10-3:学校視察
少し日常編です
10-3
城内で働く者たちへの挨拶からしばらく経って。私は次なる計画を思案していた。
「うーんんんん………」
(姫様、どうしたんですか?なんか唸ってますが?)
(しっ、ああやって色々と考えられているのよ。それで私達の生活が豊かになっていってるんだから、邪魔しちゃダメよ)
と、執務室でお茶汲みをやってる侍女達の囁き声が聞こえる。一方の専属達は新入りであるセイレーンのミュゼ以外は慣れっこのようで、大して気にしてはいない。
私が頭を悩ませている問題。それは…
「物資が…人が…足りない……」
ということである。
産業というのは、基礎である1次産業の上に成り立っている。そこから2次産業、3次産業、さらに先へと成り立つわけだけど、今は割愛。一応、今までもそこに手は加えてきた。農業は2毛作やら、肥料の知識、品種改良。林業も開始している。漁業はセイレーン達のお陰で、以前よりも安全に出来るようになり、漁師の後継を育てる余裕も出てきた。塩田は言わずもがな。だが、一朝一夕で効果が上がりにくいのが1次産業なわけで…
私はどちらかと言うと2次産業以降を速く推し進めようとしてしまった。1次産業が成熟するのを待つのが惜しかったし。特産品を作って、他領との交易とかで補うか、と考えてた訳です。実際にある程度は上手く回っていた。石鹸は順調に売れているし、薬師達が協力して、色々と改善もしてくれている。シャンプーやら、その他の日用品も行商人にそこそこ売れている。造船はまだ動き出したばっかだけど、昔船大工だったという人を雇い入れて、教育をお願いしている。他にも色々と。
が、調子に乗って開発を進めすぎた。それを支える物資が不足し始めたのである。取り分け酷いのは木材だ。造船にも使うし、薪などの燃料としても有用。他にも金属を多く使えない現在であれば、ありとあらゆる物を木材で代用したりしている。
犬族の里や、山の近くに住む元々の領民達は林業に協力してくれていて、木材を供給してくれる。だが、何事にも限度がある。ハゲ山を量産してしまっては、元も子もない。
そして、次々新しいことを始めるので、一種のニューディール政策みたいな感じで雇用の創出はできていたんだけど、創出しすぎた…
ついに、働いてない人間が子供くらいになってしまった。老人?おじい様を始めとして、元気でモリモリ働いてますが?まぁ、ポーションの類が効き過ぎたのだろう。怪我や持病とかで引退した老人とかが、体が治ったら生活のために働き始めるわな。ウチの領というか、この国の国民には年金制度なんて無いんだから。冒険者連中は相変わらず、雑用やら狩りで忙しいし。というか、既に街道工事での職人の護衛や、塩を運搬するための護衛で駆り出しまくっている。報酬は勿論キッチリ払ってるけどね。
これでも、他領から少しずつ人が流れて来たりもしてるみたいだけど、それでも足りない。資源にしたって、輸入品にも限りはあるし、自領で必要な分もあるはずだから、買い占めレベルの買付はできない。ありとあらゆる資源は有限なのである。
なんか年がら年中人材不足って言ってきたけど、物資までも不足し始めた。いよいよレッドラインを超えるレベルである。でも、発展してきた事業を潰すわけにもいかないし…
「うぐぅ……資源が…人が…」
「これ、姫様」
「うっ」
執務机に頭をうつ伏せにしていたら、ポカリと拳骨を落とされた。そんな痛くは無かったが。目線を上げればマーサが少し厳しい目をしていた。あ、あれ!?いつの間に入って来たんだ!?パッと侍女たちに視線を動かすと、顔を逸らされた。だ、黙ってやがったな!
「何を思い悩んでいるか知りませんが、淑女としての行動ではありませんよ」
「……別に他の貴族居ないですし」
「人の目が無いならば、問題がないというわけではないでしょう?」
「うい、ごめんなさい」
「返事は『はい』と仰いなさい」
「……はい」
「よろしい。姫様、考え事に答えは出ないのでしょう?でしたらーー」
や、やべー、嫌な予感!
