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10-1:国家機密

少し時間を飛ばします。

いずれ、小話として書くかもしれません。

10-1


「ようやく…終わった…」


季節は巡って、春。


朝夜はまだ少し肌寒いけど、日中はポカポカとした陽気の季節である。私が今居るのは、城の転移門がある部屋に近い一室である。そこに、おじい様と2人してソファにぐったりとしている。


今日はようやく新年の王国会議が終わって、帰還できた日だ。おじい様は王国会議だけど、私はロイヤルファミリーとのお茶会。今年はついに3人目の王妃と会った。


今まで会ってきた王妃はニミュエ王妃、レティシア王妃の2人。そして、今年初めて会ったのがノイエ王妃という人だった。ニミュエ王妃とレティシア王妃の髪色は同じ緑系統だけど、ノイエ王妃だけ色合いが違って、鮮やかな緋色だった。


後から聞いたけど、何やかんや数世代前に王族が嫁いだだとか、領主の娘、息子が嫁入りないしは婿入りしただとかで、トップの方の貴族連中は、紐解いていくと全員親戚にあたるらしい。なので、近しい髪色でも不思議はないとのこと。ノイエ王妃だけ、母親が上級貴族の中でも下位の方の人だったとか。その辺の事情は首を突っ込みたくないので、スルーである。きっと何かしらのドラマがあったのだろう。


まぁ、そんな王妃3人と王女達とのお茶会である。私以外、侍女などを除けば全員王族。ティーカップを持った手が震えなかった事を褒めてほしい。


まぁ、疲れた。もうやりたくないけど、また招待状を貰ってしまった。王族からの招待状は実質的な召喚命令と変わらない。また来年もですか、そうですか…


四大領のパワーバランス的に、ケイリュオン領だけ招かれてのお茶会でいいのかと言えば、実は他の領地ともやっているらしい。それと、ケイリュオンが最初で問題ないとのこと。何だろうな、得も言えぬ嫌な予感がする。まぁ、訳の分からない事で不安になって居ても仕方がない。


「「はぁ〜…」」


おじい様と2人して溜息を吐く。


「おじい様まで溜息ですか?王国会議で何かありました?」


「王子ど――いや、忘れよ。とにかく、問題は片付けてきた故な」


あー…そういや、私の婚約だか許嫁だかに王家が関わってるって話だったなぁ。先王陛下から打診があったとはいえ、1年経っていたので忘れてたよ。『王子ど――』って事は、王子達と何かあったのかな?まー、問題は片付けたっていうなら、問題ないでしょ。藪をつついて蛇を出したくないしね。


と、そこでコンコンとドアがノックされた。私もおじい様も居住まいを正して、入室を許可する。入室してきたのは我らが家宰セドリックだった。


「失礼いたします、領主様、姫様。新年の挨拶をしたいという者達が集まっておりますので、お疲れのところ申し訳ございませんがご足労いただけますか?」


私達は年末から王都へ向かったので、居残り組には新年の挨拶がまだなのだ。因みに、セドリックも居残り組である。領主一族全員(2名のみ)は王都だし、護衛のために騎士団の円卓連中の半数以上とそこそこの人数の使用人や侍女たちは出払ってしまうので、留守を任せる人員がセドリックくらいしか務まらなかったのである。


まぁ、それとは別に、置いていった理由もある。


「うむ、よかろう。ところで娘御は息災か?」


「えぇ、息子たちも初めて出来た妹ですからね。全員で可愛がっていますよ」


実はセドリック家には去年、待望の女児が産まれたのである。現状は育休取らせてあげらんないけど、娘のために一生懸命働いている訳である。ってなわけで、セドリックは今回居残り組だったわけだ。産まれたばかりの子を持つ親をいきなり遠くに離すような事はしたくなかったので。因みに、私はまだ対面してない。セドリックが会わせようともしたんだけど、全力で止めた。


衛生環境が整いきっていないのに、赤ん坊を外に出歩かせたくない。セドリックに限らずだけど、城内で産休なり育休なり取る人物には、滅菌できるステリポーションを渡してある。免疫が整っていない新生児にとって、雑菌やウイルスは見えない天敵だ。しっかりとした統計は取ってないけど、新生児の死亡率は致命的というほどに高くはないが、決して低いという訳では無い。ウチは少しマシという程度。なので、セドリックの生まれて間もない娘さんには、あまり長時間外出させないように、とアドバイスしておいた。


息子さんたちなんかにも、手洗いうがいの徹底や、赤ん坊が口にしたり手にしたりする可能性があるものは全部ステリポーションに漬けろと命令してる。この世界の住人からは神経質と思われても仕方がないと思うが、正直まだ足りないくらいだ。本当は保育器とかも作れればいいんだけど、予算や材料がね・・・


まぁ、今のところはあるもので可能な限り対応していこうという感じである。



「将来は姫様にお仕えしても恥ずかしくないよう育て上げるつもりです」


「……あー、本人の意志を尊重してあげてください」


この世界だと、男親が――正確には貴族では、男親が子供の将来を決めることが大概だ。政略結婚だったり、政争のためだったり。まぁ、ウチの領はあんま関係ないと思うけど。多分。いや、私が思いっきりその対象だったか・・・悲しい。セドリックには曖昧に返事を返しつつ、本人の意志を重視するように言っておいた。分かってるかな?分かってるよね?


