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006

翌朝、ニコは妙に緊張した気分で目を覚ました。


昨日、彼はレイルを選んだ――神の言葉通り「一番変な奴」を。今日は、本当の意味での初めての魔法の授業だ。


アレックスは仕事に行く前に彼を呼び止めた。


「ニコ、今週は父さんが片付けなきゃいけない仕事がたくさんある。お前は先に魔法を学べ。来週、父さんが剣術を教える。」


ニコはうなずいた。


「はい。」


アレックスは息子を見つめ、目を少し細めた。


「お前の魔法はかなり苦手だと父さんは知っている。だからまずは魔法に集中してほしい。」


ニコは瞬いた。


「苦手…ですか?」


彼は心の中で思った:


*「俺が魔法苦手なのか? まさかこの身体、極端に偏ってるのか? 魔法は全然ダメで、剣術だけは得意とか?」*


しかし彼はそれ以上尋ねず、ただ父に挨拶して訓練場へ向かった。


---


レイルは既に待っていた。


昨日のような気まずそうな外見は相変わらずだが、今日は少し違う雰囲気があった――おそらく、これがこの場所での彼の最初の「仕事」だからだろう。


「あ…ああ、ニコ。」


「はい、先生!」


レイルはしばらくニコを見つめ、それからため息をついた。


「本当に、なぜ私を選んだのか理解できない。」


ニコは黙っていた。


「しかし…」レイルは言葉を濁した。「私は今、金に困っている。だからこの仕事が必要だ。正直言うと、長くここにいるつもりはない。だが、君の父さんの権力に少し頼って仕事を得られれば…」


ニコはぽかんとした。


「父さんの権力?」


彼は何度も瞬いた。


*「父さんに権力なんてあるのか? エリク叔父さんはどんな役職なんだっけ…最初はただの兵士かと思ってたけど、結構な地位なのかも…」*


レイルは奇妙な目でニコを見た。まるで *「このガキ、自分の家族のこと何も知らないのか?」* と自問しているかのように。


しかし彼は尋ねなかった。代わりに袖をまくった。


「よし、始めよう。君のレベルはどのくらいだ?」


ニコは正直に答えた:


「たぶん…何も知らないです。」


レイルは手で顔を覆った。とても長く、深く、絶望的な仕草だった。


「はぁぁぁ…」


彼はニコを見た。


「どうやら長期間教えることになりそうだな。」


ニコは曖昧に笑った。


レイルは落ち着きを取り戻した。


「よし。基礎から教える。まず、君はどの魔法に一番興味がある?」


「土です!」


ニコは即答した。


レイルはうなずいた。


「土か…君に合っているかもしれない。ならば、早く上達する方法がある。」


彼は近づいた。


「まず、自分の体内の血流を感じ取れ。」


「血流ですか?」


「そうだ。目を閉じて。全身の血流の振動を感じ取れ。一つの脈動、一つの流れも逃すな。」


ニコは目を閉じた。


「血流を自在に操れるようになれば、体内のどんな一滴の血からでも力を爆発させられる。」


ニコはうなずきながら、目を閉じ続けた。


レイルはニコの耳に特別なヘッドホンを装着した――それは外部の音をすべて遮断するものだった。


「もう何も邪魔するものはない。自分の体内深くに没入しろ。」


レイルは数歩下がり、観察した。


彼の声が最後の励ましのように響いた:


「君はアレックス隊長の息子だ。その名にふさわしいことを証明してみせろ。」


---


ニコは内側に没入した。


完全に。


音もなく。映像もなく。ただ身体だけが残された。


そして――


**ドクン。ドクン。ドクン。**


心臓の音。


最初は遠く、廊下の奥からの太鼓のように。次第に近づく。近づく。耳元で鳴っているかのように。


*「俺の心臓…」*


ニコはその脈動に集中した。


そして流れを感じ取った。


心臓から、血液が全身に送り出される。一本の流れ、枝分かれ、細かい毛細血管まで。赤いネットワークが全身に広がり、生命を運び、そして…**何か**を運んでいる。


*「俺…感じ取れた!」*


ニコは内心喜んだ。


しかしその時――


奇妙な感覚が現れた。


皮膚の外側に、全身を覆う**薄い膜**のようなものを感じ取った。見えないが、確かに存在する何か。自然な保護膜のようであり、同時に彼と外界との**境界**のようにも思えた。


