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第10話 頼れる仲間

 獣人族の中でも月光に当たると大型の獣へ変化をする者がいる。元は魔物の一族であり、獣人族に至ってはまだ魔王の軍勢に名前を連ねている者も多い。そういう意味では嫌われている。中には異世界からやってきた勇者が、やや興奮気味に仲間にしようと画策するも三日で投げ出す。


 まず先ほどの吸血鬼と同じで夜行性なのだ。昼間は眠いため、吸血鬼程ではないが役に立たない。強靭な肉体も野性的な勘も月光を浴びてこそ。そして教会に入れないので回復が出来ない。生命力が強いので自動回復が著しく早いが、皆と回復のタイミングを合わせられないことが問題として上がる。何より……食費が尋常じゃない。


 コイツも駄目だ。仲間にして扱える人材じゃない。


 「頭に耳が生えている。尻尾まで……」


 「もうちょっと仲良くなったら触らせてやるぞ」


 「いや……あの……」


 二度ある事は三度ある。ラピアの不穏な直感は当たった。まだ何か来る。それも極めて異質な魔力を感じるのだ。今までの二人もかなり危険な魔力を秘めていたが、今度この部屋に近づいている者からは……もっと危険な何かを感じる。


 ソイツは……床から現れた。


 「どぉーん!」


 メイド服を着た……人形だ。古びた布で作られた殺人玩具キラードール。背丈は人間の肩まであり、そこの吸血鬼と狼女よりは高いが、両手に料理包丁を持っている。身体中に縫い付けられた跡があり、目が死んでいる。メイド服はウェイトレスの恰好に似ていて、焼き菓子を作る際のエプロンを着ている。カチューシャを付けており、スカートは黒を基調にしたヒラヒラ。


 「スティル! お前も来たか」


 「ご主人様を求めて彷徨い続ける亡霊。スティルル。さぁ、お申し付けを勇者様……勇者は?」


 声が機械音である。可愛らしい声なのだが、見た目が殺人人形である為に、恐怖しか感じない。はっきり言って超怖い。夜中に一人で出くわしたら泣いて逃げ出すレベルである。


 「貴方は女神……ってことは、ベッドの横で蹲っている貴方がご主人様か。さぁ、今宵は誰を八つ裂きにしようか」


 アイフルに剣を振るのは難しいと思っていた所だ。戦闘の中継役を担う剣士は必要だ。攻防一体に優れた機動力に溢れる魅力的な存在かもしれない。しかも機械なので痛みを感じない。修復アイテムを使えばすぐに回復する。早い話が金さえあれば無限に戦える兵器だ。まあ、維持するコストは決して安くないが。


 それでもこの見た目では誰も好き好んでパーティには入れないだろう。剣士はおおよそ勇者の役目。かなりの確率で役は奪われている。剣士は武器の選択の中で最も選ばれやすい物だ。激戦区ともいえる。そして、コイツに至っては魔物そのもの。教会に入れないし、下手したら他の冒険者に退治される見た目である。そりゃあ余り物になるだろう。


 「吾輩たちが『冒険者被害者の会』だ」


 「真面目に冒険の役に立とうと努力しているのに! 色んなスキルや実力もあるのに!」


 「人間、殺す!」


 三者三様にやいのやいの言い放つ。仲間に入れろ! 給与を寄こせ! 仕事をくれ!


 「私のことを餓鬼扱いした、あの自分の事をイケメンと思っている、あの宇宙一腹が立つ魔王に吾輩は今度こそ復讐するのだ!」


 「私のことをペットにしようとして、首輪などリードだの買って、マジで犬小屋まで用意しやがったあの魔王を噛み殺してやるんだー!!」


 「子供の頃はあんなに大事にしてくれたのに……。大人になったら私を燃えるゴミで捨てた魔王を火葬したい……。いや、今度は私の玩具にして切り刻みたい」


 狂ってやがる。魔王に対する憎悪がメラメラと燃え上がっている。それでも勇者がいないと冒険に行けないのである。まず、誰かが勇者の登録をしないといくら魔物を倒してもお金が貰えない。誰かが教会に行き換金しないといけないのだ。


