

 相変わらず、規格外だ。


 そして、ついに露出した魔核をエイネシアの拳が砕き、ゴーレムの動きが完全に止まった。


「まったく、なんて硬さだ。流石の僕も、腕が痺れたよ」


 エイネシアが苦笑する。

 だが、その目は笑っていなかった。


「これ、ただのゴーレムじゃないよね?」

「じゃろうな。妾もこんなやつ初めてみたわ」


 二人は、動かなくなったゴーレムに目をやり、冷静に分析する。


「俺は普通のゴーレムすら知らないから分かんないが、どう違うんだ?」

「砕いた腕を見てみるといいよ」


 俺は岩壁にめり込んだゴーレムの腕へ目を向けた。

 

 割れた断面の中に、青白く光る結晶がいくつも混じっている。


 魔鉱石だ。


「こいつの身体……魔鉱石が使われてるのか?」

「そういうことだね」


 エイネシアはゴーレムを警戒したまま答えた。


「ゴーレムはもともと物理に強いんだ。岩や土、金属を核で動かしているからね。ただこいつは魔鉱石が混ぜ込まれているせいで、魔力に対する耐性まで持つようになった」

「だからティアの魔法が途中で散ったのか」

「うむ。妾の魔法は、ちょいっと特殊なんじゃが、魔鉱石が放つような純粋なマナとは相性が悪い。まぁ、どのみち普通の岩人形ではあり得ぬ反応じゃ」


 ティアが険しい顔で頷く。

 エイネシアは砕けた破片を一つ拾い上げ、指先で転がした。


「厄介だよ。正面から削り合うなら、下手な地竜と大差ない」

「地竜って……この前の!? 冗談だろ?」

「硬さと面倒さだけならね。総合的な脅威度は状況次第だけど、狭い坑道で相手をするには最悪の部類だよ」


 背筋に冷たいものが走る。


 そんなものが、閉鎖された坑道にいる。

 しかも、これは偶然とはとても思えなかった。


「でも、ゴーレムの身体って、自然に魔鉱石を取り込むものなのか?」


 俺が聞くと、エイネシアは首を横に振った。


「ないね。少なくとも、こんなふうに均一に混ざることはあり得ない」


 彼女は破片を強く握りしめた。


「これは自然発生じゃない。誰かが意図的に作ったものだよ」


 その言葉に俺は、思わず唾を飲み込んだ。


 これを意図的に作ったやつがいる?しかも、こんな場所に放って……。

 そいつは、いったいなんの意図があってそんなことをしたんだ?

 

 魔鉱石が足りない国。

 魔鉱石を使って作られたゴーレム。


 ただの偶然で片づけるには、あまりにも出来すぎている。


 動かなくなったゴーレムを見つめながら、俺は背筋に冷たいものが這うのを感じていた。

見て下さりありがとうございます!

手探りながら、自分の好きと読者様の好きが重なるそんな境界線上の物語を目指してます!


続きが気になると思ったら、

評価、ブックマーク、リアクション等

よろしくお願いします!


――誰かの心に刺さる、そんな物語を貴方に――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