Episode:一筋の希望が・・(沈没を防ぐ叡智と思いやり)
「神原様、ご報告を! おかげさまで、我ら一族1万2000程になりました、厄災の日まで1年をきってしまいましたが、なんとか我らお役に立てそうです」
神原はリザレッドと対峙し、腕を組んで、「そう、よかったわ、で、対策する時間は、大丈夫なの」
「ハイ、それは十分間に合いますので、ご安心くださいませ」
「信じるわ、リザレッド! 何とかしてちょうだい!」
「我ら、この危機において、種の体制、成長にも十分に時間をいただくご理解を皆さんから、それはもう信頼という形で与えて頂いております。必ずやご期待にそえるかと思います。」
「偶然、あなたたちの神様なんて立場になったけど、別の星のあなたたちが、ここまで地球の弐本のことを考えてくれるなんて、感動ものよね、・・・でも、失敗したら、わかっているわよね!」
”ドキッ”と狼狽えるリサレッドに、優しい視線を向けて神原は、「冗談よ!」と笑ってみせた。リザレッドは、そんな神原の不安を感じ取り、一族の名誉にかけて、神原様の星を守ることを心に誓った。
御神が、博士と成神にパソコンのモニター越しに話しかけていた「もう、このTeamsのスレッドの内容に、文句を言う書き込みは、ほとんどありませんね、でもわからないのですが、これだけ予言が的中しているのに、死者とけが人の数が・・、結果が変わらないのはなぜなのでしょうか?」と話すと、コーヒーを飲みながらやってきた榊も話に加わった「そうだぜ、なぜ逃げないんだろうと俺も思うぜ!命より大切なものが、そこにあるのかよ?助けるにも限界があるのかね」
二人の疑問を振り払うように、成神がモニターを指さしながら「いや、違うと思うぞ、それは!」と言い、モニターをプロジェクタで投影し、「この辺あたりからかな」と過去の数値を指でなぞりながら、「地震の大きさは震度6から7レベル、あまり発展していない都市や町でも災害は発生している、でも被害の数値は増えずに減って行ってるだろう」
「でも、ゼロにはなってねーよな!」
「そうだね、たぶんだけど、避難はみんなしてくれているんだと思うよ、でも、戻るのが早かったり、震災ポイントまでわかってんだから、誰もいない家から何かを盗ろうとする人たちが、被災しているんじゃないかと思っているんだ」
「そう考えると、なんだか治安の良さも民度も関係してくるのでしょうか、弐本はゼロにできるのでしょうか」
「そうじゃのう、自らの決断で残るものは、どうしようもできんのぅ、じゃが弐本は、全土が被災地域じゃし、全員が政府の元で働くことになっておる、じゃから限りなくゼロじゃ。それにその日は、朝からわしと成神くんで避難船にいるよう、念を送るでな、弐本人は死なんじゃろうな」
「では博士、他国の人や、動物たちが被災してしまうことは、防げないのでしょうか?」
「それじゃよ、皆のおかげで、とくに康美のスキルで作った ”時の部屋” の機能によって、時間をは早めたり、遅くしたり、また、止めたりもできるようにもなったのでな、全ての準備が整っておるよ、今はその十分な準備を、確かなものにしておるんじゃ、避難船も8000を超えておるのじゃよ、そこに御神君の心配の種である者たちを収容できる余裕もできた、まさに、それこそお前さんらが言うとった避難船は箱舟と呼ばれるじゃろ」
そこへ神原とその後ろにリザレッドがやってきた「最近ガルム見ないわね、何っ?冬眠でもしてるの」
少し面倒臭そうな表情で、頭を掻きながら成神が話し出した「リザレッド達はいろいろ対策してくれてるだろだけど、俺たちは役に立てないと言い出したんだ、ただ肉体労働をなんて言えないしね、そのー」
「ヤダっ、成神!まさかあんた、変なこと言ったんじゃないわよね!、もういい加減にしなさいよ!」
「あまりに彼ら一族が、落ち込んでる姿を見せられるとねー」と成神がうそぶくそぶりを見せた。
「やっぱ、余計な事言いやがったな、いったい何言ったんだ、聞かせろよ」と笑いながら榊が問いかけた。
「実は・・ただ、この仕事やってじゃ、やりがいがないだろ、だから少し話を大きくして、なぜガルムの星やリザレッドの星に行くことになったのかを、ちょっと誇張して話たんだ、種の滅亡の危機なる星を救うためにって!そんな星は他にもまだまだあるだろうって」
「なんか、嫌な予感してきた」
「そしたら、ガルム、目が輝きだして、あのー、たぶん勘違いなんだけど、種の滅亡に瀕してるモノを救済するのが我らの使命、それが教えなんだ!!って、みんなで吠えちゃってさー」
「なーにが、吠えちゃってさーよ、あんたが焚きつけたんじゃない、どうにかしなさいよね!」
