10-2:ウェスト・コア
読者諸兄の方々、大変お待たせいたしました!
仕事とプライベートで色々とございまして・・・大変申し訳ない限りです・・・・
少しずつ書き溜めてはいたので、少しずつ投稿を再開します!
10-2
ゴゥンゴゥンと、足元の魔法陣が床板ごと移動して降下している。向かう先はこの王国の心臓だという場所らしい。つまり、国家にとっての重要機密に当たるわけだ。ひょえ…
そう思うと微妙に緊張して、口数も減ってしまう。どのくらい降っただろうか?割りと速めのスピードだよな。上へと流れていく岩壁が結構速いからね。時間にして5分くらいだろうか?すると、急に景色が変わった。
「……え」
あまりの景色に言葉を失う。周囲一面360°をありとあらゆる色の光が行き来していた。側にやってきた青色の一筋の帯に触れると、ヒンヤリした感覚が走った後、帯は解けて霧散し、小さな光の粒子となって流れていく。
「今のって…」
「ひゃん!?」
後ろで可愛らしい声を上げたのは、ララァナであった。驚きつつも、しきりに後ろを確認していた。周囲には黄色の光が飛び散っていた。
「あぁ、言い忘れていた。皆、『魔鎧』を維持するように。それで今のような事は避けられる」
ララァナが一瞬おじい様を恨めしそうに睨むが、すぐさま全員『魔鎧』を張った。『魔鎧』を張った状態だと、さっきのような光に触れても何も感じず、ただ光が霧散して流れていくだけだった。
何だろ、この不思議空間。ってか、おじい様。そういう事は先に言って。
「さて、そろそろ着くか」
エレベーターが止まるときの、下へ押し付けられるような感覚を味わいつつ、廃墟のような場所に降り立った。何かの構造物であったであろう壁が周囲にせり立ち、あの光に対する防波堤のようになっている。およその目算だけど、広さは半径50〜100mくらいだろうか?割りと広い。
「付いてきなさい」
おじい様にそう言われて少し進むと、地面に巨大な魔法陣があり、その中央にボーリング球のようなものがあった。魔法陣は乗ってきた物より大きく、よく見ると廃墟の亀裂だと思っていたものも、この魔法陣の一部だったらしい。
「…おじい様、ここは?」
「建国の歴史は知っておるな?」
「え?は、はぁ。本で暇潰しに読みましたけど」
クラウスとかいう英雄が、この国における後の初代国王たちと強大な魔獣を討伐するという話だった。
「うむ。その中で出てきた魔獣は分かるな?」
「あまりに強大で、食べた存在を元に眷属を増やすというアレですよね?亜人蔑視の原因にもなった」
「その認識で間違いない。そしてその魔獣は強大過ぎた。残されたそやつの魔石でさえも、周囲に影響を及ぼすほどに。先程触れた光があったであろう?あれは周囲に漂う魔力が高密度故に視覚化できるようになってしまったものじゃ。それに、触れた場合は魔力の属性によった影響を受ける」
ふ…む。えーと確か、大気中だったり、あらゆる場所に魔力は存在していて、それはマナとも呼ばれる物だったよな?体内の魔力はオド、だっけか。そのマナが視覚化できるほどに濃い、と。
「じゃあ、私がさっき触れた青い光は、水とかの魔力ですか?」
私がそう言うと、おじい様は肯定してくれた。ララァナが悲鳴を上げてた魔力は何だったんだろう?黄色?うーん。電気とかだったり?