「あ、あーーー!お、思い出しました!今日は保健所の視察がありました!あ、護衛はいいです!幻獣軍団から連れて行くので!ではっ」
『魔鎧』で強化した脚力で椅子を蹴って、換気のために開けていた窓から飛び出す。次の瞬間にはすぐ下にグリフォンのウィリアムを呼び出して、上空へ飛び上がる。
後ろでマーサが何かを叫んでいる気がするが、無視である。ってか、あっという間にそこそこ高高度まで来たので、聞こえない。さすがはグリフォン。空中での機動力はピカ一である。
「さって、と言っても素直に保健所に行ったら速攻で捕まるんだよねぇ」
『キィー』
猛禽類特有の甲高い声をウィリアムが上げる。少し非難されてるような感じの声な気がする。まぁ、急に呼び出してしまったわけなので、機嫌が少し悪いのである。
「はいはい、ごめんごめん」
首あたりの羽毛を掻き分けるようにして、優しく首を掻いてやる。身体構造上、どうしても背中の方は脚が届き辛いからね。こうやると、大抵の四足獣は気持ちがいいらしい。
「よし、決めた。ウィリアム、私はこのまま転移するから、追手を適当に撒いといて」
『ヒューン……』
ウィリアムが不満そうな声を上げる。いやだって、さぁ。グングン近付いて来てるんだもん、ルゥが。
「じゃ、頼んだよ!今度何かで埋め合わせするから!」
ってなわけで、スキルで転移して城下に出る。
「うおっ!!?」
「あれ?ホラスじゃん」
転移して早々に目の前にホラスという少年が居た。裏町を牛耳っているファッジというマフィアというか、㋳っぽい男の息子である。ホラス自体は別に親父さんの後を継ぐとかの希望は無いらしい。
「きゅ、急に現れんなよ。心臓に悪い」
「ははは、ごめんごめん」
私が転移に使った場所は裏町の少し開けた子供の遊び場である。周囲が建物に囲まれてるし、道が入り組んでいるので、テュリスも見付けられてない場所である。
「あー!姫様だー!」
そんな声が後ろからして、子供たちが数名駆けてきた。歳はバリエーション豊かで、5〜10歳くらいである。
「なぁ、姫様。金持ってねぇ?持ってたら表の屋台で肉串でも買って食おうぜ」
「自分より歳下の女の子にタカるなんて、情けないですねぇ」
「う、うっせーーぶっ」
少しガラの悪いタカりの少年がホラスに思いっ切り拳骨を落とされていた。
「バカヤロー!ヒスイにタカるんじゃねぇ!」
「いってぇな!クソったれぇ!!」
ホラスとガラ悪少年の取っ組み合いが始まってしまった。他の子を巻き込まないように遠ざけつつ、様子を見る。おーおー、元気がいいねぇ。
ホラスと少年は互いに顔面や胴体目掛けてパンチを繰り出し、ボコスカと殴り合っている。周囲の子供たちにとっては慣れた光景のようで、動じたりはしていないようだ。
「ねーねー姫様。今日はどうしたの?」
「今日は少しお城から逃げて来たんですよ」
「えぇ!?な、何で!?パパとママが、お城ならいい生活ばっかりが出来るって言ってたのに!?」
ありゃ、なんか子供の夢を壊しちゃった?
「そりゃ、飢えることとかは無いけど、毎日お勉強あるし、お仕事だってあるよ?それに、こわーい魔女みたいなオバアちゃんが、毎日追っ掛けてくるんだよ?」
「え、えぇ!?」
私の話を信じたらしい子供が少し怯えた風な感じになる。うむうむ。私も何もせずに、ぐうたら過ごせたらどんなにいいか。しかしリアルは地獄である。まぁ、地獄は言い過ぎかもしれないけど、楽して生きてはいないかなぁ。今の年齢とかを考えると。
「あ、そうだ。ちょっと前から学校が出来ましたよね?実際にどうですか?」
「私は楽しいよ!」
「僕も!あ、でも、何人か怖い先生居るんだよなぁ」
「それは、タンが先生を怒らせるからでしょ!」
「ち、ちげーし!ちょっと蛙を机に入れといただけじゃねーか!」
「怒られて当然よ!私だって怒るわよ!」
おおぅ、やっぱり悪戯をやらかすワルガキが居るかぁ。教師のストレス平気かな?こういうのを叱るとき、どういう風にしてるんだろ?別に体罰は禁止してないんだよね。やり過ぎはいけないだろうけどさ。でも、領営の学校での教師役は教会のシスターさんを主に雇っているので、体罰メインで叱ったりはしないんじゃないかなー、と思ってる。まぁ、もしかしたら鉄拳制裁ならぬ鉄拳聖裁している可能性はあるけど。まぁ、それは置いておくとして。
「折角ですし、少し学校の視察でもしましょうか」
「姫様、学校来るの!?じゃあ、案内するね!」
「へ、わ!?」
グイグイと幼女に手を引かれる。君、力強くないかな!?
