悲鳴
その日。
魔法陣の説明をするグレイシア様が魔法陣に魔力を流した時、ヨシュア様がその魔力に触れたと聞く。
その時に、王妃様が叫ばれた。
「魔女の魔力に触れてはなりません!」
立ち会っていた陛下、宰相、将軍が揃って驚き、振り乱す王妃を取り押さえたのは陛下ではなく、ラディオス様だったと言う。
グレイシア様は卓から離れ、恭順を示すように膝をつかれた。
「昔から、魅了の魔法を操って居るのです。未来のあるお前を、魔女に差し出すわけにはいきません!」
普段穏やかに微笑まれる王妃様が、壊れてしまわれたようだったと、父は語った。
「母上。グレイシア様は魔法陣をもって王国を守られた。王家の一員として、彼女を謗る言葉を投げるなどと、あってはならないことです」
ヨシュア様が、跪くグレイシア様の手を取り立つように促す。
「触れてはなりません!貴方にはモリーが居るでしょう?!」
「モリーとグレイシア様は違うのです」
ヨシュア様は語られる。
「私はこの方を知りたい。それは、変えようがない。モリーにも話しております」
「ヨシュア!!!」
「プリシア。グレイシアは兄が認めた魔術師だ。兄の魔力を、お前には感じ取ることができないかもしれないが、国の宝と言って良い存在だ」
「陛下?!陛下まで、魔女に魅了されてしまわれたのですか?」
震えた声は、悲鳴に近い。
「私を選ばれたのは、陛下ではないのですか?」
「プリシア、落ち着きなさい。私は魅了などされていない。ここに兄の魔力を感じるだけだ。その魔力を大切に思うだけだ。そしてまた、この国は守られたのだ。彼女が作った魔法陣に」
グレイシア様を擁護するヨシュア様に、もしくは、グレイシアにだったのかもしれない。王妃様が掴み掛かろうとなされた。
「いけません」
ヨシュア様のそばで、グレイシア様がつぶやかれた。彼女が僅かに指を動かすと、描かれた魔法陣は広がり、王妃様を包んだ。
魔法の光を目にした王妃は、何か叫ぶ前に、気を失ったように眠り落ちたと言う。




