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第29話 エピローグ①

 ★


 アイフルはギルドに来ていた。初日から問題を起し、二日目には女神を引き連れて謝りにきて、三日目には魔王の幹部から町を救うために犠牲となり誘拐され、四日目にはそのボスを二度と復活出来ないように消滅させてから帰ってくる。勇者と言えば男性しかいないはずなのに、その姿は美少女。これが有名にならないはずがない。


 アイフルがギルドの中に入ろうとした瞬間に一同がどよめき出す。多くの勇者が目を丸くしてアイフルを見つめていた。魔法使いの姿をしたお姉さんや、巨漢で傷だらけの大剣士などが自分をスカウトするように迫って来る。アイフルの人気がこの町で一番人気の勇者になっていた。新人勇者ながら羨望の目で見られる。


 「いやーもう、パーティは出来上がっているんですよ。すいません」


 そんな言葉を笑顔で行ってクエストを受注している掲示板へ。弓の装備に腰に小道具袋を巻き付けている。指で文章をなぞってクエストの文章を読み込む姿は、少しは勇者らしくなった。ラピアはそんな姿を席に座って、肘をついて眺めている。武器の概念、魔法の操作、クエストの受注、この数日間でよく成長した。黄昏時であり窓の外から暖かい光が差し込んでくる。それがアイフルの背中を照らした。


 「ラピア。このクエストに挑もうと思うのだけど」


 「はい。……あの洞窟内のクエストですか。あの洞窟もボス戦のみで、ちゃんと攻略していないですからね。奥の部屋に行けばブネの残した宝物などもあるかもしれません。その為にも……」


 「松明と地図の用意だよね! 今日中には帰れないから、エーデルに食料を運んで貰わないと。うちにはシャルハがいるから、蝙蝠の超音波があれば楽に移動できるかなって。ランタンフィッシュももう少し倒しておきたいし。戻ったらまた短剣を合成してよ」


 随分と自分に自信がついたようだった。ようやくRPGの面白さに気が付いてきたようである。


 「それからブネの甲殻を使って新しい防具も作りたいと思っていて。ラピア、時間があるなら服屋さんとか防具屋さんを調べてよ。私はまずレベル上げだね! もっともっと強くなる!」


 あまりの熱意にラピアがいつもの笑顔を向けた。楽しそうで何よりである。ギルドは夜中には営業していない。そろそろ閉店になるので、店から出ないといけない。アイフルは焦った顔でクエストを受注するため受付へ走っていった。


 「随分と逞しくなりましたわね……」


 ギルドの扉が開きシャルハ、エーデル。スティルルの三人が入って来た。何やら買い物をしてきたようだ。買い物袋の中に食べ物が詰め込んである。三人で仲良く分け合っているのだが、やはり力持ちであるエーデルの持つ量が大きい。シャルハは二人の半分も持っていないのだが、それでも苦しそうに眼を瞑って袋を持ち上げている。


 「くっ、貴族たるこの吾輩が荷物持ちとは……」


 「今すぐ食べたいよー。待てないよー。お腹空いたよー」


 「ふっ、何も役に立っていない吸血鬼が偉そうに」


 「おい、聞こえているんだよ、傀儡めが! 役に立っているだろ! 吾輩が一番!」


 まあ前回の戦いで一番に戦績が乏しいのはシャルハだった。そこに本人も何かしらの気まずさがあるのだろう。プライドの高いシャルハが荷物持ちに参加するとは。今にも地面に落としそうだけど。


 「ご主人様。今日はいかがしましょうか」


 「もう一度あの洞窟に行って、宝箱とか隠してある物を狙う。私はとにかくレベル上げに専念。洞窟の中で明日の昼も凄そうと思っているから」


 「なんだと!」「えー」「なんと……」


 三人が露骨に嫌そうな顔をする。前回の戦いで少しは地形が理解出来ているし、悪くないクエストだと思ったのだが。


 「また我々を水浸しにするのか?」


 「いや、今度はちゃんと服を脱いで入りましょう」


 「月光がないから変身しにくいよー。あの凶暴化ってのも頭がクラクラするしー。狭いの嫌いー」


 「エーデルは鼻が利くから、洞窟の中では敵の数を察知したり、もし離れ離れになった時とかに重要な役割を果たせると思う。何より宝箱を見つけた際にエーデルがいなくては持ち帰れないよ」


 「あの……ウエディングドレス……欲しい」


 「あーはいはい。あげる、あげる。この任務が終わったら私の借家まで来て」


 今回の一件で三人とも信頼関係が出来たのだろうか。喚く三人をよく抑え込んでいる。いいお姉さんになった気がする。両手でシャルハとスティルルの頭を押さえて落ち着かせている。


 この先には魔物の軍勢が数多く待っている。これからより一層戦いは激化するだろう。魔王の幹部もまだまだ控えている。


 「先が思いやられますねぇ」


 この言葉を何度使ったことだろう。面白くて笑いが込み上げてきた。


 「じゃあラピア! 私たち言って来るから」


 「はいはい。水晶で観察しておきますよ」


 そう言って、営業スマイルではない本物の笑顔で勇者たちを送り出した。

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