「そもそも魔石は持っていた魔獣の強大さによって、大きさや密度、硬度が比例して強くなる。国をも滅ぼしかねん魔獣であれば、その魔石がどれほど強大になり、そして強い影響を与えてしまうか…想像に固くあるまい?」
「壊すのすら不可能とか、そういうレベルって事ですか?英雄クラウスですら」
「うむ。そしてその魔石は、ただそこに存在するだけで周囲にあらゆる災害を引き起こした。大火や嵐、洪水、地割れ、挙げればキリがない。マナが可視化できるほどに濃くなり過ぎると、先程のように触れれば影響を受ける。さらに濃くなれば災害として表出する。故に初代国王らは、魔石をこの国の地脈へ埋め、要石としたのじゃ」
「……もしかして、未だに王都の地下に埋まってるんですか?」
「そうなる。地脈の中に大きな力を埋め込んだ事で、周囲のバラバラであった地脈まで取り込み、王都の地下は巨大な地脈の結節点となった。故に王都のソレを少し操作すれば、四大領を滅ぼす事も可能となったわけじゃな」
「え!?」
なんか、物騒な話が聞こえたんですけど!?さっき言ってたバラバラの地脈を取り込んだって、まさか…
「周囲の取り込んだ地脈というのが、それまでバラバラであった4つの都市国家--現在の四大領のものじゃ。方角としては分かり辛いやもしれぬが、向こうを見てみよ」
おじい様が指差す方向に、魔力が巨大な光の河となって行き来しているように見える。
「この方角に王都がある。厳密に言えば地脈の結節点じゃな。仮にこの魔力の流れを止めれば、ケイリュオンは草木も育たず、みるみる衰えていくじゃろうな。逆に魔力を過剰に流せば、嵐を呼び、海は荒れ、更地となってもおかしくはない」
「ひえ…」
お、思ったよりもヤバかった。つまり、私達の命は王族が握っているって事かよ!暴君が国王になった途端、マズイことになるんじゃないの!?
「…………あれ?だったら、ケイリュオンの前領主の時は、その手を使えば早かったのでは?」
「そうなれば塩をどこから手に入れる?」
「あー…なるほど」
つまり、四大領の命綱は中央の王族が握っているけれど、生きていくのに必要な物資、交易、軍事なんかは四大領が握っている、と。そこら辺の均衡を保たないと、中央も四大領も滅びかねない訳だ。
「以前のクズ領主は、クズではあったがそこら辺の裁量は上手かった。領民も死なない程度で弱らせつつ、労働力として働かせていたわけじゃな」
「…………今の領民に私達が人気なのは、その反動も大きそうですね。恨めば良いのか、感謝すればいいのか」
「まぁ、国を『維持』する貴族としては優秀であったのは間違いないのぅ。人間性がクズであっただけじゃ。それと、元ディアノーグ公爵家とも繋がっておった訳じゃから、ヒスイは恨んで良かろう」
あー、そういやそんな貴族家もありましたねぇ。もう滅んだ貴族家なんてどうでもいいけど。って、本題はこれじゃない。
「えーと、取り敢えずこの場所については分かりました。それで、結局何のために私をここに連れてきたんですか?王都の結節点と繋がっているというのは分かりましたけど、何のために連れてこられたかは聞いてないです」
「ああ、少し待ちなさい」
おじい様は魔法陣の中央にある、ボーリング球のような物体に触れると、周囲の魔法陣に光が走った。魔法陣が励起したのか?
「先程も言うた通り、王都の結節点を中心として四大領へ地脈は伸びておる。そして、幾つかは支流となって国全体へ張り巡らされておる。しかし、結節点と四大領の地脈の本流が強すぎる故に、支流へ流れる筈の魔力が本流に巻き込まれる現象が起こる。そうすると、領都付近は栄えても、それ以外は荒れ果てるという訳じゃな。故に――」
魔法陣が励起しきったのか、ほぼ一方向にだけ流れていた魔力が暗闇へと霧散していく。少しすると、本流が先程よりも少し細くなり、樹木が枝葉を伸ばすように、魔力の流れが幾つか枝分かれして、遠くへ伸びていった。あれが支流か。
「このようにして、定期的に魔力を散らし、地脈を安定化させる。それが本来の領主一族の使命じゃ。少し早いとも思ったが、ヒスイにもやり方を教えておいた方が良かろうと思ってな」
は、はぇ〜〜……
随分と壮大な話である。この国の国土はべらぼうに広い。その土地全域の地脈をこうしてコントロールしていたというのは初耳だし、想像もしなかった。
「そして、これがケイリュオン全域の地脈の正常化、領内においてあらゆる権能を齎す『ウェスト・コア』じゃ。ふむ…登録して見せた方が早かろう。ヒスイ、手を出しなさい」
な、なんか嫌な予感。私が手を出すのを躊躇っていると、マーサがグイと手を引っ張った。
「うっ、マーサ!ちょ、心の準備というものがですね――」
次の瞬間、指先にチリっとした痛みが走った。いつの間にか、私の手首を握っているのは、おじい様でそのまま『ウェスト・コア』とやらに手を押し付けられた。ってか――
「いったーーーー!!!ちょ、指先!指先痛い!」
「少し切っただけじゃ。すぐに済むから我慢しなさい。中断すれば、またやり直しじゃぞ?」
「また事前説明なしですか、このヤロウ!」
私の悪態なぞ、どこ吹く風といった様子で、おじい様は鼻で笑った。こ、こんなろう!