「あ、ホラスはーー」
「あー、姫様は気にしなくていいよ。ほら行こ行こ」
「そ、そうですか?まぁ、ならいいか…」
喧嘩くらい仲裁してから行こうとも思ったが、まだ収まってないみたいだし、取り敢えずあのまま思う存分続けさせとけばいいか。学校は城からはそこそこ離れた場所にある。城下の子供連合のみが知る裏道を通って目的地へ向かう。表通りを使わないのは、城の者から容易に見つけられちゃいそうだから。裏道は複雑で入り組んでいるし、不規則に増築された軒なんかもあって、上空からだと見えにくい部分も結構多かったりするのだ。そのため、ルゥがすぐに見つけたりすることも無いだろう。
時に壁を超えたり、壁の上の細道を歩いたり。こうしていると、前世で危ない道を通った時なんかを思い出す。なんか童心に帰ったようで、これはこれで少し楽しかったりする。子供の頃に秘密基地作ったりした時と似たような類のワクワク感があるね。ふふふ。
「お、なんだ、姫様にチビ共か。今日も脱走かい」
途中、恰幅のいいオバサンが窓から顔を出して話しかけてきたりもする。
「違います!これも視察です!これから学校の視察ですから!」
「あー、はいはい。シサツシサツ。そうだ、これ持ってきな。余りもんだけどね」
「わ、ポムの実ですか」
「あぁ、そうさ。気にせず持ってきな」
「「「「ありがとうございまーす」」」」
「あぁ、気を付けるんだよ!」
そんな風に寄り道をしつつ、割りかし結構な時間をかけて目的地の学校に到着した。建物自体は簡素な作りであり、1フロアのみ。領都の敷地面積が広いからね。縦に伸ばすんじゃなくて、横に伸ばした構造になっているわけだ。生徒の絶対数が少ないというのもあるけど。あとは、子供たちの遊び場兼運動場にもなるグラウンドも完備。200mトラックが描けるくらいには広い。ここは海とは城を挟んで反対方向だし、そもそも領都の海抜自体が高くなっているので津波とかの、いざという時の避難所としても機能するようにした。
学校の授業だが、基本的には午前のみの授業となっていて、学費はタダ。夕方以降は読み書き計算を習いたい大人向けに授業もしている。そちらは1回500Gほど金を取っている。流石に全部を無料とはできないしね。
今は時間的には大人たちの部が始まる直前といった所。グラウンドにはチラホラと遊んでいる子供たちが居る。近所の子だろうか?彼らの横を通り過ぎーーって、君らも付いて来るの?面白うそうだから?まぁ、いいけどさぁ。
校舎の入口をくぐり、大人達の部の授業を覗き込む。意外にも?年若い青年達が授業を受けていた。えーと、ひの、ふの...14人くらいか。あれ、割りかし多いな。いや、確かに授業のラインナップは前世で言うところの中学まで設定してるから、教えることは多いんだけど。
「ーーと、このように、単位という一定のものに対して数量が変化するのです。これは色んなものに応用ができます。ここまでで分かり辛い部分はありましたか?」
ババッと数人の青年達が一斉に手を挙げる。
「あらあら。説明が悪かったのかしら?申し訳ないわ」
今日の教師役はおっとりした感じのシスターさんである。その彼女が少し困った顔をしつつも、生徒たちである青年達の側に寄って教え始める。…………いや、近くね?
「ーーと、こういうことなのですが、分かりましたか?」
「は…はいっ!」
「うふふ、それは良かったです」
私は側に居た少年を引っ張って小声で話し始める。
(…ねぇ、授業っていつも、ああいう感じ?)
(うん?いや、いつもはあの先生厳しいぞ?)
(それはアンタが真面目にやんないからでしょ。いつもは優しいよ。でも、大人の部ではあんな感じね。まぁ、色々と人気だし、大人達のテストの点も良くなってるから、必要なんじゃない?...あー、姫様にはまだ分からないかも?)
年嵩がやや上に見える少女が話に割り込んできて補足してくれた。が、何が私には分からないだ!分かるわ!ってか、大人の部が微妙に盛況だったのはこういう事か!金を取ってるというのに、そこそこの数の生徒が居るから変だなとは思ってたんだよ!
