第1話
男は戦士だった。
しかし、才能はなかった。
男が持っていたのは愚直に打ち込み続ける気概と悠久の時間、そして多少の運だ。
他人が1日で習得する技術を7日かけて習得した。
他人との試合に負け続けても戦士であり続けた。
100年間片時も休まず戦士であり続けた。
そして大陸全土を巻き込む大きな戦いが始まった。
運がよかったのだ。戦いの兆しは十数年あった。
もしも戦いが始まるのが数年早かったら、男は死んでいただろう。
男は一流の戦士として戦いに参加し、生き残った。
戦いから帰ると、里では戦士長と呼ばれるようになっていた。
特別感情は動かなかったが、男が戦士として鍛えていても誰も文句を言わなくなったのは良かった。
それから何年も鍛え続けた。
男に触発されたのか、里から何人か戦士が生まれた。
何人かは他にやることを見つけて戦士であることをやめた。男を越えた者もいたが、里から出て行き戻らなかった。
それでも男は戦士であり続けた。
何故、男は戦士であったのだろうか。
ただ初めに始めたことが戦士だっただけだ。もしも他のことをやっていれば、それを続けていた。
齢が400を越えた頃、世界でも屈指の戦士になっていた。
そしてもう一度戦いがあった。
今度は男の里は関係のない戦いだったが、男は大きな戦いが始まったことを聞くと里を出て戦いにいった。
里を出る際に戦士長でなくなったが、構わなかった。戦いに行かない戦士があろうか。
この戦いは、前の戦いよりも辛いものだった。
男は戦士として戦い、勝ち、負けた。
誰かを助けた戦いがあった。誰かに助けられた戦いがあった。
誰かを虐げる戦いがあった。誰かが虐げられた戦いがあった。
男は一人で戦った。誰かと一緒に戦った。何度も重傷を負い、それでも戦士であり続けた。
いつしか、男は英雄と呼ばれた。
男がこの戦いに勝ったのか、負けたのか、判らなかった。
だが男は生き延びた。
生き延びたことが幸運なのか判らない。これからも男は戦士であり続けるだろう。




