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勇者召喚からハブられた俺は、女神様の脱ぎたて神装(パンツ)で異世界を生き抜く ~明日を笑顔でいるために~  作者: 藤塚 まあき
第二章 ママに私が生まれた日の空の色を聞いたら、「おじいちゃんの頭と同じだよ」と言われた
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第13話 容疑者クロエ・ユキテル

「――いやぁ、以前俺の母さんが言ってたんだけどさ。『あんたが生まれた日は、おじいちゃんの頭のようにピカピカの空模様だったのよ』って。自分の父親をナチュラルにディスってんだよ。仲良いよなホント。

 だからこうして雲一つないピカピカの天気を見る度、俺はじいちゃんのハゲ頭を思い出して、申し訳なくもつい、ニヤついちゃうんだよな」


 一通りブランさんから出題されたテストを終えた俺は、他愛のない雑談を交わしながら城郭都市に向けて歩いている。


 時刻は昼を過ぎたようで、これがもし学校なら、一番眠くなる時間だ。


 昼食は森の中で倒した植物型の魔物の実を簡単に調理したもので、ブランさんの知識通りなら、安全性は保障されている。

 ……あとでお腹壊したりしないよな?


「……しかしクロエくん。さきほどの勉強会の成果だが……」


 彼女は何か言いたげにこちらを見る。

 俺はフッと笑うと、じいちゃんのハゲ頭みたいな空を遠く見つめた。


「へっ……褒めても何もでないぜ。ブランさん。何せ俺は、80点の男――」

「……500点満点中の80点でよくイキれたものだ」


 ジト目でこちらを見て、ため息をひとつ。


 ……いやしょうがないだろ。まさか500問も出題されるとか思わないって。

 むしろ80問正解できた事を褒めてくれ!


「これでも問題はかなり絞ったのだが……」

「500問も出しておきながらッ!?」


 ブランさんはけっこうスパルタだ。マジで。


「……まあ、クロエくん。とりあえず今回出題した範囲の中で特に覚えていて欲しいのは、『魔法の行使には魔力と精神力』が必要だと言う話だ」

「魔力と精神力ねぇ……」


 俺はまだ魔法を覚えていないが、これから先、必要になるかもしれない知識だ。

 確かにブランさんの話は為になる。くっっっっっそ長いけど。


「魔法を連続して行使していくと、精神は確実に疲弊していく。つまり魔法の使い手は魔力だけではなく、精神も鍛えねばならないという訳だ。これはスキルにおいても当てはまる話なので、つまるところクロエくんは精神的修行……すなわち私と一緒に地獄の筋トレ生活24時を始めてみないかという話へと繋がる」

「え。この作品修行パートあるのかよ」


 そもそも地獄の筋トレ生活24時って何だ。

 俺に何をやらせるつもりなんだブランさんは。


 ……このままだとまた妙な展開が始まりそうなので、俺はさりげなく話題を逸らすことに。


「そういや魔法を使えば精神が疲弊するって言ったけどさ、はじめから疲弊するような精神がない存在……例えば人形とか無機物系の魔物みたいなのはどうなんだ? やっぱり魔法を使えないもんなのかな?」


 半分気になっていた事もふまえて質問すると……途端にブランさんの綺麗な相貌がジト目に変わる。


「……クロエくん。やっぱり君は私の話を適当に聞き流していたな? それに関しては既に説明しているぞ?」


 ……やっべ。話を逸らすつもりが墓穴を掘っちまった。


「自力でその着眼点を得られたのは褒めていいかもしれないが……」

「……いやいや! ていうか500問分も覚えてられる訳ないだろ! 俺じゃなくても聞き流すわあんなの!」

「……しかし、マリィはともかく。我が盟友のローズベルは嬉々として私の出す出題に答えながら、問題の意図とそれら知識の由来まで語りだし、互いに知見を広める有意義な時間を過ごせたものなんだが……」


 おっと、ブランさんの同類がいたのかよ。

 同レベルのバケモンがすぐ近くにいたなら、自分がバケモンだという自覚が生まれないのも仕方ないのか……。


 ……って、結局迷惑を被るのは俺じゃん!


