表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界が答えを求めた日。私は、語らなかった。  作者: 冴統 亜弥惟智


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/23

第19話:義務

英雄探しは、犯人探しに変わった。

犯人探しは、責任論へ変わる。

テレビでは連日、同じ映像が流れている。

水没する避難所。

救助打ち切り。

泣き叫ぶ声。

司会者「止められた可能性はあったのでしょうか」

専門家「自然相殺の可能性が……」

曖昧な説明に、視聴者が苛立つ。

SNSが荒れる。

《止められたなら言え》

《沈黙は無責任》

《説明しろ》

トレンド一位。

《#知っていたのか》

討論番組。

コメンテーターA「予兆を把握していたなら共有すべきです」

コメンテーターB「しかし、仮説段階での義務化は研究を――」

コメンテーターB、炎上。

《慎重派=人命軽視》

《被災者の前で言えるのか》

《黙れ》

家族の写真が拡散される。

住所が特定される。

コメンテーターB、番組降板。

議論は終わる。

残ったのは、怒りだけ。

そして、矛先は一人に向かう。

ワイドショー。

画面いっぱいに映る、研究所の外観。

テロップ。

《水位停止直前、集中アクセスしていた研究員》

みことの顔写真。

入社式の集合写真から切り抜かれたもの。

ナレーション「東日本出身。父親は沿岸勤務で現在も行方不明――」

家族情報が読み上げられる。

母の名前。

自宅の最寄り駅。

「地元では優秀な娘として知られていた」

近所の人のコメント。

プライバシーが、剥がれていく。

SNS。

《父が東だから操作した?》

《身内優先?》

《感情で動かしたのか》

研究室の前に中継車が並ぶ。

レンズが、玄関を睨む。

その頃。

世論の圧力を受ける形で、国会に法案が提出される。

《災害予測情報開示義務法案》

アナウンサー「災害の予兆や制御可能性を知り得た者に、報告義務を課す法案です」

スタジオの空気は肯定的だ。

コメント欄。

《当然だ》

《隠したら処罰でいい》

《もう黙らせるな》

“知り得た者”。

その言葉が、みことに重なる。

研究室。

千里「……ここまでやる?」

紗奈「人は怖いとき、誰かの物語にしたがる」

テレビの街頭インタビュー。

「説明しないのは怪しい」

「知ってるなら言うべき」

“怪しい”。

その言葉が、軽く使われる。

みことは、黙る。

報告義務。

それはまだ、予兆の共有の話だ。

だが。

共有は、決定を生む。

決定は、選別を生む。

まだ誰もそこまで言っていない。

だが、空気は急いでいる。

白い光が脳裏をよぎる。

音のない崩壊。

今は、音のある群衆。

世界は、理由を欲している。

そのためなら、個人を剥がす。

みことは、黙る。

その沈黙が、

いま最も攻撃されやすいものになっている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