*「な…何だこれ?」*


彼はもっとはっきり感じ取ろうとした。


その膜は…心臓の鼓動に合わせて**震えている**。体内の血流に**反応している**。それはまるで**扉**のようなもの――彼の身体と外界のエネルギーを繋ぐ何かだった。


---


外で、レイルは観察していた。


彼は眉をひそめた。


*「こんなに早く?」*


彼はつぶやいた。目はニコから離さない。


*「このガキ…何かおかしい。」* ニコは再び目を閉じ、皮膚の外側の奇妙な感覚に没入した。


周りの空気の流れが穏やかに揺れている。まるで見えない波が彼の体を優しく包み込んでいるかのようだった。それは彼が海の中に立っている感覚にとても似ていた――水が全身を囲み、肌の一つ一つに触れているような。


しかし、彼が感じ取れるのは皮膚の表面のごく薄い層だけだった。


*「変だな…」*


ニコは不思議に思った。


すぐにレイルに聞きたくなった。


目を開けた。


振り向いた。


そして見た――


レイルは**寝ていた**。


近くの木の根元に寄りかかり、口が半分開き、頭がコクコクと揺れ、**涎が長く一筋垂れていた**。


ニコ:「…………」


「先生。」


反応なし。


「**先生!!**」


「はっ?! なに?! 誰?!」


レイルは飛び跳ねるように起き、涎が飛び散った。彼はキョロキョロと周りを見渡し、まだぼんやりした目で時計を見た。


「え…まだ1時間しか経ってないじゃないか?」


彼は頭をかいた。


「もっと集中しろ。あと2日くらいは集中し続けないといけないぞ。」


ニコはキラキラした目で彼を見た。


「あの…でも…」


「ん?」


「もう感じ取れました。」


レイルは半分眠ったままうなずいた。


「うんうん、いいぞ。続けろ。」


彼は再び眠ろうとした。


しかしその時――


「**待てよ。**」


彼は**バネのように跳ね起きた**。


「なに?! たった1時間で空気の揺れを感じ取れただと?!」


ニコは無邪気な顔でうなずいた。


レイルは手で顔を覆った。今回は絶望ではなく、**衝撃**のためだった。


「うん…うん…まあ理にかなっているか…」


彼は一人でぶつぶつ呟いた。


「この年頃なら、普通は魔法をバンバン放っているものだ。このガキが今頃になってやっと魔力を感じ取れたとしても不思議じゃない。きっと前にやったことがあるんだろう…」


彼は頭をかき、落ち着きを取り戻した。


「よし。じゃあ次は、この土の塊に手を当てろ。」


彼は地面に置かれた握り拳ほどの土の塊を指さした。


「目を閉じろ。この土の塊の構造が見えるか?」


ニコは目を閉じた。


沈黙。


そして目を開けた。


「あの…目を閉じてたらどうやって見えるんですか?」


レイルはため息をついた。今回は *「もう、子供ってば…」* という種類のため息だった。


「目で見るんじゃない。**気**で感じ取るんだ! こいつの**気**だよ! わかるか?」


ニコは瞬いた。


そして目を輝かせた。


「ああ!!!」


「やっとわかったか。」


---


ニコは再び目を閉じた。


今回は前より難しかった。


空気は感じ取りやすい――動いているし、揺れている。でも土は**動かない**。動かないものをどうやって感じ取ればいいのか?