「……さて。では気を取り直して、歩きながらでもできる筋トレを紹介しようか。これは生前、ローズベルと共に考案した修行なのだがな……」

「あー。もーまちがあんなちかくにあるぞー。はやくいこうぜブランさーん」


 俺は棒読みで駆けだすと、得体の知れない筋トレから逃れるべく、一直線に街の門へと向かっていった。





「……ん? なんか騒がしいな……」


 街の入り口近くに到着すると、門の付近では衛兵らしき鎧姿の人たちが大勢集まっている。


「――クロエくん! まったく、急に駆け出してどうしたんだ。昼間の街道だからよかったものの、魔物や野盗を考えれば軽率に一人で行動するのは危ないと……」


 遅れてやって来たブランさんも、入り口の様子を見て怪訝そうに立ち止まる。


「なんかあったのかな?」

「見た所、魔物の襲撃等ではないようだが……」


 入り口付近で立ち止まる俺たちに気づいたのか、衛兵の一人が息を切らして駆け寄ってきた。


「――街への滞在希望者でしょうか? 申し訳ありません。現在、少々立て込んでおりまして、検問を強化しております」

「検問?」

「それは物騒だな。何か事件でもあったのか?」


 顎に手をやるブランさん。

 そこへ、もう一人衛兵がやって来る。


「実はこのような予告状が各所でバラまかれておりまして……」


 もう一人やって来た衛兵さんが俺たちの前に広げたのは、何やら粗雑な文字で記された一枚の羊皮紙――。


「うわ、きったねぇ字。まるで俺の書いた英文みたいだな」

「……それ、クロエくんは貶す資格があるのか?」


 なんてやり取りを交わしつつ、そこに記された文字をブランさんと共に読み上げる。


「えーと、何々……? こよい、スコーリオ地方の……」



『――今宵、スコーリオ地方の至宝と称される、シャイン家の一人娘。

 クリスティア・シャイン嬢のおパンツを頂きに参上するでパンツ。

 ――下着泥棒、リュパンツ・ザ・サートル より――

(→ここに変な似顔絵)』



「…………」

「………………」


 その場に沈黙が流れる。

 思わず衛兵さんの方を見るが、全員が気まずそうに目を逸らした。


 ……なんだこの……なに?

 そこはかとなく漂う、何かの作品のパチモン臭のする予告状は――。


「……なんだこれは。まるでクロエくんが書いたようなひどい内容だな」

「えっ。俺、ブランさんにこんな奴だと思われてんの?」


 ボソっと呟いたブランさんに突っ込んだ瞬間。



 ――リュパンツ パ~ンツ ♪



 予告状から謎の擬音が、仕込まれた魔法文字によって奏でられたようだ。

 この場の空気がさらに気まずくなったのを感じる。


 ……ブランさんは俺の肩を無言で引き寄せ、ひそひそとジト目で囁いた。


「……クロエくん。怒らないから正直に言いなさい。実はこれをバラまいた犯人はクロエくんなんだろう?」

「できるわけないだろ!? 俺、この街に来たこともねぇよ!」


 ますます疑いの眼差しを強めるブランさんは置いといて。


「……この予告状通りなら、リュパンツなんちゃらってのが、今晩下着泥棒に現れるって事なんですね」


 衛兵さんに問うと、兜の下で真面目そうな顔を引き締めて頷いた。


「予告状で指名されたクリスティア様は、このスコーリオ地方を統治されている領主様――シャイン伯爵の一人娘であらせられます。そんな訳で、もしもの事があっては我々も面子が立たず、冒険者ギルドにも緊急依頼を要請し、こうして警備を強化しているのです」


 なるほど。

 確かに領主様の娘に下着泥棒がやって来ると考えれば、警備を強化するのは当然か。


 ……というか中世ファンタジー風の封健社会で貴族の下着を狙うとか、その泥棒も勇気あるよな。

 捕まればただじゃ済まないだろ、それ。


「……という訳でして、我々はこの街の出入する人間を監視しているのです」

「本当は予告の時刻まで封鎖するのが一番なのですが、翌日からは年に数度行われるエーテル教の祭日週間であり、近隣の町村から様々な信徒たちが集うため、門を閉じる事はできないのです」

