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バリスタと呼ばれた少女  作者: 風早
バリスタさんと古代遺跡
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第2話

 二日後、目的の遺跡へと向かいました。

 道中は主がうざい以外は問題もなく、あっさりと着くことができました。

 遺跡は地下へと掘られているものです。入り口も開かれています。おや?

「どうした?」

 とりあえず主を無視して入り口付近を調べます。多数の足跡がありますね。

「遺跡ならば、誰かがくることもあるんじゃないか?」

「いや、違うの。この足跡は人間のものでない」

 ゴブリンのようですね。足跡から判断して数十匹はいそうです。

「ふむ、妖魔が巣として利用し始めたようじゃの」

「それはいけない! 近隣の村に被害が出る前に退治しなければ」

 近くの村まで随分と離れてますし大丈夫だとは思いますが、念のために駆除しておいた方がいいでしょうね

 主を入り口で待たせて、足音を殺して中に入ります。

 ふむ、聞いていたとおり入り口で二股に分かれています。右手の大部屋にゴブリンが巣くっているようですね。

 左手の遺跡本体側には足跡がありません。奥には行っていないようです。

 右手の通路を進みます。扉の近くまで来れました。独特の異臭がしますが、これは何の匂いでしょうか。

 ゴブリンは部屋の中で寝ているようです。イビキが聞こえます。

 一先ず外に出て状況を伝えます。

「判った。では逃がすわけにもいかない。私が入り口を塞いでゴブリンを殲滅しよう!」

 ムダにやる気しかありませんね。

「まあ重装備は一人だけじゃし、よかろう。わらわとメイドは後ろでフォローできるようにしておくかの」

 主が扉の前に陣取り、私たちがその後方に付きます。

 流石にゴブリンも異変を感じたようで、起き出したみたいです。

「構わぬ!」

 主が勢いよく扉を開け、そのまま手近にいたゴブリンを槍で突き刺しました。

 急所を貫かれたゴブリンは悲鳴を上げて絶命します。

 中にいるのは30匹ぐらいでしょうか。これくらいなら主一人で余裕ですね。

 扉に殺到するゴブリンを片っ端から突き殺していきます。

 後方にいるリーダー格のゴブリンが呪文を唱え始めました。スペルキャスターのゴブリンがいましたか。

 新品の投げナイフを投げます。一拍遅れて豪速球が飛んでいきました。

 私のナイフがスペルキャスターゴブリンの喉に刺さるのとほぼ同時に、彼女の投げた石がゴブリンの頭を砕きました。

「ふむ。油断大敵じゃな」

 相変わらず非常識な怪力ですね

 様子を見ますが、他にスペルキャスターはいないようです。回復役のいない私たちだとスペルキャスターは優先して叩かなければいけません。

 物理は避ければいいのです。

 しかし、あの豪速球が主の背中に当たっていれば大惨事でしたね。

「しまった。その手があったのじゃ」

 何考えてるんですかあなた。

 有象無象のゴブリンは問題なく主が刈り尽くしました。

「見てくれたか、我が雄志を!」

「相手ゴブリンじゃし」

 威張れることではないですよね。

 念のため、ゴブリンの巣を捜索することになりました。

 死体どかすの面倒です。外におびき出して倒せばよかったです。

「万が一遺跡の奥に向かわれるともっと面倒じゃろう。死体処理ぐらい仕方ないのじゃ」

 そうなんですけどね。

 死体を一度外に出して、部屋の中を探索します。食い残しとかあります。帰りたいです。

 それでもざっと探しましたが、妙なところは見当たりませんでした。問題ないようですね。