 お金の問題だけではない。勇者がいないとステータス画面が表示されない。いつまでも魔物のままだ。現段階で魔王に勝てないなら強くなるしかない。しかし、勇者のパーティにならない限りは経験値が分配されない。いくら雑魚を倒しても魔力も筋力も上がらない。今の自分を超えられない、成長出来ないのだ。


 だからこそ、自分たちに適応できる勇者を待っていた。


 「「「さぁ、冒険の旅へ!!!」」」


 ラピアは不安に思っていた。彼女たちは元は魔物であるが故のハンデを背負っている。しかし、邪悪の女神ラピアの加護を持つアイフルにとっては、彼女たちのような元魔物や魔物の一族を仲間にする方がいいかもしれない。昼夜逆転に難ありと言ったところだが。夜行性パーティというのも面白いかもしれない。


 しかし、そんな捕らぬ狸の皮算用は面白くも何もないのである。だって……。


 「うるさい! うるさい! うるさーい! 全員出て行け!!」


 まず、刃物を持った人形が部屋から蹴飛ばされ、次に狼娘と吸血鬼が首を掴まれて、廊下へ放り投げられる。これ以上の話し合いは無駄だと判断し、ラピアは自ら部屋を出た。無情にもガチャという鍵のかかる音がする。四人とも締め出された形になる。


 「なぁ! 交渉は失敗か!」


 「えーん! まだ駄目だったよー」


 「この私が背後を取られた。背中を蹴られただと……」


 ステータスは表示されなくともレベルは分かる。ラピアが三人の強さを把握する。全員が15~20といった所だ。第一のダンジョン『オフィーリア』に挑むには十分な数値である。


 「女神殿! 彼女はどうして部屋に引き籠っているのですが! 乱心ですかな」


 「めっちゃ怒っていたよー。怖いよー」


 異世界に来て二日。今までの経緯を説明した。そして、アイフルがこの世界の常識に馴れず戸惑い怯え、元の世界に帰れないことに絶望し、冒険者登録をするギルドで騒ぎを起こして、自分の無力さを実感した挙句に引き籠った。ホームシックの原因の部分を念入りに説明する。


 「なるほど。魔法の無い世界で最高スペックの人間を連れてきたのか?」


 「それってそんなに悪いことなのー?」


 「聞いたことがある。前の世界と今の世界の人間的な魅力は反比例するらしい。前の世界で才能に溢れ人間的な魅力の高い人間は、コッチの世界では駄目人間になる」


 そう、逆に前の世界で駄目人間を連れてくれば、コチラの世界では最強の勇者へと変貌するのだ。だから女神たちはこぞって駄目人間を召喚しようとする。


 「ですから、アイフルに勇者としての裁量は見込めません。完璧イケメン勇者様に無双して貰って経験値を恵んで貰おうと思ったらお生憎ですわ。彼女はいわば超高難易度冒険者、人生ハードモードですわ」


 ラピア自身も憂さ晴らしがしたかった。ラピアも軽はずみな考えで大失敗をした。適性のない勇者がここまで使えないとは。だが、ここで中途半端にアイフルを見限って捨てでもしたら神様に目を付けられる。スパイ活動が発覚する可能性がある。あまり表立って大きな行動がとれない。無難に女神としての仕事をするしかない。


 自分自身の失敗に苛立っていた。だから現実をこの三人にもぶつけたかった。だが、この三人。嫌がる素振りなど見せない。むしろ興奮しているように思える。


 「いいね! いいね!」


 「まあ、勇者をやってくれるなら、何でもいいやー」


 「勇者などただの飾り。我々が魔物を殲滅する!」


 どうもこの三人は勇者として適正のないアイフルを拒んでいない。彼女たちもパーティに入れて貰えず苦しい思いをしてきたのだろう。藁にも縋る気持ちなのだ。


 「でも女神殿。彼女は本当に……弱いのか? 吾輩にはそうは見えなかったが……」


 ロリ吸血鬼が腕を組んでそんな言葉を口にした。

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