「ですので皆様にはご協力をお願いしたく――疑う訳ではないのですが、念のためステータスカードの提示をお願いします。こちらで入手した、下着泥棒の所有スキルの情報との関連性を調べねばなりませんので」


 そう言って、申し訳なさそうに頭を下げる衛兵の皆さん。

 ……何と言うか、大変で気の毒な話だ。

 よりによって宗教のお祭りの前夜に泥棒がやって来るなんてな。


 俺は学校では問題児としての括りに入れられてはいるが、別に好き好んで問題を起こしているわけではない。ただ社会という枷が俺を縛ろうとするのに反発しているだけだ。うん。


 ……なので、目の前で起こっている問題を他人事だと切り捨てるような事はしない。

 できる範囲での協力はするつもりだ。

 それこそ、『明日を笑顔でいるために』な。


「任せてください! いくらでも協力しますよ! ところでそのクリスティア様って、どれほどの美人さんですか?」

「……クロエくん。今の自分の顔を湖面で確認して来たらどうだ」


 ブランさんが呆れ顔で言ってくるが、きっと勇気に満ち溢れた、心根の綺麗な少年の姿が映る事だろう。

 今の俺に下心など存在しない。

 あるのは純粋な曇りなき“正義”という二文字のみ!


「……なあブランさん。俺考えたんだけどさ、その下着泥棒ってのはどんな奴か分からない以上、事前に防ぐのは難しいと思うんだ。だからあえてお嬢様の下着を盗ませ、その瞬間に捕まえるんだ。そして俺はお嬢様の下着を手に取り、直に手渡しで返却する。良い作戦じゃないか?」

「ああ。クロエくんがわざわざ手渡しで返却する役を負う必要性が皆無な事以外は無難な作戦だな」


 どうやらブランさんには、俺がお嬢様のパンツを手に取ってみたいと言う邪な想いがあるように見えているらしい。

 やれやれ。

 どうやら俺たちはまだ、十分な信頼関係を築けていないようだぜ。


「という訳で、俺たちも可能な限り、下着泥棒退治に協力しますよ」

「……まあ。動機はどうあれ、人の為に動くのは良い事だ。無論、私はクロエくんの“力”としてこの雷霆の剣を振るおう。

 ……そして妙な事をすればいつでもげんこつで止めるからな」


 ボソっとにこやかな顔でげんこつを震わせるブランさんは置いといて。

 協力を申し出た俺たちに対し、衛兵さんは明るい顔を見せる。


「おお! ありがとうございます。冒険者ギルドへ緊急依頼を要請したとはいえ、人手はいくらでも欲しい状況です。そちらの女性は相当の手練れとお見受けしました。黒髪の君は…………まあ、うん。なんかガッツとかありそうだし、たぶんきっとなにかやってくれるんじゃないでしょうか。はい」


 途端に俺だけ、評価ポイントに困った実況解説のアナウンサーみたいな反応になったが、心の広い俺はその程度では気にしない。


「……しかしまずはあなた方の素性を知らねば始まりませんので、重ねて申し訳ありませんが、ステータスカードのご提示をお願い致します」


 おっと、そうだった。

 向こうからすれば、今の俺たちはまだ下着泥棒と一緒に戦ってもいい人間か分からないもんな。


 俺は懐からステータスカードを取り出し、衛兵の一人へ手渡した。


「拝見させて頂きます。――クロエ・ユキテル様、ですね。クラスは魔物使い。……では、そちらの騎士様は――」

「見ての通りデュラハンだ。彼のテイムモンスターで間違いはない」


 マントを緩めて、首元の黒い炎を見せながらブランさんは答える。

 俺も念のため、左手の薄れた契約紋を見せる。

 今は完全なテイム状態ではないが、こうして証明するくらいはできるようだ。


「そうですか。街には魔物除けの結界が常に張られておりますので、通常の魔物は出入りできないのですが、魔物使いのテイム下にあるのなら問題ありません。

 契約紋を感知して結界が緩みますので」


 ――おお!