彼はそこに座り続けた。


1時間。


2時間。


太陽は高く昇り、やがて真上に達した。


**3時間が経過した。**




そしてその時――


ニコは感じ取った。


土の塊から何かが発せられている。


気ではなかった。揺れでもなかった。それは**形**だった。ぼんやりとしたエネルギーのかたまりが、**丸い形**をしていて、手のひらほどの大きさで、土の塊を包み込んでいた。


*「見えた!」*


ニコは嬉しくなり、目を開けた。


すると消えた。


*「えっ?!」*


彼はレイルを見た。


レイルは眉を上げた。


「集中が切れた。もう一度。」


ニコは目を閉じた。


再び感じ取った。


再び見えた。


再び目を開けた。


再び消えた。


「くそっ!」


彼は歯を食いしばり、再び目を閉じた。


今回は長く保とうとした。周りのすべてを忘れるほどに。




太陽は西に傾き始めた。


木の影が訓練場に長く伸びた。


お腹が**グゥ**と鳴った。


ニコは昼食をとらなかった。


彼は土の塊から目を離さなかった――目を閉じていても開いていても。


彼は**100%集中**の状態に入っていた。 ニコはそこに座り、目を閉じ、手を土の塊に置いたままだった。


三時間が経過した。


腹は空腹でグウグウ鳴っていた。


しかし彼は諦めなかった。


そして突然、彼の頭の中に一つの記憶が閃いた。


*「本に書いてあった…」*

*「自分の血を使って外の世界を感じ取る…」*

*「それから魔法を操る…」*


彼はまだ目を閉じていたが、心の中で一つの考えが形になり始めた。


*「そうだ、自分の血を使ってこの土の塊を粉々に砕いてみようか?」*


彼は想像した。


自分の手の中の血液が**力を爆発させる**様子を想像した。


土の塊が**丸まって、粉々に砕け散り**、四方八方に飛び散る様子を想像した。


無数の細かい砂粒が**指の間を水のように流れ落ちる**様子を想像した。


そして――


**ドーン。**


ニコは目を見開いた。


土の塊は**優しく**爆発しなかった。


それは**激しく**爆発した。


土くれが四方八方に飛び散った。その一部は**まっすぐレイルの顔に命中した**。


「うわっ!」


レイルは手で顔を覆い、数歩後退した。髪の毛も眉毛も髭も土だらけだ。


ニコは周りを見渡した。


訓練場中に土くれが散らばっている。


彼は自分の手を見た。


それからレイルを見た。


そして再び自分の手を見た。


「え…え…ええっ?!」


彼はどもった。


「わ…私、想像しただけなんですけど? なんで…なんで現実になったんですか?!」


レイルは立ち尽くし、まだ顔を覆っていた。


一秒。


二秒。


そして彼はゆっくりと**手を下ろした**。


彼の顔は**しかめ面**だった――しかし怒っているわけではない。むしろ *「今、何が起きたんだ?」* と理解しようとしているような顔だった。


「正直に言え。」


彼の声は低くなった。


「本当に何も知らないふりをしているだけじゃないのか?」


ニコは必死に首を振った。


「本当です! 私、何も知らないんです!」


レイルは彼をじっと見つめた。


「ありえない。」


彼は近づいた。


「何も知らない奴が初日にこんなことができるわけがない。」


ニコは唾を飲み込んだ。


「でも…誓います…」


レイルはため息をついた。


「わかった。」


彼はかがんで、地面に散らばった土くれを一つかみ拾い上げた。


「じゃあ今度はお前が教わる番だ。」


ニコは瞬いた。


「はい?」


レイルはその一掴みの土くれを**ニコの手のひら**に置いた。


「これに集中しろ。さっきのように丸い土の塊に戻せ。」


ニコは手の中の土くれを見た。


それからレイルを見た。


レイルは眉を上げた。


「どうした? できないのか? さっき壊すのは得意だったじゃないか?」


ニコは曖昧に笑った。


「は…はい。やってみます。」


彼は目を閉じた。


集中し始めた。


しかし今回は――彼は理解していた。**壊すのは簡単だが、作るのは難しい**ということを。


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