「西領ケイリュオンを治めし領主リガウス・ドミナンス・ケイリュオンが、地脈の核に要求す。我が血に連なるヒスイ・ドミナンス・ケイリュオンとの契約を」
おじい様の言葉に反応するように、『ウェスト・コア』は光を放った。だが、その光も数秒で収まってしまう。ってか、何今の?契約っつってた?え、契約したの?勝手に?クーリングオフとかできません?
「お、終わった?」
「うむ、完了じゃ」
その言葉を確認して、私は手を急いで引っ込めて切られた指先に『ヒール』をかける。あっという間に傷は塞がるが、鈍い痛みがジンジンと残っている気がする。取り敢えず、おじい様を恨みがましく睨んでおく。
「なんじゃ、その目は?」
「だ・か・ら!何で大事なことを先に言わないんですか!?切るなら切るって言っといて下さいよ!」
「先に言っていたら、また渋って逃げ出しかねんじゃろう?」
「逃げるかどうかは気分次第です!少なくとも先に言ってくれていれば、痛みの覚悟はできてました!」
「あー、分かった分かった。ほれ、これの機能を説明する故、こっちへ来なさい」
それから、かなり色々な便利機能を教えてもらった。
結論としてはアレだね。魔力さえあれば、領内をかなり好き勝手にイジれる事が分かった。
……これ、魔力の回復量が超早い私やおじい様にとっては、超有用では?でも、多機能過ぎて、頭が痛くなりそう。
「ふむ。練習がてらキャメロットの城壁に、魔力障壁を張ってみよ」
「えーと、障壁、障壁…」
『ウェスト・コア』に魔力を流して、城壁に魔力障壁を展開する。さらに、様子が分かるように別機能を使って映像を表示する。お、おぉ。薄っすら城壁に青白い光が張っているのが分かる。あれが魔力障壁か。へー、なんか面白ー。周囲を見回りしていた住人たちが騒いでいる。
…これ、後で事態の収拾とか必要かもしれない。あと説明も。
ついでに色々と弄くり回してみる。これ、個別に障壁張ったりとかも…あ、できた。適当に城内の色んな所の映像を映して見つけたマルタに張ってみたけど、ビクってなってる。しかし、無害なものと分かったのか、再び昼寝を決め込んだ。
おそらく、領内全部の監視もできそうだね。でも、対象を1人探して障壁かけたり、監視するだけで集中力をそこそこ食うから、完璧な監視システムというわけではない。それに対象を見つけるのもオートじゃないから、何かを探すにしても結局はマニュアルだ。
そういや、奴隷になりかけてた私を見付けたのって、王都のこの機能を使ったからとかなのかな?そういや、あの時は王都に入ってから、その日の内に救助された。それも、公爵家に騎士を凸らせるという方法で。よくよく考えてみたら、対応が早すぎる。公爵家に以前から目を付けていたにしては、あの日ピンポイントだったわけだし。……有り得そう。
「ふむ、成功したようじゃな」
「そうですね。要領は魔力のコントロールですから、意外とすんなり出来ました。……あ、でもコレ長く使ってると魔力回路に結構キますね」
体内における魔力の通り道である魔力回路が、『ウェスト・コア』を使用している間にそこそこ負担が来る。グングン魔力が動いて、長時間使用するとダメージが来そう。
「ふむ、少なくとも城壁に障壁を張るのと、映像の表示、城内の監視だけで、どの程度の負荷が掛かるか分かったであろう?便利ではあるし、地脈の正常化に必須ではあるが、乱用はせぬように。それと、まだここには1人で入らぬように。落ちる危険性もあるしの」
…そう言えば、ここ以外は基本的には本来真っ暗な空間なんだよね。一応地脈のお陰で明るいけどさ。
その後も幾つかの操作説明を受けつつ、練習して色々と出来るようになった。ただ、やっぱり負荷があるので、使用する際は慎重に扱うべきだという事を心に留めておこう。
そして、翌日。久々の魔力痛に苦しむことになりました。調子乗って弄繰り回しすぎたかも…
イメージはF〇Ⅶのラ〇フス〇リーム。
次話も割かしすぐに投稿します。