シスター達の修道服は生地がやや薄い。これは少しでもコストカットするためというのが大きな目的らしい。またこの領地では私や、専属針子であるフィニーが普及させた下着が流通しているので、たとえ生地が薄くても、R18規制が必要な感じにはならない!この作品は(一部を除き)健全な作品です!って、何言ってんだ!
とにもかくにも、透けて見えちゃいけない部分が見えるような事は無いんだけど、如何せん下着のラインとかは少しくらい見えるし...
というか、こうして見ると男の視線って分かりやすいなぁ!今の一瞬で誰がどこに興味があるか分かっちゃったよ!分かりたくもなかったよ!ちくしょう!
「あっ」
「...っ!!!!!!」
今度はシスターが屈んだ時に、胸が生徒の腕に当たり、生徒側が顔を赤くする。
「あら、ごめんなさい」
「い、いいっ、いえ!」
周囲の男共が怨嗟の炎を上げている。あー...なるほど、ここの男共はこのシスターのファンか。そうか。う、うーん...
「きゃっ」
「っ!!っっ!!!!!」
今度はシスターが躓き、その豊かな双丘の間に生徒の顔が...
…………………
「ピピーーー!!レッドカード!レッドカードです!!!そこまで!そこまでー!!」
「ひゃっ、ひ、姫様?」
「教師、退場!!アウトーー!!」
「え、え?」
「今日は一旦これで授業終了です!生徒の皆さんお帰りを!明日また来て下さい!今日の授業分の払い戻しをするので!いいですね!?はい、帰ってーー!!で、ほら!教師の貴女はコッチ!職員室へ行きますよ!」
「あんっ。いけないですわ、姫様。同性とはいえ、そのような場所を触って押すだなんて」
「非・常・事・態!ですので!!いいから行きますよ!領主一族命令です!」
「えぇ、承知いたしました。では生徒の皆さん、また明日会いましょう?」
「「「「は、はいっ!!!」」」」
「もーーーー!!!(怒)」
ーー☆
領営学校の職員室にて。私は今、淫行教師の前に腕組をして立っていた。
「で、何か弁明は?」
「あら?何か弁明することが御座いました?」
「何ですか、あの授業は!ここは学び舎ですよ!?特殊なプレイやるお店じゃないんですけど!?領内の風紀を守ってくださいよ!」
「えぇ、存じております。ですから、ああして領民の方々の一助となるよう、持てる全てを使い、教育をしておりました。それが姫様のお望みでしょう?」
「結果も大事だけど、過程も大事です!どおりで男しか来ない筈ですよ!」
がー!と雄叫びを上げるが、目の前に座るシスターはニコニコしたままである。というか、若干顔が上気してるからか、無駄に色っぽい。おい、聖職者。間違えても『聖』の字を別の文字にするんじゃないぞ。
はー...
「...もう今までのことに関しては諦めますけど、大きな問題になるような事は起こしてないですよね?」
「うふふふ」
…コイツ、もう何かやらかしてる気がする。呆れた視線しか返すことができない。
「うふふ。でも仕方がないではありませんか。私は迷える仔羊を導くのが役割ですもの。それにあの様な視線を向けられるとーー昂ってしまうんですもの」
………どうするよ、コイツ?なんかもう頭が痛くなってきた。他の教師役に視線を向けるが、ササッと視線を逸らされた。
「とにかく!今後、ああいった事は控えて下さい!せめてプライベートでやって下さい!」
「あら、全面禁止にするのではないのですね」
「...禁止にしたらしたで、何か別の良からぬことが起きそうなので」
「姫様の寛大なご配慮に感謝いたします」
「ほんっとーに、頼みますよ?」
「えぇ、承知しております」
「し、失礼します!ファビオぉぉぉ姫様ぁ!?」
勢いよく扉が開けられたと思ったら、ガタイのいい青年が入室してきた。ってか、コイツ円卓メンバーじゃねぇか。一応、顔は覚えているから分かる。それと、こいつ今『ファビオ』って言ってたよね?つまり誰かを訪ねてきたところに私が出くわした、ってところ?