「さて、では挨拶へ向かうとしよう。ヒスイ、行くぞ」


「うぇーい」


私の返事に2人共苦い顔をするが、諦めて欲しい。普通の8歳児とかだったら、駄々をこねる場面である。まぁ、もちろん駄々をこねたりはしない。精神年齢だけで言えば、30とっくに超えてるからね。見たいか?30超えの精神年齢オッサンの幼女の駄々を?私なら見たくない。


あぁ、それとこの前の新年で8歳になりました。いやー、身長とかは相変わらずだけどね。ちょ、ちょっとは伸びたよ?うん、ちょっとは…



とにかく、城の庭へと向かう。そこに城内の連中はほぼ全員集まってるそうだ。


到着すると、騎士から使用人、侍女、兵士の上役などなど。多くの人員が集まっていた。私はすすす、とおじい様の後ろに半身隠れる。多少は慣れたけど、苦手なもんは苦手なんだよ。


「さて、皆よく集まってくれた。日々この城、そしてキャメロットには人が増え続けておる。それは皆の協力あってこそであると、儂は考えておる」


実際、結構人は増えてきた。ってか、今も増え続けてる。時折城を抜け出して散策する時や視察なんかで、知らない家が建築中だったりすることもあるからね。冒険者ギルドも人が増え続けているらしい。


「ヒスイの活躍も大きかろう」


おっと、急に話を振られた。折角隠れていたのに、ララァナの蛇しっぽでグイグイと前に押しやられた。う、裏切り者ーー!!


「儂は魔法だけであれば、少なくともこの領に敵う者はおらぬと自負しておる」


そりゃ、バリバリの武闘派で成り上がりな上に、レベルが300いきそうだからね。誰かこのラスボスジジイに挑んでみろ。


「しかしどれだけ魔法の腕があろうと、領地経営において言えば儂に出来ることは決して多くはない。政務や、城下、街道、産業についてはヒスイの活躍が大きかったと言える。それを傍で見てきた者であるならば、分かるであろう。………まぁ、苦労させられた者の方が多かったやもしれぬが。儂も散々こき使われたからのぅ」


「ちょ――」


聴衆からは笑いが起きた。


グイグイとローブを引っ張るが、おじい様は遠い目をしていた。そ、そりゃ悪かったとは思ってますけどねぇ。というか、今笑ってた奴、後で覚えてろ。死んだ目をしてたやつ………もうちょい、仕事を振るバランス考慮するから、頑張ってくれ。


「さて、ささやかではあるが酒を用意しておる。皆で新年を寿ぐとしよう」


不意打ちの、ボーナス(酒)に歓声が湧く。酒樽が幾つか運ばれてきて、ついでに軽食も運ばれてきた。こういった宴席では、何のかんのと理由を付けて、私とおじい様は早々に退散する。上司が居たんじゃ羽を伸ばせないだろうしね。私自身、ちょっと落ち着かなかったりするので。食事は大人しく済ませたいのです。まぁ、飲み会の雰囲気自体は好きだったけどさ。


城内の一室に戻ってきて、私とおじい様、ララァナ、ルゥ、テュリス、マーサと一緒に食事を摂る。本人たちは固辞しようとしていたが、新年の時くらいは団欒という感じで過ごしたい。ナディやイリーナも既に家庭があるからね。エルやムートの方に行かせてる。新婚だし、エルやムートと過ごさせる時間を取ってあげたい。


因みにセイレーンのミュゼは、一旦里帰りさせている。一応あんなのでも、一部族の里長の娘だからね。あそこの港町はちらほらと結婚、妊娠したセイレーンが居るらしい。一気に一夫多妻の世帯が増えたんだってさ。………まぁ、その辺の詳細は聞かないようにしている。今のところ、刃傷沙汰とかは起きてないみたいだし。一応幸せな?家庭を築いているとのこと。


「ふぅ…」


昼食後、ララァナが淹れてくれたお茶で一息付いていた。カップから皿まで全て木製なので、少しティータイムって感じから遠いかもしれないが。陶器って高いんだよね。そんな金の余裕はウチにはない。陶器買う金があったら、他に使う。なので、我が領からは陶器職人の家族が何世帯か他領へ流出したっぽい。残ってくれている職人には他領向けに、陶器を作ってもらっている。


ただ、あくまで「陶器」なんだよね。現代日本の「磁器」とは異なり、若干吸水したりして、色合いだったり強度的には早めに寿命を迎えてしまう。んで、「磁器」は一切吸水せず、色も真っ白。ただちゃんとした釉薬が必要らしいし、そして何より焼き上げるのに、かなりの高温が必要らしいのだ。具体的には1200℃以上とか。


一応、かなり苦労して高出力の炉はできたんだよね。ほら、石鹸作る一環で、海藻とか貝殻を高温で焼く必要があったからさ。今の所、高出力炉は2基のみ作成していて、そのどちらもが石鹸の原材料用。


そうなると、新しく高出力炉を新造する必要がある。ふむ……新しい産業になるかも?ウチの領から新機軸の『陶器』ということで、磁器を売って高級品扱いにすれば、割と儲けられる?そういえば前世でも皿に装飾を施した磁器は芸術性が高くて、かなりの高値で取引されてたよね。年代物になると尚更のこと。〇でも鑑〇団とかで、数百万の物とか出てたし。これ、研究したら一財産築けるのでは?


