祝勝会
新しい使役の魔法陣が功を奏したと言われている。
それから程なくして、隣国フェンスベリアとの戦争に、王国の勝利という望ましい形で終止符が打たれた。
ここから先は、フェンスベリアの支配層の残党処理に入ると、ドリオレント陛下自ら国民に宣言された。
戦勝祝賀パーティーに、筆頭魔術師の姿はなかった。グレイシアの代理として、弟子の若い魔術師が参加していた。出自は子爵家だというが、保有する魔力が大きい。高位貴族相手に怯む様子もなくまっすぐに背を伸ばし、騎士たちと会話している。
モリーはヨシュア様にエスコートされてはいたが、ヨシュア様の目がグレイシア様を探している事に気が付かずにはいられなかった。
「彼女はこの度の戦の功労者に違いないのに」
グレイシア様は祝勝会に参加されていないようだ。
ヨシュア様は、ご自分の気持ちを隠す心づもりは全く無いようだ。
アルドレット将軍を見つけるとモリーを置いて行ってしまう。
モリーがヨシュア様について行っても仕方がない。
王家に連なるものとしての立ち振る舞いに、まだ自信がないモリーはモード公爵夫人を探す。
今年65歳になる夫人は、しっかりと背を伸ばし、用意された椅子に腰掛けている。
軍人らしい男性と話をしていたが、モリーに気がつくと椅子をすすめてくれ、その男性に紹介してくださる。
「ラディオス様。こちらはヨシュア殿下の婚約者でいらっしゃるサンゼット侯爵家のご令嬢、モリー様です」
モリーはカーテシーで挨拶をする。
「モリー様。ラディオス様はノズル辺境伯のご嫡男であられる王国副将軍です」
ラディオス様は胸に手を当て、優雅にお辞儀をする。
「宰相殿の自慢のご息女にこうしてお会いできるとは。お目にかかれて光栄です、モリー様」
ラディオス様は、どこか、ヨシュア様に似ていらっしゃる…そして思い当たる。
「王妃様の、お兄様でいらっしゃいますね」
モード公爵夫人の微笑みが、正解であると物語っている。
「貴女のような娘が出来て、妹も幸せでしょう。フェンスベリアの憂いも除かれ、王国は益々繁栄して行く」
穏やかな声が、語る。
「これからは貴女方の時代だ。課題も多くあるだろうが、ヨシュア殿下を支えて行ってほしい」
モリーは改めて姿勢を正す。
それを見て、ラディオス様は微笑んだ。
「殿下は戦場においても有能だったが、それ故に無理をしかねない。貴女が殿下を引き受けてくださるなら、妹も安心だろう」
「戦場では、ヨシュア様をお守りいただいていたのですね。感謝いたします」
改めて、お辞儀をする。
「私は殿下を守ったのかもしれないが、殿下は王国を守り抜いたよ。アルドレット様も殿下の功績を認めている」
ヨシュア殿下は、今日、褒賞を賜るだろう。