「ゴブリンは一匹見れば百匹いるという、近隣の村に警告を出しておくべきだな」

 それもそうです。手配しておきましょう。

 一休みして、いよいよ遺跡探索です。とはいえ、ある程度中身は判っているので楽です。

 左手に入ってすぐの部屋は書庫だったらしいです。置いてあった本は全て持ち帰り済みらしいですが、大変だったでしょう。

 おっと、扉に警報の罠が仕掛けられていますね。

 解除済みのものですが、この手の罠は解除されていても何かの拍子に発動することがあります。

 主に注意を促して中に入ります。彼女? 注意なんて要らないでしょう。

「なんか酷いこと言われてとるのじゃ」

 前情報通り、中は何もありません。棚も持ち出したようです。

 彼女は壁をペタペタ触って調べています。

「ううむ、仕方ないとは言え全て持ち出すとは風情がないことだ」

 遺跡に風情とか浪漫とか要らないです。

 彼女が目的の場所を見つけたらしく、一箇所を集中的に触り始めました。

「ふむ、これじゃな」

 ガツリ、と鈍い音がして壁の一部がへこみました。

 何が起こるかと身構えましたが、何も起こりません。何だったのでしょうか。

「連動式のスイッチらしくての。幾つかの隠されたスイッチを決まった手順で押すと隠し扉が開くらしいのじゃ」

 なんとも面倒な仕掛けですね。見つけられない訳です。

 警報の罠に注意して通路に出ます。関係ない部屋は無視するのでしょうか?

「さっきのゴブリンのようなことがあるやもしれぬし、一応全て見てまわるのじゃ」

 本当に面倒ですね。

 次の部屋は武器庫だったらしいです。朽ちた武器は放置されていますが、他は回収済みです。

 鍵は解除されています。罠もないようですね。

 注意して開けます。部屋に灯りを入れると、影から何かが飛びかかってきました。

 慌てず後ろに跳びます。

 黒い集合体が蠢いています。ナイトストーカーの類いでしょうか。

 間髪入れずに主が槍で突きます。こういうときだけは頼りになりますね。

 数合で霧散しました。

「どこからか入り込んだのか、それとも初めからいて前は気付かれなかったのか、どっちじゃろうな」

 物陰でじっとしてると見落としそうですね。どちらもあり得そうです。

 まだいるかもしれないので慎重に中に入ります。

 灯りを持って四隅を回りましたが、大丈夫そうです。

 部屋から出て次の部屋に向かいます。途中の通路に落とし穴がありました。

 劣化の具合が違うのか、床の色が変わっていますね。

「そこの落とし穴じゃが、落ちんように作動させるのじゃ」

「何かあるのか?」

「落とし穴の底にスイッチがあるのじゃ」

 罠の下にスイッチとか、本末転倒と言いますか、意味なくないですか?

「同じような落とし穴がもう一箇所あっての。そちらと同時に押さなければならんらしい」

 この仕掛けを考えたやつは頭が可笑しいと思います。

 慎重に近寄って罠を作動させます。通路の中心が二つに割れて開きました。

 端を通る分には問題なさそうですね。

 三人で順に端を通っていきます。次の部屋は薬品室ですか。

「その部屋じゃが、わらわが予め身構えて置き、一人が扉を開けたらそのまま攻撃するぞ」

「攻撃ならば私がやりましょう」

「漏れ出した薬品が時を経て雲のようなモンスターになっておっての。武器も効くが、金属を溶かしてくるのじゃ」

 なるほど、彼女の武装は木製です。

「ぬう。ならば仕方ない」

 壁に張り付いて扉に手をかけます。扉の正面で彼女が機械弓を構えました。

 タイミングを合わせて扉を開けた瞬間、轟音を立てて矢が放たれます。

 弓ってこれほど大きな音を立てれるものなんですね。

 直ぐさま扉を閉めます。

 なんてものを撃つんですか! 私に当たったら大変じゃないですか!