あ、でも問題は運搬だよなぁ。緩衝材とかである程度は解決しそうではあるけど。でも襲撃とか受けたら割れるよなぁ。今のところ奪われたという報告はないけど、塩の運搬なんかではちょくちょく襲撃を受けるらしいし。『獣士隊』のメンバーももうちょい増やしたいよねぇ。


と、今考えても仕方がない部分もあるね。とにかく、少なくとも残ってくれた職人たちの新しい仕事にはなりそうかな?あ、でも燃料とか…ぬぐぅ。


「ヒスイ、また悪巧みか?」


「な…失敬な。領民のための新しい産業の事を考えてたんですよ。それに私がいつ悪巧みをしましたか?」


「マーサから逃げるために、あの手この手を使っているであろう?」


「違いますー。私はちゃんと、自分の限界を分かっているんですー。それ以上、勉強したり働いたりしたら倒れてしまうというキャパシティを加味して、休んでいるんですー。悪巧みなんてしていませーん」


「そうか。それで一体次は誰を過労死させるつもりじゃ?」


「ぬぅ〜〜」


おじい様が遠い目をしている。失敬な。別に誰も過労「死」してないじゃん。ちゃんと労ってるし。報酬も大抵は適正以上だし。急な変更とかの迷惑料的なので、適正以上の報酬を払ってるし!


「まぁ、ひとまずそれは良い。それよりも、ヒスイ。お前には教えねばならん事がある。行くぞ」


「えぇ?午後はのんびりしたかったんですけど」


「午後全ての時間は取らん。ほれ、行くぞ」


有無を言わせず抱え上げられて、連行される。ララァナ達もそれに続く。向かったのは地下の転移の間近くにある、でっかい魔法陣のある部屋である。ここで、この城の環境調整だったりに必要な魔力を充填するのである。そのため、四大領の領主一族は魔法使いでなければならない。


「あれ?また魔力供給するんですか?王都へ向かう前にも念のため充填しましたよね?それに、充填方法はもう知ってますよ?」


何せ私の魔力は無尽蔵だからね。消費しても次々回復するし。まぁただ、魔力を動かすと体内の魔力回路が消耗するから、限界値はあるんだけど。それでも、個人で供給できる量としては群を抜いているという自覚はある。


「いや、そうではない。…ララァナ、ルゥ、テュリス。これより先は領主にとって、いや。この国の秘中の秘じゃ。口外を禁ずるのは勿論、何かあれば関わる者も全て消さねばならぬ。それが出来ぬというのであれば、今すぐ立ち去れ」


おじい様の言葉に臆する事なく、3人は魔法陣の中に踏み込んできた。えぇ…シンキングタイム無しなの?もっと考えよう?国家機密に関わるなんて碌な事ないよ?ララァナが一歩前に出て、代表して話す。


「今更でございます。既に私達の命は姫様に捧げております。その姫様の不利になるような事を、どうしてできましょうか」


捧げなくていいから!重い!重いよ、ララァナ!ってか、ルゥもテュリスもか!重いよ、君たち!


一方のおじい様はそれを確認すると、長杖の先端を魔法陣の中心に当て、コンコンと幾つかのポイントを叩いた。叩きつつ、魔力を充填してる?


「わ!?」


ガコンと足元が抜けるような感覚が一瞬したと思ったら、魔法陣ごと床が沈んでいっていた。エレベーターみたいだな。動力は魔力なんだろうけど。その後、魔法陣があった場所は、重厚な石板が横からせり出してきて入り口を塞がれた。


そして魔法陣はそのままゆっくり下へ下へと降りていく。周囲は岩壁に囲まれているため真っ暗である。まるで、巨大なシリンダーの中を移動しているみたいだな。


「『ライト』」


テュリスが最近覚えたという初歩の光魔法で明かりを灯す。


「あの、おじい様?一体どこに降りているんですか?」


「遥か地下にある、この国--ユースティナ王国の心臓とも言える場所じゃ」




最近、暑いですね・・・

皆様も熱中症にはお気を付けを。

お茶だけ飲んでたら、熱中症になったという話もありますからね。塩分補給大事。

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― 新着の感想 ―
[一言] >『王子ど――』って事は、王子達と何かあったのかな?まー、問題は片付けたっていうなら、問題ないでしょ。藪をつついて蛇を出したくないしね。  知ってる知ってる。  それで何か約束させたけど、…
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