一応私服だから非番の日なのかな?まぁ、休暇を何に使おうが勝手ですがねぇ。......というか、騎士が来たなら逃げるが吉か。そういや抜け出して逃亡中だったわ、私。
職員室の出口に突っ立っている騎士の隣を通り過ぎる際に、声をかける。
「いいですか?あなたは今日意中の相手に会いに来た。そして、それは無事に達成されました。ここで起こったのはそれだけのことで、それ以外は何もなかったし、何も知らなかった。そして、私も今日ここへきていません。...いいですね?」
「は、はっ」
「では、私はこれで」
私はそそくさと職員室を後にし校舎を出る。校舎の前では子供たちが待っており、傷だらけになったホラスと、同じく傷だらけ+泣きべそをかいてるガラ悪少年も居た。側にいる少女に聞いたら、クルという名前らしい。軍配はホラスに上がったようだが、クル少年が泣きべそをかいているからか、若干バツが悪そうにしている。手加減して相手すればいいのに。
「また、派手にやりましたねぇ。手加減してあげなかったんですか?」
「...手を抜いて舐められる方がダメだからな」
うーん?子供たちのグループ内にも序列のようなものでもあるんだろうか?取り敢えず、傷が酷いクルの方からポーションで殺菌してから回復させてあげた。クルもようやく泣き止み、小さく礼を言った後に小走りで去って行った。
「ホラスのバカヤローーー!次は覚悟しとけーー!!」
「あぁ!?ヒスイに治療してもらった途端調子付きやがって!!」
「はいはい、ストップー」
素の力では敵わないので『魔鎧』で身体強化をした上で、駆け出していきそうなホラス服を引っ掴んで無理矢理座らせる。
「うぐっ、い、痛ぇ...」
「はいはい、ホラスも治療ねー」
「......おう」
おや、素直。取り敢えず同様の治療を施して傷跡は完璧に無くなった。ふむ?うーん?
「ん?ホラス、前より少し筋肉付きました?」
「ふひょおぉぉ!!??ば、バカヤロー、やめろ!女が男をベタベタ触んな!お前んとこの、おっかねぇ爺さんやら侍女にバレたら、俺が殺されるんだぞ!」
「ぷ、あははは!『ふひょおぉぉ』だって!あっはははは!」
隣で様子を見ていた幼女がケラケラと笑い出した。うん、悲鳴に関しては私もちょっと吹き出すかと思った。思いもよらない声出したからね。でも、耐えた。
「こら、笑うんじゃねぇ!」
「んべー。やーだー」
幼女が舌を出して誂っている。うむ、元気なようで何より。そしてホラス。幼女の挑発に乗るな。
「うーん、むしろ筋肉付け過ぎな気も...」
「お前はいつまで触ってんだ!」
私も手を振り払われた。酷いなぁ。でも、実際にホラスはその年にしては、筋肉量が多い気がする。
「ホラス、近頃筋トレとかしてます?」
「筋...?なんだって?」
「えっと、訓練とかそういうのです」
そう聞くと、ホラスがちょっと得意そうな顔をした。
「ふっ、まぁな。一応馬鹿オヤジが、あんなでも裏町では喧嘩の腕は一番だからな。色々と鍛えてるんだよ」
「うーん、そうですか。まぁこの程度なら大丈夫だと思いますけど、成長期に筋肉つけ過ぎると、あまり背が伸びなくなりますよ?」
「そ、そうなのか?」
「まぁ、俗説な部分もありますけど。鍛えること自体は悪くないんですけどね」
「そ、そうだったのか...まぁ、そのなんだ。気を付ける」
「はい」
ゆくゆくは兵士か騎士にでもなって、領地の戦力アップに貢献してくれ。
ふむ。今のところ学校での体育は簡単なものしかやってないんだよな。陸上競技なら徒競走だったり、マラソンなど。球技だとサッカーだけやってる。と言っても、オフサイドだの細かいルールはない団子サッカーである。ゴールも木枠に漁村で使わなくなった網を被せた粗末なものだ。一応、学校で戦う術を領民に教えた方がいいかな。自衛のために。希望者だけにすればいいかな?教師役は兵士とかから、あんま威圧的でない人を選別すればいいかな?
「姫様ー、おままごとしよー」
ホラスをからかう事に飽きたらしい幼女が、そんな事を言ってきた。うーん、まぁ少しくらい付き合うか。
「いいですよ。じゃあ、どういう役にします?」
その後、幼女のおままごとに付き合い、夕方まで時間を潰した。そして、その日の夕飯は抜きになった。まぁ、それを見越して帰宅前に買い食いしてたから、夜中に空腹で苦しむことは無かった。ふふふ、私も学ぶのである。
次回から不審者登場(笑)
いつも誤字脱字報告ありがとうございます!
自分で推敲しても中々減らないヘッポコですが、今後ともお付き合いいただければ、ありがたいです・・・




