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第9話 獣人の来訪

 「無事ですか!」


 魔力を感知したのかラピアがドアの前を叩き始めた。焦っているように見える。そんな女神を見て、ロリ吸血鬼が何の気なしにドアを開ける。止めろと言う暇も無かった。ラピアが焦り顔で部屋に飛び込んでくる。


 「無事のようですね。……吸血鬼ですか……」


 「女神……であるようだが。この吾輩と相性が良いとは、そんな女神もいるのだな。くくく、お前たちは本当に異質な存在だな。私と組むに相応しい」


 絶賛している所悪いのだが、彼女は勇者になれず自室で引き籠っているような女だ。魔法に特化した吸血鬼は確かに欲しいが、今のアイフルの実力でスカウト出来るとは思えない。下手に期待をさせて失望されても困るのだが。


 「ラピア、追い返して」


 「女神を召使い扱いされては困ります。不採用ならご自身でそう言えばいいじゃないですか」


 「無能」


 「それ止めてくれません?」


 そろそろ上下関係をはっきりさせた方がいいかもと思う今日この頃であるラピアだが、それよりも吸血鬼の方に気がかりがあった。あの老人が口走っていた不吉な言葉。それがこの現実ならば……。


 「え! 吾輩を仲間にしてくれないの!」


 幼女がなかなかのショックを受けている。漫画チックに白目になって、小刻みに震え始めた。


 「吾輩、なかなかの魔術士だよ! 闇属性と炎属性が得意で! いざとなったら接近戦闘も出来る! 魔物の血を吸えば勝手に回復できるから、回復アイテムいらずだし! その……雇ってくれませんか……」


 彼女もなかなか必死らしい。吸血鬼である以上は昼間の行動は出来ない、彼女の為に昼夜逆転で行動をしなくてはならない。夜になれば強さを増す魔物も多い。さて、どうしたものか。と、そんな考えをする前に確認すべきことがある。


 「あの、ちょっとお聞きしたいことがあるのですが」


 「な、なんだね」


 軽く泣き出しそうな吸血鬼に詰め寄る。シャルハの身長は低いので高い目線から言い放った。


 「もしかして、あなた……『冒険者被害者の会』のメンバーでは?」


 「うぐぅ」


 この反応は、どうやら本当だったらしい。冒険者被害者の会、訳アリ人材にてなかなか冒険者に選んで貰えず、取り残されている異質なメンバー。単純に弱い人材が加盟しているのではなく、優秀な人材でも様々な理由により冒険に連れて行って貰えない。そんな負の感情が集まった連中だ。


 「なるほど。それで? 勇者アイフルの存在をどうやって知りました?」


 「ギルドで受付と喧嘩している勇者がいるって聞いたから。蝙蝠に命令して居場所を突き止めて、夜になったら会いに決ました。まあ陰のオーラが凄いので、間違いないかと」


 あの老人と会話をした後に別の部屋を借りて、負のオーラを調べた。どうやらアイフルにはラピアの『女神の加護』が付与されているらしい。これは特殊な事ではなく、全ての勇者に担当した女神の加護が自動的に付与されるようにプログラムされているようだ。自分の説明文を読まない事をそろそろ悔やんできた。


 ラピアは女神としての素質はあるが、元々は魔王の軍勢であり『邪悪の女神』と呼ばれていた。当然、闇属性の使い手であり、持つ加護もそれに準ずる。これが一つ目の理由。もう一つはアイフルの素質だ。この世界に馴染めない。深く絶望し塞ぎ込んでしまっている。彼女の精神状態が、同じ陰のオーラを持つ生き物を引き付けてしまうのだ。


 「アイフルの存在を他の誰かに話しましたか?」


 「そりゃあもう」


 「まだ……来る!」


 ラピアは息を呑んだ。冷や汗が額から落ちる。辺りを必死に見渡しているとどこからか遠吠えが聞こえた。力強い雄叫び、まるでこの地は縄張りだと言わんばかりの声だ。窓から外を覗くと屋根の上を何者かが飛び回っている。


 「あーこっち、こっちー」


 シャルハが頭の上で手を振って、屋根を飛び回っている黒い物体に呼びかける。黒い物体の目が真っ赤に輝く。月光に照らされて遂に窓の外から侵入して来たのである。それは獣だった。四足歩行の狼のような生き物。


 「獣人族ワーウルフですか」


 「だから何で窓から入ってくるのよ」


 獣人族は月から隠れると少しずつ全身の毛が無くなっていき、床に倒れ込んだ。


 「おーシャルハか。お久しぶりだな」


 寝そべった状態から両手を床につけて、立ち上がるかと思いきや、一気に空中に舞い上がり三回転ほどして着地する。獣耳と尻尾がまだ身体に残っている。紫色の毛並みに可愛らしい顔、そこの吸血鬼よりはマシだがやはり幼女に思える。先ほどまでの大型魔獣の姿が嘘のようだ。


 「おひさーシャルハ。で、えっとコッチが女神様かな。そして貴方が……勇者。あれ、勇者って男しかいないはずだけど」


 「分からぬかエーデル。彼女は外見が女性なだけでちゃんと男だ」


 「っつ!」


 どうやらシャルハはアイフルが実は男性だと気が付いてる。狼女であるエーデルと呼ばれる女性は「そうなのー」という微妙な表情で微笑ましい顔をしていた。


 「エーデル・ヴェアヴォルフ。獣人族だよ。雇ってください!」


 獣に変身能力のある前衛フロント。これも必須な人材だ。しかし……。

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