 見た目じゃ分からなかったが、この街は結界で覆われていたのか。

 テイムモンスターは通れるように区別している辺り、けっこうハイテクそうだ。


「――では、ステータス上は問題が無さそうですので、こちらをお返しします」


 ステータスカードを返却してもらうと、俺たちは衛兵さんに促され、街の門を通らせてもらう。


「魔物除けの結界……今の時代はそんな便利なものがあるんだな。私の時代ではいつ魔物に攻め込まれてもいいように地下からの脱出口が隠されていたが、今の時代は必要なさそうだ」


 そうやって感慨深そうに呟きながら、ブランさんは俺に続く形で街の門をくぐり抜けて――、


「いたっ」


 ブランさんの身体が結界に弾かれた。


「…………」


 ……あれ? おかしいな。

 契約紋を感知して結界が緩むんじゃなかったのか?


「…………と、通れない……」


 ブランさんは、にこやかな顔に大量の汗を浮かべながら、見えない壁に阻まれた両手をグイグイと押している。

 足が地面にめり込むくらい力づくで進もうとしても、結界がブランさんを通す気配は一向にない。魔物除けの結界の効力は完璧ってことか。


 ……そんなテイムモンスターの痴態を眺めながら、衛兵の一人は疑いの眼差しを俺に向けた。


「……テイムされていたハズでは?」

「そ、そんなはずは……。……ブランさん! もう一回テイムだ!」

「あ、ああ!」

「【モンスターテイム】!」


 慌ててブランさんを再テイムし、彼女の首元の黒い炎が白銀に転じる。

 ブランさんは恐る恐る手を伸ばし――今度は無事に結界を通過できたようだ。


「ははぁ、なるほど。テイム状態が中途半端だと通れないんだな」


 ……これ、一々テイムし直さないと街を出入りできないってことか。

 これも俺のレベルが低いせいだからなのか? メンドクサイ設定だなぁ。


「ともかく、今度は入れたな。いやー、よかった」

「…………」

「…………」

「…………」


 ……よくない感じですね、これ。

 衛兵さん方の目が怖い。

 明らかに怪しい人物へ向ける眼だ。


「……えーと、そのぅ」


「――いえ失礼。取り乱してしまいました。自身の力量以上の魔物と友好関係を結び、満足なテイムをできないまでも行動を共にするケースは前例があったはず。非常に珍しい事例ですので、こうして目にするのは初めてですが……」


 そう言いながら――すすすっと、俺たちを包囲するように詰め寄ってきた。

 やっぱりよくない感じですか、これ。


「……一応、持ち物検査をしてもよろしいですか?」

「どうぞどうぞ!」


 別に俺は犯人でもなんでもないし、見られて困るものなんて何もないもんな。

 その程度で疑いが晴れるなら安いもんだ。

 俺は同意を求めるようにブランさんの方へ振り向く。


「なあ、ブランさ…………汗すごッ!?」

「くっ……くくくクロエくん? ちゃんと考えているんだろうなっ?」

「な、なにを……?」


 ブランさんはまるで、俺たちの所持品に見られて困る物があるかのように、ものすごくぎこちない笑顔で取り乱している。


 ……そんなこと言われても、俺たちが持ってるのは道中で手に入れた魔物の素材や薬草・キノコ。

 それと俺が元から持ってるスマホやら花柄のメモやら女神様のパンツやら――、あ。


「おい! なんだこの女性モノの下着は!?」

「あっ」


 下着泥棒が騒がせている街で、女性モノの下着を持ち歩いている男がいれば。

 当然、疑いはそいつにかかる訳でして――、






 ――〇月×日。異世界・スコーリオ地方のとある街の入り口。

 容疑者クロエ・ユキテル。並びにテイムモンスターの女デュラハン。

 下着泥棒の疑いで確保。


【本日の更新(3/3)】

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