「ただ、今は弐本の危機救済で手一杯だろ、それが済んだらってことにしたんだ、そしたら、ガルムが、まず、弐本の救済だ!って言いだして、それで救助隊を作ることになったんだよ」
「アレっ?!結構まとも路線になってんじゃないの」
「いやさー、救助隊となると、バードサンダーみたいな乗り物や装備がいるだろ、それに移動用の設備とかさ、仮面セイバースーツも改良しなきゃだし、あっ、色はオレンジにしたよ、医療班は白ね、それから、大物の雷鳥号も作ることになったし、頭がフル回転でさー、ガルムたちのためだしさ、専用ロボットの選定にも苦労してね・・・」
「はいはい、聞くんじゃなかったわ」
「成神よー、おめー、一芝居うちやがったなー」
「なんのことだよ? それで・・」という成神のそばからみんなが仕事を思い出したと、去っていったが、御神だけがPC業務だったので逃げられずにいた。でも、嬉しそうに聞いていた。
数週間後、大陸プレートを切断する準備が近づいてきていたある日のこと、博士は政府とのテレビ会議で実行の可否について話し合っていた。
そんな中、成神たちは博士の娘である康美に、何か問題があったのかを聞こうとしていた。
「康美さん、何かあったの?」
「ええ、ちょっと問題があるようで・・・」と心配そうに会議室を康美は見つめている。
「こんな時だぜ、もう何があっても驚かねーが、いったいどうしたってんだよ」
「実は・・」と康美が話し始めた「リザレッドたちは当日、断層切断ポイントで、作業手順についてリハーサルとか準備をしてたんだけど、プレート切断すると・・」
「すると?何よ、勿体付けずに早く言いなさいよ」と神原が答えをせかした。
「弐本の真ん中あたり、横海から伊紀半島あたりに、ちょうど滑り込むプレート下あたりに、大きな突起がいくつかあるみたい、それが地震の際のプレート切断でどうなるのか、意見がわかれて・・・」
「いいじゃねーか、沈むんだろ、どうせよー」
「待てよ、もしかしたら、僕らはやっちゃぁいけないことを選択したのかも?」
御神が不安げに「なんなんですか、今になって、やってはいけないことって?」
「津波だよ、ただの地震で起きる津波と、プレート切断によるものとでは、プレートの状況によって大きな影響が出るかもしれない、弐本のことばかり考えていたけど、周りの国の海岸沿いに住む人たちにも、大きな損害を与えてしまうんじゃないか」
「だけど、データやら何やら国連に出したじゃねーか、それを無視したのは向こうさんだろ」
「プレート切断の話は、鎖国状態になった後のことだからな・・・」
「いいじゃねーか、同じ地震の被害なんだからよー」
「で、何、プレートちょっきんと切ったら、どんな最悪のことが起きるのよ?世界に」
「まず、弐本は避難船にいれば大丈夫なんです、でもプレートを切ったとき、プレート下あたりにある大きな突起物が引きずれこまれずに残るとなると、標高5000メートル級の島が2つ誕生するらしいの、それも四州ほどの島が2つも、その時の津波の高さは、1000メートルを超えるとか」
「沈むどころか、国土が増えるかもしれねーてことかよ」
「そこじゃないでしょ、で世界への影響は?切ると切らないの差は、どれくらいなのよ」
「切らなくても、予言の数字が正しければ、5000人、あれは、他国の死者の事みたい、切るとなると、その100倍以上になって、沈んでなくなる国も出てくるだろうってシミュレーションで・・・」
「なんだよ、じゃあ、このまま受け入れろってことかよ」
「仕方がない、プレート切断は、周辺国の避難ができるように、準備が整うまで延期しよう、少なくとも弐本人の命は、みんな救えるんだし、避難船での生活もみんな慣れてきたようだし」
「でもよー、踏みしめる大地がなくなるのは、やっぱりよー」
「リザレッド達には申し訳ないが、震災後にもう一度仕切り直しだな、それにガルム達の出番が世界中で必要になるな!」
「まっ、成神が言うんなら、あの中の結果も同じね、きっと」と神原が会議室に目をやった。「それとさー、Teamsのお告げで、最後のお告げも必要ね、被害の数は、弐本ではなく、世界での津波被害のものだってね」
しばらく後、会議室のドアが開き博士が戻ってきた、博士が何か言おうと口を開こうとしたとき、全員が『延期でしょっ、延期だな、延期なんですね、延期するしかないですね』とそろって言うと、博士もため息をつきながら「あぁ、そうじゃな!」とつぶやいた。
博士は続けた「じゃから、これからの時間、つまり残された時間は、弐本のために、弐本の文化や歴史を後世に残せるように使いたいのう」と肩を落として呟いた。
「そういうことなら、アイデアあるぜ、聞くかい?」と榊が、音頭を取るように、みんなを会議室に誘った。




