皆さんは知っているだろうか?
「シンクホール」という現象を。
突然地面が陥没し、地表に大きな円形の穴があく現象。
主に、地盤の侵食などにより地中の空洞化が進んだ結果引き起こされると考えられている。酸性雨などが地下に浸透すると、酸に溶けやすい性質の岩盤が溶かし流され、結果として地下に巨大な空洞ができる。ある程度空洞が大きくなると、地表を支えることができなくなって崩落する。……と説明されるそれ。
凄いところでは100m以上の深さもある。
たまたま寝ないで起きていた社会の授業でたまたま先生が話たのは今日の話。私、夏目コウはちょっと授業態度が悪い…といってもよく眠るだけの、普通で他の誰とも変わらない女子高生。つまり今をときめく華のJKである。更に言えば、黒髪黒目でちょこっと歴史とか不思議現象とか好きなだけで成績は平均辺りで運動は苦手のただの一般人である。
何故、いまここでそんな事を言うのか。
それは、いま、私の目の前の道がどんどんと下にいっているからである。それも円型に。
まあ、丸の形もくっきり分かっていたし、目の前に不思議現象と呼ばれるのを見えるなんてラッキーと思っていた。
それは私だけじゃなくて、野次馬で来た人達や私と同じように鉢合わせた人もだろう。
何人かは穴が出来ていくのを上から覗いたりと、一歩間違えたら落ちそうな場所にいる。時期に来るであろう警察に注意されると思うから大丈夫だと思うけれど。
そんな私も目の前で鉢合わせた事により、穴とだいぶ近いところにいる。
明日、社会の先生に教えたら悔しがるんだろうなとか、家族に自慢してやろうとか考えて危険だから戻ろうとしたその時、突然浮遊感を感じる。
「…え、」
「きゃあ!!!私の……が!!」
見知らぬ女性が声を上げる。おいおい、ぶつかったほうを心配しろよとか謝れよ言いたかったけれど、直ぐに自分が穴に落ちた事に気付く。
底の見えない、穴。落ちたら命は保証できないんだろうなとか楽観的に思っていた自分が呑気すぎて辛い。
きっと、それは一瞬の出来事なのだろう。けれど、私にとっては全てがスローモーションに見えた。
女性が手を伸ばす先にある存在。
気付いたら両手で抱き締めて、私は落ちていく。
この先にあるのは死だけなはずなのに、手のなかにある存在を守る為に抱き締めて。