第6話 夏期特別講習
中間試験が終わった後、俺は日々の勉強の他に、月に一度、第1日曜日に、例の受験問題集を1年分、模擬試験のつもりで試験時間通りに挑戦することにした。
さすがに学校の中間試験とは違い、初回はさんざんで、合計点400点満のうち、36%の145点しか取れなかった。因みに60パーセントから65パーセント合計240点から260点がその高校の合格ラインと言われている。受験当日、合格ラインに達していればいいだけなのでめげる必要はないし、逆に闘志がわいてきた。
そんな感じで1学期も過ぎていき6月も後半に入ったある日。
うちでとっている新聞に駅前の結構有名な進学塾の夏休み特別講習と高校入試摸擬試験の募集のチラシが入っていた。受験はよほどの秀才でもない限り1点2点を争うことになる。そういったところで役立つのは受験テクニックだと素人の俺でも思っている。一応素人なりの方法で今までやってきたが、さらに勉強法なり受験への心構えが磨かれれば、合格の可能性が高まるのは確かだろう。
そういうことなので、母さんに、
「夏休み、塾の特別講習を受けたいんだけどいいかな?」
そう言ったところ、
「もちろんいいけど、頑張りすぎて体を壊さないでよ。でも裕ちゃんは最近は規則正しく生活してるし自分で自分のことを考えるようになって、裕ちゃん大人になったわね。母さん見直したわ」
夏期講習はすんなり許可され、受講料を渡された。その特別講習を受けると模擬試験をデフォルトで受験できるということだったので、一応は無料サービスということになっている。
次の日、学校から帰って、昨日母さんから渡された受講料を持って駅前のその進学塾に行き、受付で夏季特別講習の申し込みをしておいた。その際、クラス分けをするための試験が講習の夏休みが始まってすぐの日曜にあるようだ。その試験を受けなけば、成績順で分けられる最低クラスに振り分けられるので必ずクラス分け試験を受けるように受付の事務の人に言われた。
これで、一安心。俺は、それからも勉強のペースを変えることなく日々を過ごしていき、1学期の期末試験を迎えた。
今回の試験も中間試験の時と同様主力5教科は楽勝だった。他の教科も今回は余裕があったため一応試験前に目を通していたおかげで、それなりに問題を解くことができた。
試験の二日後。終業式の前日、答案と成績票が帰ってきた。
今回の期末試験では、数学と理科が満点の100点、そして英語が95点、国語が90点に社会が92点だった。かなりいい点数ではあるが所詮は進学校でもないうちの中学の試験問題だ。本来なら全て100点でもいいくらいの簡単な問題だった。まだまだ上を目指す必要がある。
今回の期末試験は京子はあまりいい成績ではなかったようだ。生徒会が忙しくて勉強がおろそかになったのかもしれないが、あんな意味のない生徒会のために成績が落ちてしまうことを本人は何と思っているのかすこし興味がある。俺から見て意味のない生徒会だが本人が納得しているのならそれはそれでいいことなのだろうか。
俺は俺でわが道を行く。そう決めている。
翌日。終業式の後簡単なホームルームで夏休みの心得のようなものを担任の先生が話して解散となり、学校は夏休みに突入した。俺以外の生徒たちは学校帰りにカラオケに行こうとか、休み中一緒にどこそこにいこうとかと話をしていたが、俺はその日も速攻で教室を後にして受験勉強をするため自宅に急いだ。
夏休みに入り、3日が過ぎた。今日は進学塾のクラス分け試験の日だ。
試験場は塾の教室で人数がそれなりにいた関係で教室が3つくらい試験に使われているようで、試験場に入った順で試験会場の教室が割り振られた。俺は2番目の教室で、席も真ん中あたりになった。
机の上に筆記用具を出して試験の準備を終え、周りを見回したら、教室の前の方に京子と黒ぶち眼鏡が仲良く並んで座っていた。二人が俺のことを気づかないようにと思いながら、椅子に座っていた。
試験は5科目で各1時間、午前中3つに午後から2つ。
試験の合間はそれぞれ10分の休憩と、昼は1時間の休憩がある。
最初の英語の試験が終わった後、一度席を立って教室を出ていった京子と黒ぶち眼鏡が、教室に戻ってきた。そこで俺にとっては運悪く京子に見つかってしまった。
「あら、祐介じゃない。あなたもここの夏期講習受けるんだ。知らなかった。ここはちゃんとした進学塾だから祐介には一番上のクラスに入ることは無理でしょうけれど、祐介も私たちと同じクラスになれたらいいわよね」
無理だと思うなら『一緒のクラスになればいい』とか言う必要ないだろ! というか、こいつは自分たちが一番上のクラスになると決めてかかっているが、どうなるか分からないだろ!
黒ぶち眼鏡は黙って口元をゆがめて俺の方を見ていた。好きにしてくれ。
その後、お互い話すこともなく午前の試験が終了した。さすがにうちの中学の期末試験と違って、今の俺ではどうにもならないような問題もあったが、それでもおおむねの問題を解くことができた。以前の俺なら半分もできなかったろうが、少なくとも8割は取れた自信がある。とはいえ、ここは京子の言ってた通りちゃんとした進学塾だ。一番いいクラスに入れるかどうかの自信はない。
昼休みの休憩時間、俺はいちど塾を出て、近くのパン屋で調理パンとコーヒー牛乳を買って塾の教室に戻り、机でそれを食べた。母さんもよく買ってくるパン屋の調理パンだったがかなり美味しい。値段もコンビニの調理パンより高めだと思う。
午後からの試験も終えて、俺はさっさと家に帰り、勉強を再開した。