「まず当たらんじゃろう」

 彼女は淡々と給弾してます。終わるのを待ってもう一度扉を開けます。

 今度は矢を撃ちません。部屋をのぞき込むと何もいませんが、異臭がします。

 火が付いた松明を部屋に投げ込むと火が消えてしまいました。

「入ったら窒息しそうじゃな。外で時間を潰すとするかの」

 扉を開けたまま外に出て時間を潰します。

 休憩中も主はそわそわしていました。ちょっと我慢が効かなすぎじゃないでしょうか。

 充分な時間が経ったので戻ってもう一度松明を投げ入れます。今度は消えません。

 慎重に入ります。多少匂いますが大丈夫のようです。

 薬品庫の中はボロボロです。長年酸に晒されてせいでしょうか。

 あまり長居したくないのでさっと調査して次へ行きます。

 途中、幾つかの罠を解除しましたが問題なく目的の場所にたどり着きました。

 スイッチを操作するとここの壁が開くそうです。

 準備を万端に整えてスイッチを操作します。がつりと鈍い音がして壁が開きます。

「情報は本当じゃったか」

 中は部屋になっているようです。部屋の両脇に人型の鉄像が置いてあり、中央に台座があります。

 台座には水晶のようなものが置かれています。

 見える範囲に罠はないようなので中に入ります。

 この手の鉄像が動き出すのは定番です。どちらが動き出すのでしょうか。

 注意を払っていると両方が同時に動き出しました。

「アイアンゴーレムか!」

 主が嬉々とゴーレムに攻撃を仕掛けます。もう一体のゴーレムは彼女が抑えにいきました。

 困りました。この手の敵に私は無力なんですよね。

 主は槍で相手の攻撃を捌きつつ、攻撃を仕掛けます。普段は敵を近づけることのない槍も、ゴーレム相手だと力負けするようです。

 彼女はゴーレムの攻撃を盾で受けつつ返す刀で棍棒で殴ってます。よく吹き飛ばされませんね。

 あ、棍棒がへし折れて素手で殴り始めました。彼女は気にせず盾と小手で殴りつけています。

 本当に人間なんでしょうか。

 彼女の方は問題ないようなので主の支援を行います。と言っても私の攻撃ではダメージを与えられません。

 必然的にゴーレムの気を引くように動いて主の手数を増やす方法になります。

 私も無理はしません。どうせダメージは与えられないのです。回避中心で隙ができたら短剣で切りつけます。

 何か彼女の方からすごい音がしました。

 見てみるとゴーレムとがっぷり四つに組み合ってます。何してるんですか彼女は。

 実力さえあれば特殊な攻撃をしてこないゴーレムは問題のある敵ではありません。

 時間は掛かりますが危なげなく撃破できました。

「よし、これで私のことを認めて貰えるのだな!」

 そんな目的もありましたね。忘れてました。

 台座に飾られている水晶を調べます。これを守っていたのでしょうか。

「そんなにすごいものなのか?」

 主が水晶を持ち上げるとゴトン、と部屋中に鈍い音が響きました。

 瞬間、彼女が動きました。

 私と主を掴み上げると即座に部屋の外に投げ捨てました。

 一拍遅れて部屋の扉が閉まります。

「なっ」

 今度は遺跡中から鈍い音が響き渡っています。これはまずいですね。

「早く逃げるのじゃ、こちらはこちらで何とかする」

 壁の向こうから、微かに声が聞こえてきます。

「貴方を置いていけるわけない! 待っていてください」

 主が壁を壊そうと切りつけますが、ビクともしません。仕方ありません。

 壁に向かう主の背後に忍び寄り、後頭部を殴りつけます。

 上手くいきました。主が崩れ落ちます。

 気絶した主を担いで必死に遺跡の外へ出ます。

 かなり重いです。捨て良いですかこれ。

 汗だくになりながら、何とか遺跡に外に出れました。出て様子を伺っていると、遺跡が崩れ落ちました。

 あ、主が持ってた水晶もあの中です。まあ、別に良いですが。

 主が起きるまで介抱します。

 起きたら取り乱して遺跡を掘り出そうとしたのでまた止めます。

 人の手で掘り出せる訳ないでしょう。こんなもの。

「し、しかしっ」

 そもそも素人の主が掘り返そうとして、更に崩したらどうするのですか。今度こそ死ぬかも知れませんよ。

「ぐっ」

 一晩ここで待って、街に帰りましょう。街で救助を手配した方が良いです。

「……判った。それと、無理矢理連れ出してくれてありがとう」

 素直になられると、それはそれで気味が悪いです。


 さて、それからの話をしましょう。

 十字の街に戻って、遺跡調査の手配をしましたが、崩れた遺跡を掘り出すのは不可能とのことでした。

 それでも希望を持って一ヶ月間滞在しましたが、彼女は戻ってきませんでした。

 主はとち狂って妙な発言をすることもありますが、貴族としての義務は判っています。

 消沈する主を促して国に帰りました。

 すぐに見合いはできないと思いますが、半年も時間を置けば大丈夫でしょう。

 まったく、彼女は上手くやったものです。

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